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Zoom疲れは起きていないか

2004年というから20年近く前。場所はあの三菱商事品川オフィス29階。そこでは新たな商材を日本市場に投入すべく調査がはじまっていた。わたしが出向で配属されたところの仕事である。アメリカにあるIT企業のアプリを紹介するところだった。聞いたことがあるひとがいるかもしれない。ウェブ・エックス(WebEX)というリモート会議のアプリを調査していた。

そのアプリの担当者が社内でデモンストレーションをおこなった。丁寧な説明でどういったメリットがあるのかわたしにはよく理解できた。ところがほとんどの職員がなにも関心を示さなかった。パソコンの画面にパワポのスライドが投影される。人の姿もはっきりとわかる。いまのリモートワークと変わらない。それにもかかわらず多くの職員が関心がなくそっけない反応だった。

2020年コロナになりリモートワークが一気に広がった。そこで出てきたのがZoomというアプリである。コロナ前には聞いたこともなかったアプリが瞬く間に広がりを見せた。いまやZoomを知らない人はいない。わたしの友人は週17回にものぼるZoom会議があるという。

あるオンラインイベントでZoom疲れという話をする機会があった。Zoom会議をやりすぎているとさまざまな支障が出始めるという。日中に昼寝を長くしてしまうひとがいる。昼寝ならば20分程度であれば問題ないだろう。ところが1時間近くとってしまう。

会議が多いと疲れがたまってしまい普段よりも起きる時間が遅くなってしまう。6時でも起きられない。通常日の出の時刻と同じ時間に起きるのが健康的といわれている。寝坊をするとあわててオフィスにいって仕事をする。集中や能率が下がる。労働生産性の低下につながる。

睡眠にも悪影響があるといわれている。年をとれば睡眠の質は下がる。シカゴ大学の調査では50歳にもなれば20歳のときと比較して20%程度しか寝れないという。それだけ20歳のときは成長と回復は早い。ところがZoom会議によりたえず緊張をしていると交感神経系に支障が出る。たとえ20歳であっても睡眠ができないという。

睡眠はどんな年齢であっても7時間はとらなければならない。しかもできるだけ毎日同じ時間に寝て起きるのがよい。現在日の出は4時40分。5時には起きているはずだ。7時起床は不健康であろう。

オンラインイベントに出てきた人は男性4名。女性1名だった。

ある男性はこういった。疲れはない。Zoom会議はオフィスでは行われていない。もし睡眠がとれないようであれば外で運動をすればいいのではないか。Zoom会議によってできるものも増えた。メリットの方が多い。疲れることはあるかもしれないが適度にやればいい。

次に女性が発言した。Zoom会議が比較的多い。対面と違いなかなかコミュニケーションがとれない。ストレスがたまる。ひとによってはフラストレーションがたまっている。睡眠への影響はわからないが、おそらく良い影響はないだろう。

定年退職をした男性が続けた。いま参加しているオンラインイベント以外はZoom会議はない。日頃からパソコンはそれほど使わない。のんびりとしているだけなので影響があるというのは身に覚えがない。そんなに悪いのか。

現役のサラリーマンが続いた。Zoomというのがこれほど広がっていることを知らなかった。一体どこからZoom会議が広がっているのか。

わたしはこのイベントから学んだことが3つあった。ひとつはZoom会議の悪影響はそれほど意識されていないということ。次にやりすぎれば悪影響が出ることは理解できる。ただどのくらいやればやりすぎなのかがよくわかっていない。そして最後に疲れを回避するには対面に移行していくしかないということ。どういうことだろうか。

まず悪影響について。睡眠には支障が出ることはいろいろな調査レポートで実証されている。しかし一般の人は悪影響がそれほどあるとは考えていない。オンラインイベントで参加しているため疑問をはさむ人が少なかったこともあろう。どちらかというとZoomのよい面の方を意識する傾向があり悪影響は出ないととらえられていた。

ただ目の疲労はないだろうか。肩の凝りや睡眠に影響はないか。よく眠れているだろうか。

次にZoom会議にどのくらい参加しているのか。それを把握している人が少なかった。オンラインイベントと自身の管理をそれほどしていない。つまり疲れの管理をしていない。普段それほど意識していないとうことだった。

はじめてパソコンがオフィスにはいってきた40年前。カリフォルニア州では体に悪影響が出るということで一日4時間までと決められていた。それが日本には紹介されることもなく各社員1台が当たり前になった。そして朝から晩までパソコンとにらめっこ。2007年からはスマホの普及により電車の中だろうが食事をしているときだろうがスクリーンの前にいる。

そしてコロナによってZoomが登場した。ただ自分がどれだけスクリーンをさわっているかという時間の管理をしてない。あらゆる場面を考えて一日4時間以上というのはあまりよくないであろう。オフィスでパソコンを見ている時間は短いほどよい。家に帰ったらパソコンはさわらずスマホもしないほうがいい。Zoomのやりすぎはよくない。

最後にZoom会議をするよりはできるだけ対面に戻した方がいいであろう。Zoomはどちらかというと一方的な情報の伝達には効果が出る。かなりの遠隔地から不特定多数のひとたちはいることができる。そこでプレゼンテーションを視聴するには適している。しかし双方向のやりとりには向かない。

ビジネスはZoomではできない。東京にオフィスがあるのであればオフィスで対面会議をしたほうがよい。たとえZoomでできるとしても対面に戻した方がいいであろう。たとえ山手線が止まっていたとしてもZoomはよくない。

わたしはZoomに加えてメールもよくないと考えている。メールは少ない方がよい。連絡のみ。相談はできない。

20年前に三菱商事のひとたちがリモート会議に否定的であったのはよくわかる。あの時に意見が多かったのは細かいところが伝わらない。それが反対の理由だった。しかしビジネスの交渉前の理解をする局面ではやはり対面といった自然の会議の方がいいだろう。時間的な節約にもなろう。対面と比較して伝わらないだけでなくどれだけ疲れるのかという要素が加わった。

あとからわかったことにはZoomはWebEXの技術をとりいれていたということである。技術的にはすぐれたツールである。しかも40分であれば無料で使える。しかし使いすぎは悪影響が出ることは確かだ。

東京の大学生の皆さんはどうだろうか。Zoomをやりすぎてはいないだろうか。1日4時間以上はやりすぎといえよう。2時間でもやりすぎだろう。目の疲労はないか。肩がこらないか。イライラすることはないだろうか。最も大事なのは睡眠に影響は出てきていないか。

なるべく対面の方がよい。