マンション生活の落とし穴

いまから23年前、私の家族3人は新しいマンションに引っ越す準備をしていました。引っ越すといっても500メートルほどしか離れていない。13年住み続けた地元なので勝手がわかっている。高台に建っているため水没の心配がない。女房は生まれ育ち両親が近くにいる地元と水没回避ができるところという2点は最低条件としてあげていました。マンションの近くには消防署がある。消防署は立地がいいところにあり水没の心配がない。ただ消防署にはこの23年で別の用事で出入りするようになりました。

今回も大学生のひとに向けて書きます。大学生の読者はマンション管理にはあまり関心がないでしょう。教養科目にも専門科目にもない。ひょっとしたら法学部に所属していて聞いたことがあるかもしれない。両親と都内のマンションに同居している。そこで何か変なことに感づいている。そうなら多少この文章に書かれていることに気づき関心が向くかもしれません。

わたしが家族と住んでいるマンションは23年前に建てられました。千葉県東葛地区にあり44世帯が住んでいる。1割くらいは賃貸として契約しており残りの40世帯くらいは購入者。購入すると区分所有者になる。所有権が発生しマンション物件は資産になる。その資産を3千5百万円くらいで購入した人たちです。

もよりの駅へは自転車で15分。歩けば25分程度。近くには、スーパー、コンビニ、クリニック、家電量販店が東西南北にある。コンビニ3社の店舗はいくつもあり生鮮食品を買うことに不自由しない。女房はチラシと値札をみてほとんどの品物の優劣比較できる。家電量販店は電化製品がほしくなったときにすぐいける。とても便利な立地。

ところがなにか異変に気付いたのは13年くらい前でした。朝、マンションですれ違うひとが挨拶をしなくなった。玄関の扉を開いて、出ていくときに廊下で歩きスマホをしている。目と目を合わせなくなった。

そしてこの7年くらいはそうした異変が異常に変わっていった。それがどんなことだったのか。管理会社の契約不履行、管理組合の機能不全、管理協会の不真面さ、そして公的機関(市役所、警察、消防署、弁護士、裁判所)のいまひとつさえないアドバイス。

書いていることは実際に起こり、現在もなお進行中。どうやって解決し、マンションの資産価値を守っていったらいいか。ここでは、現状の分析を簡単に記して結論を書いておきます。


要約

まずマンション管理会社です。管理会社は管理組合と業務委託契約を結んでいます。結んでいるにもかかわらず契約内容どおりにはしません。管理人が管理室で寝ている。掃除をしない。管理会社の担当は、契約どおりにはせずこちらが理事会で指摘をしてもやらない。いつまでも引き延ばすだけで放置。おまけに管理費・積立金を別の地区で横領・着服したことを隠していた。

次に管理組合です。組合は区分所有者が理事として参加します。わたしのところでは、6世帯。運営はマンション標準管理規約に書かれています。規約は国土交通省が作成したもの。マンションを購入して入居しているひとは規約に従わなければなりません。規約どおりに運営すればよいのです。ところが区分所有者は規約を読んでいません。読んでいないため理事会の内容が理解できない。理事になっても読まない。それで管理会社に管理を丸投げしている。

理事は委託契約すら読んでいない。読んでも理解できない。管理会社がまともに仕事をしていると勘違いをしている。自分たちが予算として持っている90万円を不正使用してしまう。それを監査役がとがめない。内容を確かめず、めくらサインをして総会に提出してしまう。

わたしは5年前に2年間組合の副理事長をしていました。なんらかの解決策を見つけよう。そこで市の広報誌でマンション管理相談ができると知った。さっそく市役所の住宅政策課に電話しました。千葉県のマンション管理士協会に属する管理士2名と相談できる。1回につき30分。4年間で9回、4.5時間かけて相談した。ところがある程度の相談はできアドバイスはもらえますが期待どおりにできない。できたためしがない。

できないどころか、ある管理士は面談中イヤホンをつけてなにやら音楽らしきものを聴いている。問い合わせてもだまっているだけ。別の管理士は目をつむったまま話す。そんな面談もありました。

なかなか打開策がなく、事態は悪化していきました。そこで公的機関に相談するようになった。事案は、バルコニーからのたばこのポイ捨て。区分所有者からの苦情をうけたもの。不法投棄には地元の警察の中にある生活安全課に相談にいった。そこでは2人の刑事から生活安全の状況をきいた。火災事件における弁護士、医者との付き合い方を教えてもらった。

