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お金がない人のための海外留学

40年前にアメリカの短期留学から帰国して大学生活を送っていた。短期留学といっても実際に大学の教室で授業を受けていたわけでもなく1ヵ月の視察旅行だった。まずユタ州のユタ大学でしばらく過ごした後シカゴから東海岸に向けて車で移動。ボストンからニューヨークを経由してワシントンDCまで移動をした。各拠点では大学のキャンパスめぐりと何人かの教授との懇談があった。

わたしにとってはこの短期旅行がのちの留学への出発点になった。それまでの3年間18歳から考えていたことはとにかくアメリカに留学するということだけだった。そのためだけに受験勉強をしていた。アメリカにいって留学をするのにいくらお金がかかるのかという計算はしたことがなかった。親がお金を出してくれるというあてもなかった。

この20年日本国籍の若いひとたちが海外留学を控えている。その数は年々減りピークであった83000人から58000人と15000人近く減ったという統計を見た。

経済産業省 未来人材ビジョン 令和4年5月

そこであるオンラインイベントでこのような問いかけをしてみた。皆さんは海外留学をしたいと考えていますか。そこで不思議な回答を得た。ある反応は仕事があるのでいきたくてもいけない。つまり生活のためにお金稼ぎを優先せねばならず留学をすることを考えていないということだった。もうひとつは学生の方であった。お金がない。なのでいけない。

これはおかしい。というのは確かにお金がないというのはいけない理由のひとつになるのかもしれない。ただこれが一番の理由ではなかろう。この文章ではお金が理由で留学を断念している大学生に向けて書いてみます。お金ではなくほかのことに集中したほうがいい。それは学力と英語力。成績をよくすることと英語をなにがなんでも習得しておくこと。そうすれば海外留学にいけるということです。ただしビジネススクール(MBA)への留学は対象外とします。

まずお金を理由にしてはいけない。それは頭の中で想像しているだけであってそこでまず断念している。そうではなくてお金はなんとかなるというように考えた方がいい。志望校のホームページをみてこんなに授業料がかかるのかと頭を抱えてしまう。それだけで断念することはありません。

まず大学在学中の4年間で1年だけ大学の留学制度をつかって海外にいってみることをお勧めします。東京の大学であればほとんどの大学で交換留学制度をいうものをもっている。そして単位を交換してくれるわけですから4年で卒業できます。授業料も日本で払えばいい。そして後にくる2回目の留学に備えましょう。

交換留学はどちらかといえば練習であって留学したいのであれば大学院に留学することです。中でも経済学博士課程に入学することです。そこでデータサイエンティストになるための論文を書き上げて卒業すること。

その理由をいくつか書きます。まず学費が1千万円とビジネススクールの半分程度で済みます。ビジネススクールはアメリカ人のためのところであって日本人のためにはデザインされていません。どうしてもビジネススクールに行きたいのであれば日本に残って一橋大学ICSかグロービスに入学したほうがいいでしょう。

経済学博士課程に通うのに必要な1千万円のうち授業料をなんとか工面すれば海外留学にいけます。その方法は奨学金をもらうこと。探してみれば奨学金制度というものはいくつかありそこに応募するのがいいでしょう。また銀行のローンを組む。あるいは就職したところで授業料だけは出してほしいと頼んでみてはいかがでしょうか。

生活費は極力切り詰めて贅沢をしないこと。アメリカの大学における生活費は豪華なものからかなり節約志向のものまであります。そこでたくさんお金を使わなければなんとかなるでしょう。なのでお金を理由に海外留学を断念しない方がいい。

ここまで書きましたがいかがでしょうか。いまはお金がなくてもいつかデータサイエンティストになるためにアメリカの経済学博士課程に留学する。そのための準備をしておく。これは経済産業省の未来人材ビジョンにもはっきり記載されているのです。62ページにデータサイエンティストとしてどういう人を求めているかが載っています。

未来人材会議に参画した方々の名前が最終頁に記載されています。川本総裁や南場社長はビジネスの現場の経験も長く海外留学もされています。そのひとたちが会議をした結果として出しているものであり南場社長は日本経済新聞社のセミナーでもこれからはデータサイエンティストですと明言している。大学生のうちから準備しておくことでしょう。

お金よりも大学在学中には成績をよくしておくこと。在学中に少なくともGPA3.5以上をとっておくことでしょう。そのためには単位をまとめてとることをしないようにしたい。卒業に必要な124単位のうち慣れない1年次に48単位を履修してしまうと負荷がかかります。そして2年次にも48単位を登録する。そうすると96単位がとれてしまう。残り28単位となり3年と4年の2年間で7科目とれば卒業できてしまう。

なるべく負荷を分散することです。1年次と2年次にはそれぞれ10科目くらいにしておいて成績をよくしておく。慣れてきたところで3年と4年でもやや少ないくらいの履修科目数にして成績の平均をあげておくことでしょう。

そして履修科目数が減った分時間ができたのでその時間を英語の習得にあてる。この英語の習得というのはスコアをあげるということだけではありません。TOEICでスコアメイキングをしておくことは大事です。ただそれよりも大事なのはアメリカで授業中あるいは授業の外で議論ができるかどうかです。こちらの方がもっと大事です。

日本人が英語でいきなり議論はできないものです。しかし心の中で同じ日本人でもできているひとがいる。自分にもできるはずだと思い込ませておくことです。おじけることなく。

学力をつけておく。その結果が成績です。3.5以上。そして英語はスコアメイキングと同時に議論に強くなっておく。この二つをクリアしなければ海外留学特にアメリカへの大学院へはいかないほうがいい。こちらの方がお金よりも大事です。

40年が経過してこのような文章を書くとは考えてもいなかった。ただ若い人の中で海外留学の数が減ってきたから自分もやめておこう。どうせお金がないのだから海外にいくのはやめておこう。そうなってしまうととてももったいない。数が減っても自分だけはいくと決めればいいのです。お金はなんとかなる。探せばだれかが出してくれる。

経済産業省の資料は確かによくできてはいます。ただしこの資料には読み方によっては誤解をうみます。データそのものの正確性やデータ処理の仕方に問題があるのではないか。中国人の留学数は確かに多いが富裕層だけを対象にしたデータではないのか。韓国においてもそれが当てはまらないか。

だとしたらお金がなくてもなにがなんでも留学をする。そういう日本人として留学すればいいのではないでしょうか。わたしが30歳のときにお金がなくても女房と長男をつれて大学院に留学したように。