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スペイン連盟会長辞任劇に潜む懸念

ちょうど2週間前の火曜日にスペインサッカーで起きたキス事件について書いた。そのときはやってしまったなという印象を持っていた。やってしまった行為に対して何らかの謝罪をすべきであるとした。公式な見解として会長職にあるひとがやってしまった悪質行為であって反省をしなければならないという意図で書いた。

やや非公式な見解としてオーストラリアという西側の開催地であったこと。スペインという南ヨーロッパに属する国のひとの行為によるものだったこと。しかもW杯優勝という喜ばしい局面での出来事だったため、反省すればいいくらいに考えていた。

というのは会長という立場とスペイン人という立場。そして優勝というめったにない局面にあって起きた出来事である。致し方ない。スペインという国のひとたちのお国柄であってとてもフレンドリーで情熱的なひとたちである。ひとつの喜びの表現としてまあありうるのかな。そのくらいだった。

ところが口と口はやはりまずかったのか。会長は辞任した。

あるオンラインイベントで2週間が経過しもう一度話題になった。そこで参加してきたひとたちの意見を聞いた。集まった人はシニアの男性3名。若い男性1名。そして若い女性1名。合計5名だった。

ある若い男性はいった。これは文化的な解釈が求められるものであっていいか悪いのかというのは一概には決めれない。オーストラリアにいくことがあった。顔のどこかの部分にキスをすることはそれほど問題にはならない。答えはわからない。そういう意見であった。おもしろくない反応だ。

ある若い女性がいった。この行為はハラスメントのひとつだ。セレモニーの最中に起きたことであって相手の同意を得ないまま強要してキスをしたものである。ハラスメントのひとつとして罰を加えるべきだ。罰則を受けてもしかたないであろう。

わたしは黙って聞いていた。ただ頭の中で考えていたのはこれがセクシュアルハラスメントのひとつにあてはまるのかどうかだ。セクシュアルハラスメントというのは上にいる立場を利用して相手がノーといえない状況をつくる。そして嫌がっているのに繰り返しセクシュアルな行為を繰り返すことをいう。それによって被害を受ける。この場合はそのあたりがあいまいではないのだろうか。

過剰反応ではないのか。そうなると男性は何もできなくなってしまう。ここではだまっていたがハラスメントという言葉をあてはめるのは間違っていると思う。ハラスメントではない。だとしたら誤解だろう。

次に男女平等とか男女共同参画が言われている中でこのような行為はおかしいという議論がある。世界の大きな流れの中にあるのであって行為自体が後退している。ヨーロッパ諸国では女性の社会進出が進んでおり他の西側諸国においても推奨されている。日本もその一国だ。そういった大きな流れの中で視聴率の高いW杯のセレモニーで起きた事件であってふさわしくない。そういう議論をするひともいた。スペインはどうなっているのか。これもどこかおかしい。

この意見に対してもわたしはだまって聞いていた。このポイントにおける懸念はスペインではいまだに男性優位なのかという誤解を生む。性的差別があり、ひょっとしたらなにも進んでいないのか。女性進出はこんなものなのかと誤解する点にある。スペインでは過去50年ゆっくりではあるが女性の社会進出は進んでいるのだ。

スペイン政府の閣僚の顔ぶれを見てみるとよい。18名の大臣のうち11名が女性である。しかもその中には財務、福祉、経済といった要職にあたるポジションに女性がついている。50年かかったとはいえ女性の社会進出は確実に進んでいるといえるのではないか。この事件になにかしらのセクシズムやフェミニズムを持ってきてスペイン政府を批判することはおかしい。

出典 BBC

ハラスメントではないだろう。またスペインは国として女性の社会進出は進んでいないわけではない。そして最後に今回の模様がSNSでとりあげられたこと。その猛烈な拡散によりスペインのローカルな伝統文化が破壊されてしまう懸念がある。

辞任というのはいたしかたないのかもしれない。しかしSNSの拡散により連盟や上位の組織が辞任を求めたのであればそのパワーは大きい。大きくてひとつの伝統文化を破壊してしまうことにはなりはしないか。

スペインというのは情熱的な国のはずだった。地元のひとたちは暖かくスキンシップを求め、親しい間柄では肌のふれあいはごく自然に行われている。同じスペイン人どおしであって自国のサッカー選手が優勝したのであればなにかしらの表現をしたかったのであろう。うれしかった。よくやった。会長職にあるものとしてそれをなにかで表現したかった。

しかし口と口はまずかった。そういったところであろう。ならば反省すればいいのではないか。しかしどうやら反省していない。なので辞任に追い込まれた。

わたしはこういった行為が公の場で行われてしまった場合にハラスメントとして取り扱いをうけ、多くの視聴者が女性が犠牲者になったと断定してしまうことに懸念を表している。しかも当事者が2名だけということにも関わらず国として何か取り組みが遅れているのではないか。そんなことを言い出す人も間違っている。そういったことがあれば憂いている。

スペインの男性がどこかでひるんでしまうのではないか。せっかく男女共同参画として進めている中で男性の立場が国際社会で弱くなっていきはしないか。そういった懸念がある。

2週間が経過し辞任劇にまで起きてしまった。誤解のないように。また再発しないことを願う。

補足 イベント内の様子を英語で書いてみました。
Mr. Luis Rubiales resigned from football federation in Spain. A sexism scandal still exists. Feminist movement has not been enough in last 50 years. But Pedro Sánchez, the prime minister of Spain, is making a progress in government. 11 out of 18 ministers are women in his cabinet, being neither dominated nor monopolized by one gender. Our prime minister, Mr. Kishida, will announce the new cabinet members on September 15th. I hope he makes a progress. But the governance in politics is still in its infancy in Japan. Love in politics is even worse than that in sports.