そうしていると、区分所有者の4分の1、10世帯が専有部分の消防設備点検をしない。近所でも火事があった。消防署予防課にいった。

あるとき、管理費・修繕積立金の滞納が発生。それに対して管理会社が督促をしているかどうか。それを理事会で問い合わせても不明のまま。管理会社から回答がこない。理事長もしておらず。だれも経過を把握できない。そのうちに競売物件となった。事件として裁判所にいって確かめるしかなかった。

4人の弁護士に管理運営について相談した。3人は規約にそって契約解除すればいい、と。それはできず。1人は、相手にすらしてくれなかった。

では、どうやって解決したらいいか。23年経過すれば、資産価値は8百万、場合によっては、1千万円以上下がります。それをどう食い止めていくかです。なかなか簡単ではありません。読者が住んでいるマンションにも同じようなことが起きている可能性があります。もしそうだとしたら気づいてもらい、将来に備えてほしいものです。

おそらく比較的新しい地区に住む方がいいでしょう。千葉県であれば流山おおたかの森か柏の葉。神奈川県であれば大和市。

管理会社が契約どおりにしない

前回、マンション管理が行き届いていないこと。その管理自体がいたるところで年々悪化していくことを書きました。ここでは、管理会社の不徹底ぶり。その中でもわたしが理事として理事会で指摘してきたこと。ごく一部は改善のきざしが見られるものの、一向に改善されないものがあります。かなりの時間が経過しても管理会社はやらない。いまだに改善がされていないものを書いてみます。

4年ほど前に異常に気が付きました。それは管理人(マンションサポーター)が管理人室で寝ているということでした。

2019年4月25日撮影

それを理事会で口頭で指摘しました。しばらくまともにとりあげてもらえなかった。そこで写真を撮った。それを理事5名、管理会社からの担当者(フロントマン)に見せました。それでもまともに受け取らなかった。何かおかしい。管理室で管理人が寝ているのを気にしないのだろうか。管理費から17万円差し引かれている。1世帯あたり月4千円負担している。おまけに夏場のエアコン代も支払っている。

そもそも管理人の様子がおかしいと気づいたのは、掃除がされていないことだった。廊下、階段、自転車置き場、そしてエントランスでごみが散乱していた。かなり目立った。

2019年5月頃

植栽は手入れをしておらず、枯れていたままだった。


2019年5月頃


サブエントランスは、2月に交換依頼をしたが、4月の理事会になっても管理会社側で発注すらしていなかった。それがわかるとわたしは工事工程表を提出してほしいと依頼した。ところがフロントマンは工程表とはなんのことなのか。その意味がわかっていなかった。2か月後の6月になってもなんら工事は進んでいなかった。そのまま半年以上が経過した。いつまで経ってもやろうとしない。

2019年5月頃

新しいサブエントランスがとりつけられたのは、半年遅れの8月だった。それでも工事直後には開錠鍵のネジが締められていなかった。

突然、フロントマンが担当をはずれ、会社を辞めるといいだした。そもそもこのフロントマンは最初から怪しかった。前年(2018年)12月に通常総会の後に理事たちだけ6名集まった。そこで勤務している管理会社の不祥事に話をした。

別の地区でフロントマンが管理費を横領したということだった。わたしを含め、新しい理事6名は、それを聞いて知っている。知っていても総会では、ひとことも開示しなかった。知っているのにフロントマンの対応、そして管理人の勤務態度になんら疑問をいだいてはいなかった。わたしの指摘は聞き入られなかった。

何かがおかしい。そして3月には、新たな事件が起きた。1階の共有部分の廊下を歩く。そこに降りかかる雨を防ぐ庇(ひさし)があり、大きな穴が空いていた。

2019年5月頃

これを加入中の損害保険を使って補償するという。免責はないのか。それを問い合わせても管理会社から回答はなかった。保険証券の開示すらない。そして保険更新時には保険料は変わらないという。それはウソだった。損害保険の知識を持ち合わせていない。保険取扱店としてどうなのか。

1年ほど経過すると新しいサポーターも管理人室で寝ていた。それを指摘しても改善することはない。再度、写真をとって理事会で指摘しなければならなかった。それでも理事会、管理会社がまともに受けとらない。このとき、管理会社だけでなく、理事会もなにか怪しいことが起きているのではないかと疑った。

2020年撮影

管理委託では主に2つのことを契約している。ひとつは、日頃のマンション管理であり、管理人の清掃とフロントマンが担当する事務。フロントマンはあやふやにごまかすか、いつまでもやらなかった。もうひとつは定期的な点検であって、7つの業務ある。定期清掃、消防用設備点検、排水管清掃、設備点検、植栽管理、駐車場保守、増圧給水点検の7つ。

