やりがいをもって働く
東京都内で平均的な生活をするにはどうしたらいいか。まず幸せに過ごすこと。次に不安を感じないこと。それらを維持すること。そういったことをそれぞれを満たすにはまずパートナーといること。次にいっしょに健康で暮らす。そのため安定した収入を得ること。これら3つがあればまず失敗をしない平均的な生活は実現できるでしょう。これらをまとめました。
逆にこれらになんらかの問題が発生したときにどうなるか。そうなるともとにもどす必要に迫られる。失職をしたら安定収入はない。たとえ貯金をくずしたり、親から一時的に支援を受けることがあろうといつまでもそうしているわけにはいかない。健康を害すと週末は病院に通う。週末の自由時間が台無しになります。楽しむことができない。
そんなことが引き金になってパートナーと喧嘩をする。いつまでもその状態が長引くのもよくない。これが一番響くものです。
30歳までに長く続くように下地をつくっておく。これが都内で平均的な生活ができるベースです。
さてそうなるとどうやってその上にいけるか。わたしはこれを30代に模索してきました。このことを考えながら働いてきたといえます。そのためにやむをえず転職してきたといえるでしょう。20代から30代は転職を2回経験しました。証券会社から飲料メーカーへ。さらには経営コンサルティングへと。ただあまりいい転職ではありません。その理由はまた別のところで書きます。
これらの経験から3つの基本要素の上に来るものは何か。それはひょっとしたやりがいではないか。やりがいを持てればいいのではないか。ふとそう考えながら過ごしたことを覚えています。仕事にやりがいが持てたらいいな。
ではやりがいを持って働くにはどうしたらいいかという文章を書いてみます。それには仕事がわかるということ。失敗してもモチベーションが下がらないこと。そして年収に満足していること。こういったことがいるでしょう。
仕事がわかる
わかるというのはどういうことか。わたしは新卒で外資系銀行員になりました。外資系というのは新卒で入るものではありません。しかも金融というのはわかるまでに時間のかかるものです。
新卒で入っても周りは教えてはくれません。知識もないのに周りは教えてくれない。しかも仕事はやりながら覚えるというものです。周りは中途採用でお金を稼ぐことだけを考えている野獣のようなもの。そういったところでやりがいなどあるのでしょうか。
まずわたしは金融の動きが実感としてわかるまでに3年かかりました。必死に勉強をして平日の夜と週末は四谷にある学校に通いました。あらゆる本を読み、仕事をしながら覚えた記憶があります。仕事は労働ですから頭はそれほど使いません。わかるということには直結しません。
3年くらいしてからようやくなにか頭の中でつじつまが合ってわかるようになった。周りがさわいでいる経済指標がつながるようになった。点と点が結ばれました。金利とインフレ。為替レートと貿易。GDPと経済成長。こういったものが何であってどういったことがどうなるのか。
それはそれは苦しい道のりでした。
しかしながらこういった学習期間におおいなる起爆剤を与えてくれた事件もあったのです。それは26歳のときでした。大阪で悶々と働いていたときのことです。周りは6人だけ。その人たちは中途採用で好き勝手に仕事をする押しの強いひとたちばかり。そんなときスイス人の上司がこういったのです。
ちょっと東京に電話をしてスイスフランのレートを聞いてくれ。そういわれたわたしは恐る恐るレートを問い合わせたのです。すると電話の向こうにいたのはイギリス人のトレーダー。またひどいことをいわれるかとびくびくしながら聞いていました。
するとそのトレーダー。ミスター・マンデルというひとが為替のレートだけでなく、今のレートからこういう動きになるということを説明してくれたのです。
おそらく彼はわたしのことをなにか顧客と間違えたのかもしれません。しかしそういった一つのハプニングがあった。5,6分の会話であったのでしょう。
わたしは聞いた。What is the current rate of Swiss Franc? What will be the impact on underwriting business? こんなようなことでした。わたしは彼の答えが何を言っているのかよく覚えています。これまで頭の中でごちゃごちゃしていたものがはっきりとつながった。こんなことは初めてでした。しかもあの躍動感溢れる説明がぐさりと頭の中に刻み込まれたのです。
しばらく震えがとまらず、このとき金融の動きがなにかわかったような気がした。やりがいを覚えた一瞬でした。わかるということがこれほどまでに素晴らしいことなのか。わたしはあの瞬間に金融の仕事が好きになりました。
一つの事件でした。
だれでも働き始めたら自分にこの仕事はあっているのかどうかはわからないものです。やりがいどころではない。しかしながら3年くらいがむしゃらにやるとひとつくらいはわかる瞬間があります。それをとらえるとわかるというのが実感できる。そうするとそれはやりがいになります。
わからない仕事にはだれもやりがいは覚えないでしょう。でもさあっと頭の中の霧が消えていく瞬間がある。
仕事を続ける
またそこでなんでもひとつのことを10年くらい続けるとその分野で得意になるといいます。続けることがやりがいに代わる。これは多くの人が言っていることで私にも言えます。やりがいのある仕事。情熱を持つ仕事をしたいといいます。でもそんな仕事は見つからない。
それが10年続けてみるといつのまにかやりがいになっている。仕事とはそういうものであってそうなると失敗しようが周りから批判されようが知ったことじゃない。モチベーションがさがることもありません。仕事がわかって得意なところができるわけです。
そうなるとやりがいにつながる。そう簡単にはくずれなくなる。
年収に満足する
しかしこれから30代に向かっていく人たちは30歳から40歳の10年間
は年収にはこだわらないといけない。というのは転職は40歳まで。しかも40歳からは転職をするのではなく働いている場所にしがみつく。しがみつきながら兼業・副業を持つ。そうして75歳まで働く。そのためにはやりがいのある仕事を30歳からの10年間でやりぬくことでしょう。
東洋経済が出している年収ランキングを参考にしてみてください。
このやりがいをもって10年間空白なくやり続けるには年収に満足していることはいうまでもない。その間ボランティア活動などする必要もない。社会貢献活動はしなくてよい。それらは40歳になってからでいいのです。また40歳を過ぎてボランティアをやったことがないのは問題です。
異業種交流会というのがあります。PeatixやMeetupで公開されています。そういったものには参加する必要はありません。Peatixで公開されているものは基本的に広告です。1時間、2時間と広報活動を聞いても仕事の役に立たない。それよりは家でのんびりとしていたほうがよい。
Meetupというのはさらによくない。あれはデート系のサイトでいかがわしいイベントがたくさんある。そんなものに参加してもなんの役にも立ちません。かえって有害です。
そうなるとこの十年間は年収に満足するために働く期間といえましょう。ひとによってはビジネススクールにいきたいと考える人がいる。グロービスとかに通いたいかもしれません。しかし月曜日から金曜日まで目いっぱい働いて疲れているのにさらに体力を使うことはお勧めしない。
しっかり休んだ方がいいでしょう。
パートナー、健康、そしてお金。それらの基本があって平均をクリアした。その上は30歳からやりがいを持って働く。それには仕事がわかること。失敗してもくじけない。くじけないだけのモチベーションが保てること。それには年収に満足することでしょう。
都内の大学生の皆さんどうでしょうか。平均をクリアする3要素だけでも大変です。しかしそれを満たしたのならばやりがいをもって働く。これができたのならば平均よりもちょっとだけ上にいけるかもしれません。