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食べ残しでつくったアイスクリーム

40年前にアメリカのミシガン州に住んでいた。住んでいたといっても家族といっしょにいたわけではない。ひとりで留学をしていた。勉強はとてもたいへんで朝から晩まで授業があってなんだかよくわからない。それでも奨学金をもらっていっているのだからまじめに勉強しよう。問題を起こしてはならない。授業と食事以外はひたすら図書館で勉強していた。

キャンパスの中央にあるロー・スクールの図書館はりっぱな建築物だった。そこも学部生の出入りは自由だった。しかも夜12:00まで開館していた。学部生専用の図書館になると24時間閉まることがなく開いていた。なんとぜいたくな環境だろう。日本とは大いに違う。そう思いながらぜいたくな留学生活を送っていた。

しかし勉強も朝から晩まで机にかじりつきとなると疲れる。夜の10時くらいになれば頭がぼーっとしてくるのだ。そして夜中00:00近くになるとだれもいない。わたしはその時間まで図書館にいて真っ暗なキャンパスを歩いてアパートにもどった。戻る途中にかならず立ち寄るところがあった。アイスクリーム・ショップだった。

店の名前はスティーブスという。日本にも一時期渋谷にオープンした。店の前でアイスクリームをこねるところがよかった。そしてミシガン州のアイスクリームはおいしい。あれからいろいろな州にいったがアイスクリームはどこにいってもとてもおいしい。それがアメリカだ。

あるオンラインイベントで食べ残しからつくったアイスクリームというのを紹介した。アメリカではつくられている食べ物の約半分が廃棄されるという。そこでオレゴン州に住むあるひとが思いついたのが食べ残しを利用してアイスクリームをつくるという方法だった。これをリサイクル(再利用)といわずにアップ・サイクルという。

さてイベントに参加してきたひとたちは、わたし以外には4人。その人たちに簡単に紹介をしたあと、こう聞いてみた。あなたたちはこのアイスクリームを食べますか。

一人の男性は拒否反応をしめした。どうやらアイスクリームに対してこだわりがあるらしい。他の3人の意見も聞きたがったが拒否反のを示した男性があまりにも上から目線だった。この話題については話したくないようだった。そこでレストラン一般について話そうという仮の提案をした。そこから30分。恐ろしいほど退屈な時間を過ごした。

話は5人でレストランはどこが気に入っているのかというつまらないことに終始した。話しても眠くなるだけだった。わたしはすぐに話すのをやめて他の人が話をすることに耳を傾けていた。するとわたしがあまりにもだまっていたのであるひとがレストランにいくのかと聞いてきた。わたしはそれほどいかないといったまま二度と口を開かなかった。

食べ残しのアイスクリームという話題はどこかに消えてしまった。ここの参加者はずっと問題意識が低い。残念だ。

ここからはわたしが考えた答えである。

結論からいうとわたしは食べない。アイデアとしては面白いがこれを食べる気がいないというものだ。まずこの色からしていかにも食べ残しからつくったといえる代物だからである。

このレストランにはいるひとたちはこれが食べ残しをアップ・サイクルしてつくったものということは理解している。しかしこの色をみて食べ残しであることが改めてわかるのに食べるというのはわたしにはできない。お腹を壊しそうだ。この色を見てなんらかの反応がほしかった。

つぎにレストランであるからしてこれをお金を払って食べる気にはなれない。食べ残しで再生したアイスクリーム。それに対してお金を払うということが考えられないのである。一体、だれがいくら払うのだろうか。

最後にこれはレストランの中で品物として出すのはどうなのかというのがある。レストランというところは1時間くらいは知り合いといてゆっくりと楽しい話をして過ごすところであろう。長い人は2時間、3時間といる。いわば長くゆっくりと過ごすところであってひとりでいくところではない。そういったところで食べ残しのアイスを食べる。となるとどのような話題をしゃべったらいいか。決して格好をつけているわけではない。

しかしこのアイデアはアメリカでは受け入れられており採用店舗も広がっているという。

ミシガンのスティーブス・アイスクリームはとてもおいしかった。しかしながら40年の時を経て食べ残しアイスクリームが登場するのは想像できなかった。しかもレストランで提供されるという。

ごみでもいいじゃないか。まだ食べれる。そういってしまえば食べることができるのかもしれない。ただわたしにとってはアイスクリームはアメリカの象徴のようなもの。世界的のものとして位置付けていたこともあり、そのアイスクリームがここまできたかという印象をもつ。ここまできたか。

やはりわたしは食べない。

大学生の読者の方々はどうだろう。レストランにいってこのアイスクリームがメニューにあったら食べるだろうか。友達といっしょに考えてみてほしい。