管理員には、月17万円を支払っている。フロントマンには5万円。フロントマンは、2か月に1度しか2時間の理事会にしかこない。まともに事務をしていると理事会が勘違いしている。定期点検には年200万円(1世帯当たり4.5万円)支払っている。その点検作業後には報告書を提出とある。その報告書がほとんどあがってこない。見たことがない。それを指摘しても提出はしてこない。

ここにあげたのは、なにか異常が発生していると気づいた過去7年以内に実際に起こったことであり、すべてではなく、ほんの一部にすぎない。これは、業務委託契約をしている側からしてみれば、管理会社の契約不履行としてもよいはずだ。委託であるとしても、管理会社を信用できるとはとてもいえない。責任追及をして契約解除をしてもいいはずだった。

それを何度も理事会で指摘をした。しかし、理事会側では、5名中、ひとりを除いて現状に疑問を抱いてはいなかった。そこではじめて理事会が怪しいということに気づいた。中でも理事長の独善性にはあきれてしまった。

管理組合が機能していない

マンションの資産価値を守るため管理をする。マンション購入者は管理組合をつくります。いわゆる理事会です。マンションを資産として所有している人のことを区分所有者、組合員という。わたしのマンションの理事会は、6人の理事で構成され、任命されると2期(2年)務めます。理事は輪番制。全44世帯のため、14年に1回まわってきます。

周ってきたときに担当を決める。理事長、副理事長、会計、自治会、そして監査役です。監査役は監事ともいい、理事および管理会社の業務監査と会計監査をする役目です。これが2019年、2020年とうまく機能していなかった。

会計担当は、会計業務というのがわかっていなかった。規約や委託契約を読んでいない。それどころか理事会にも出席してこないことがあった。それは監査役にもいえた。管理会社が業務を引き延ばしているのが明白なのに指摘しない。理事会にも出席してこないことがあった。あげくのはてには、監査役自身が消防点検をしておらず、管理会社から指摘をうけていた。

理事長は少しはまともかな、と。期待がはずれだった。

あるとき、不思議な出来事が起きた。理事になって間もない2019年の2月初旬のことだった。共有部分の1F廊下を歩いているときだった。なにか変なものを見つけた。タイルは横15センチくらいある。なにか大量の出血のようなものだった。

2019年2月

これを理事長がすぐに消した。あのときは、ずいぶんとりっぱなことができると理解した。ところがどうも証拠を消す、あるいは、隠すためにしたのではないか。

それからしばらくして、この血痕のような跡がついている近くが割られていた。雨を防ぐガラス製の庇(ひさし)が破損していた。これはどうしたらこのようなことが起きるのか。しばらく理事のだれにもわからなかった。

フロントマンが階の上のひとがスマホを落とした、と。スマホの落下であれだけの破損が起きるとは考えられなかった。50センチはあった。落としたひとがスマホをとろうとしてガラスの上に踏み入れたという。その時に破損したと報告してきた。ガラスの上に体重を乗せればあのくらいの穴は開く。なぜあのようなことをするのか。加害者は一度も理事会に来ることはなかった。

破損をどう補修するのかについて話が行われた。加入中の損害保険を使うという。免責はあるのか。新たな費用が発生するのではないのか。フロントマンからは何の解答もなかった。

しばらくして保険と加害者で半分づつで負担する。保険更新時には、保険料の増額はないとフロントマンはいった。それを言ったきりフロントマンは3か月後に会社を辞めた。ウソだった。実際、保険は増額されることがわかった。費用が発生し補償修理はされた。しかし、工事の報告はなにもなかった。

これに対して理事長は、議案として問題なしとして総会に通してしまった。なぜガラスを割るという過失行為を見逃すのだろう。次に同じような事件が起きた時にどうするのかあやむやにしたままだった。

ひとりの理事は、そのことに合点がいかなかった。猛烈に抗議した。書面で問題点をまとめて理事長に報告した。管理人を交代させてほしい。庇の補償を明確にしてほしい。植栽をきれいにしてほしい。管理会社を変えてほしい。なぜか何度言っても聞き入れられなかった。

その理事は女性だった。

そのひとは管理会社の候補まで探してきた。そして資料を準備していた。それでも理事長は議案としてあげない。なぜあれほどまでに現状の管理会社にこだわるのかわからなかった。

理事長はどういうわけか修繕積立金の値上げには熱心だった。まわりにあるマンションの管理費を調べてきて比較した。1世帯あたり7千円の値上げ案。そうすると管理会社は、(喜んで)すぐさま修繕積立金の値上げ案を出してきた。同時に長期修繕計画案を出してきた。それがまともなものではなかった。

