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日経平均株価の更新が意味するもの

1987年10月19日にニューヨークの株価が急落。それはブランクマンデーとよばれた。まさに暗黒の月曜日。東京霞が関にある外資系証券会社で働いていた私はそれがなんのことかよくわからなかった。しばらくすると稼ぎ頭のトレーダー、一般の会社であれば営業をするひとたちがひとり、ふたりとオフィスから消えていった。そのようにバブルの崩壊がはじまったといわれている。

バブルというのは土地神話や株神話のことをいう。土地を持って売買している人や不動産会社は土地をころがすだけで儲かる。株は株式市場で売買すれば儲かる。その取引を手数料をもらってさばくのが証券会社だった。ものをつくらずにお金が手元にはいるのは財テクともいわれた。あらゆる人たちが贅沢をしはじめた。特に企業勤務をしていた部長以上は派手に使い始めた。

JALのファーストクラスにのって海外出張をする。食事の時にはワインを注文をする。なんでもいいから一番高価なワインを持ってきてくれ。そのようにフライトアテンダントに注文している人もいた。建築会社の部長になると日曜日は毎週ゴルフに出かけた。朝早く出かけて夕方に帰ってくる。すると平日もでかけるようになった。ゼネコンといわれる総合建設会社のひとたちは年間300日ゴルフコースにでかけるありさまだった。

2月22日、34年ぶりに日経平均株価がこれまでの最高を更新した。失われた30年を経てようやく株価がもどってきたといえる。この平均株価が高値を更新したというのはどのような意味があるのか。そしてこれから一般の会社員や学生のひとたちはどうしたらいいのか。それについてわたしの経験を含めて書いてみます。

The Economist, "As the Nikkei 225 hits record highs, Japan’s young start investing" Feb 22

この株価というのはどういうものか。それは株式市場で企業の価値を評価する指標。機関投資家や個人が株を売買することで会社の価値を表している。この会社の株であればリスクをとってこれだけの値段で買ってもよい。そのように買いたい人がいる。すると反対にこれだけで売っていいという人がいる。買いたい人と売りたい人がいて初めて値段がつく。

しかし株式市場に参加しているすべての人がそう考えているわけではない。もっと高くあるいはもっと安くと考える。あるいは市場の外にいるひともたくさんいる。取引をしている人たちというのはいわゆる投資家。なのでたとえ取引をしているからといって会社のことをすべて知っているわけではない。また株価というのは半年先あるいは一年先の業績を期待してついている。日経225のようにインデックスといって複数の会社をまとめて平均している指標ではいい会社もあれば悪い会社もある。

では日経平均が上がるとそのインデックスに含まれる会社にとってどのような意味があるのか。そこで働く人たちや学生にとってどのようなメリットがあり、また注意点があるのかです。

株価が上がれば会社にとっては使えるお金が増えます。手元にある持ち金が増える。普通に考えれば投資に回す。これまでがまんしていた使い道を探して使うようになります。将来に向けてこれからビジネスで期待されているものに投資するというのは普通の経営であれば当然でしょう。

次に社員に還元します。給料をあげる。700万円の年収であったひとが800万円になる。1000万円のひとが1200万円になる。それはありうることです。あげないというのは問題です。

さらには福利厚生を充実させる。託児所を整備する。子育て世代を応援する。また社内外で研修を実施する。新しい技術や取り組みに関して社員全員に説明会を開く。特に若手の社員に対して外部から講師を雇って研修を受けてもらう。そうすることで新しい仕事をするスキルを磨きます。

ここで2点注意が必要です。まずはよほどのことがないかぎり贅沢はしない方がいいでしょう。思い切りいいマンションを都内に買う。高級車を購入する。そういったことをすると手元にある資金はすぐになくなります。例えば都内のマンションは平均1億円します。高級車は800万円します。半導体不足であり需給バランスが回復していない。

この1億円のマンションを購入できるというのは一般的にどういう人たちでしょうか。現実的に無理なく返済する期間は10年といわれています。夫婦共働きの場合は購入してから10年間は毎年1000万円づつローンを返済する。それができるだけの財力がないといけないでしょう。この1000万円というのは給料から税引後の手取りのことをいう。可処分所得ともいわれ好きに使っていいお金です。銀行口座に振り込まれる額です。

