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モルモン教への誤解

1981年の夏。21歳で初めてのアメリカ旅行。この旅行はわたしが後にアメリカと関わりを持つようになったきっかけであった。当時、中部地方に所在する大学を対象に派遣企画があった。つまり愛知県、岐阜県、三重県の3県を指す。その企画では毎年10名ほどアメリカを視察した。スポンサーは名古屋テレビの企画室であった。

毎年ひとり100万円くらいを予算をとっていたようだ。その予算で日本の学生をアメリカに送り出す。30年間続いた。受け入れ先はユタ大学だった。大学があるソルトレークシティーにはコーディネーターがいた。恩人の名前はヤングという。彼は若いころ名古屋市にいてモルモンの宣教師をしていた。いまでもヤング氏と参加した人たちとは連絡をとっている。

今週号の英紙エコノミストにモルモン教に関する記事があった。アメリカにいるキリスト教徒としてモルモンは特別な位置づけにあるという。このモルモン教をとりあげアメリカのザイオン(聖なる丘)なる本が出版される。この記事をまとめて動画にしてみた。

Benjamin Park, "American Zion" 2024

論点は2つあろう。ひとつは教会は長らく少数派を認めてこなかった。それにより3つの視点で進歩派から批判されていたということ。もうひとつは家族の在り方が他のキリスト教とあまりにも違うことに批判が集まった。どういうことだろうか。

最初の論点は少数派に対して理解を示さなかったという。例えば多重結婚に対して反対をしたために50年もの間、アメリカ合衆国という共和国に加わらなかった。また黒人や女性が地位を見出すことに対して反対をしてきたという。

こういった側面はよくいわれる。しかしそうではなかろう。すべての少数派を差別してきたということにはならない。40年前には日本人に対して理解を示しており、若い日本人をソルトレークに受け入れている。そこでは教義を押し付けるということは全くなかった。

わたしは週末には教会の日曜学校にいった。そこではごく普通の交流があった。牧師の話が終わるとグループに分かれて普通の話をしていた。わたしは日本人としてホームステイをし教会につれていったもらった。なんの特別扱いもなく理解を示してくれた。

ある一定の人たちに対しては理解を示すのに時間がかかっているというものであろう。

次にモルモン教の家族に対する考え方が異質であるという点。モルモン教では教徒どおしが結婚する確率が高い。結婚をするとやがて子供が生まれる。その数は他の宗教と比べて多い傾向がある。避妊を認めていないからだ。

わたしの知り合いであるヤング氏は3人の子供がいる。それぞれ結婚しており孫にあたる人たちが大勢いる。5人づついて、ヤング氏には15人の孫がいるのである。これはモルモン教における特徴であってソルトレークにいるモルモン教徒には子供が多い。

家族を持つこと。そしてその中でどのような家族を営むかについては宗教の考え方があろう。そこであまりにも進歩的な形態の家族に対して疑問を持っているというだけである。

日本においても家族の形態はいろいろな形をとるようになってきた。しかしあまりにも進歩的な形態をとることには無理があろう。日本には硬直的な社会保障制度がある。特に企業が多様な家族形態を認めて社員として雇うことは無理が伴う。

そこでモルモン教徒が家族に対して異様な考え方を押し付けているのではないかと誤解しやすい。そうではない。

40年の時が過ぎ、わたしもようやくモルモン教について理解ができるようになった。この記事はモルモン教を知るためのなにかしらのきっかけになる記事として読んでおいていいだろう。

ただし、ソルトレークシティーにいるひととこのような物議を醸すような話題をするのは慎重になったほうがいい。だれも真実はわからないし、信じている人に対してうかつに非礼なことはいってはならない。