二人で1000万円。月にすると約83万円を家のローンに払えるというのは二人とも年収が相当高くないといけません。たとえ3000万円の頭金を支払ったとしても10年で7000万円のローンです。毎月58万円の負担になるわけです。これとは別に光熱費がかかる。電気代、ガス代、水道代といったもの。また家具類や家電製品も別にかかります。ですので簡単に高いマンションを買うことはできない。

加えてマンションには管理費や修繕積立金が別にかかります。広い部屋であればそれだけ余分にかかる。住むだけで大変です。

次になにかスキルアップのために会社の外で学校に行こうという人がいます。ところがよほどいいところでない限り、あるいは特殊な目的をもった学校でない限りはお勧めできません。できれば会社に負担してもらうのがよいでしょう。

中でも注意してほしいのは海外の大学あるいは大学院にいくための準備校にいくこと。これはお勧めできません。というのはアメリカの大学や大学院はとてつもなくお金がかかるところになってしまった。そして帰国をしても元をとれるだけの給料をもらえないのです。

例えばアメリカの有名私立大学は4年間で5千万円します。ビジネススクールといって経営大学院ともなると2年間で3500万円です。1日10万円のコストをかけて学校に通って学びます。これがアメリカの教育の実態です。卒業して帰国したとしても1日10万円支払ってくれる会社があるでしょうか。あろうはずもありません。元がとれない。

よほど名の知れた経営コンサルタントであれば可能でしょう。しかしながら会社の業績がいいときには経営コンサルタントは雇いません。コンサルタントというのは事業再編やテコ入れをするために組織を強くする人たちだからです。

またこう考える人たちがいるかもしれません。過去30年はとんでもない経済だった。そこで社会課題がいっぱい出てきた。社会的弱者を生み出してしまった。それについて真剣に取り組もう。そう考えて難題に対して取り組もうという偏執者がいます。それもやめましょう。

例えば人権問題を真剣に考える。渋谷にいるLGBTの人たちの人権擁護をしよう。あるいは気候変動に対してできることはないか。仲間を集めてなにかしよう。そう考えるかもしれません。学ぶのはいいことです。

週末に3時間ほど使って趣味でお金を使わずに学ぶというのであれば反対はしません。しかしながら弁護士でもないのにLGBTのことにやたら関与しないほうがいいでしょう。知っておくのはいいことですし、必要なことです。差別はしてはいけない。これはあたりまえのことです。継続学習すればだれでも注意することができる。つい、やってしまったでは済まされない。

また気候変動の仕組みをどこかでお金を使わずに学ぶ。趣味程度で3時間ほど本を読む。しかし本気で気候変動を解決しようなどと考えてはいけない。今後20年経過しても温暖化は止まらないことははっきりしています。そういうことに真剣になってはいけない。しばらく本を置いて目を閉じて休んでいる方がいい。そうすれば難題であることがわかります。しかもこれだけ騒がれているのに政府が規制をしてこなかったことがおかしい。

高いマンションを買わない。趣味程度の学習をする。すると何が残るかというとこれが最も大事なことでしょう。病気にならないことです。病気になってこれから何年、何十年も苦しみます。そういう状態で会社の中で過ごすのはよくありません。

常に心身のバランスをとるように心がけること。運動、栄養、睡眠のバランスをとってそれらに乱れないようにチェックする。それだけを考えて週末2日間を過ごす。なかなかできることではありません。できれば立派なことです。

人間の心身の働きにはまだわかっていないことが多いのです。またバランスが崩れたときの治療も万全ではありません。インターネットはすぐれた技術ですが完全ではない。それは株式市場についてもいえます。そこで値を付けているのは複雑怪奇な行動をする投資家であり人間です。株式市場でさえも完全ではない。

これがわたしがバブル崩壊後34年かけて学んだことのひとつです。女房や長男に同じことを話してもうなずいてくれるでしょう。たいへんでしたがよくやってくれてます。

都内で働く一般社員の人や学生に参考になりますように。