管理士協会所属の管理士に計画案を見てもらった。国交省のガイドラインにある9項目のうち3項目しか満たしていないということだった。それを理事会で話をした。それでも理事長は計画案を通そうとした。

なかでも根拠のない数字は機械式駐車場の建て替え費用だった。出してきたのは、6年前に議決されたものより5倍に跳ね上がっていた。2、700万円ということだった。2016年の計画では540万円だった。機械式駐車場に入っている車は27台。1区画あたり20万の計算だった。それが100万になった。

それが根拠が明らかでないまま、1区画100万、全2700万円になっていた。

なんど根拠を問い合わせても管理会社からの回答はなかった。3回は同じ指摘をした。総会でもした。組合員から機械メーカーから見積もりはとったのかの質問もあった。それにも答えなかった。理事長はこの案を通すことを問題視していなかった。わたしは、理事たちのいる前でたずねた。これでいいのですか。2016年の数字から5倍になっている。なぜこれでいいのですか。

理事長は理事たちがいる前で言った。あの数字を載せた紙はゴミ箱に捨てた、と。

わたしは、弁護士に相談した。相談して5分もしないところで、管理会社は規約に沿って契約解除しなさい。理事長と管理会社が私的な関係にあることが疑われる、と。弁護士は事態にあきれかえり、むしろ怒りをわたしに爆発させていた。こんなくだらない安っぽい案件を持ち込むな。そういいたげだった。わたしは弁護士の対応にがっかりした。

個人が特定できることは控える。しかし理事長はよくガバナンス(企業統治)問題でニュースになるメガバンクに勤務していた。ならば物事を隠す傾向があるではないのか。わたしは、管理会社とのやりとりや提出資料を理事長がひとりでかかえ、理事会に持ってこないことが理解できなかった。

独善的な理事長。それを指摘しない監査役。会計、自治会の担当もそれを問題視していないようだった。これでは、理事会が機能していないといえよう。

ここでとりあげたことは、実際に起こったことのほんの一部。使用細則違反をしながらペットをマンション内に飼っている。そしてその汚物が郵便受けの下、辺り一面に落ちていたことがある。バルコニーからのたばこのポイ捨て。それが1階に住むひとからフィルターの現物つきで苦情としてあがってきた。加えて道路に面した植栽部分にもたばこのポイ捨てがされるようになっていった。

理事会は機能不全だった。理事は規約・契約を読んで運営しない。理事会に参加してこない。理事長の独善性が見受けられた。理事会に誠意がなかった。総会への出席率は10世帯からさらに下がっていった。わたしは、事態がさらに悪くなるのではないかと懸念した。

どうにも解決策を見つけられない。そして千葉県マンション管理士協会に相談することにした。そこではいくつかいいアドバイスがもらえたものの合点がいかないことが待ち受けていた。

協会はアドバイスはくれる、けど・・・

管理の状態が年を追うごとに悪化していったこと。13年前に住んでいる人たちが挨拶をしなくなった。なにか負の連鎖に入っているのではないか。7年くらい前になんとなく気づきました。そして入居後23年が経過して2度目の理事職を引き受けた時。管理会社が委託契約通りにしておらず、それを理事会で指摘してもうまくいかない。理事会が機能不全でした。

そんなこともあり、外部に相談することにしました。もよりの市役所に住宅政策課というのがあった。部署の呼び方はいろいろあるでしょう。そこに電話をして住所、氏名、電話番号、マンション名、理事会での役職、話す内容を簡単に伝えて受付を済ませた。相談会は、毎月1回行われており、希望をすれば協会が主催するセミナー、個人相談会にいくことができます。

わたしは、市役所で行われている相談会を利用しました。

相談会は、各県のマンション管理士協会から管理士を招き、30分程度、相談できるというもの。この制度を4年間で9回、4.5時間使いました。朝9時から12時までの3時間の中で都合のいい30分を指定する。9時を指定しました。当日、2人の管理士が待っていてくれます。そこでマンション管理で困っていることを話せます。

時間が来ると部屋に入り、もう一度、基本情報を伝えます。そこで5分程度は消化してしまい、残り25分程度です。1回につきひとつの事柄しか伝えることはできないでしょう。持っていくものは管理委託契約と通常総会の議案の入った資料、理事会の議事録、報告書を過去数年分、長期修繕計画、そしてマンションの見取り図を持っていきます。

それを見せながら、まず簡潔に状況を話しました。管理人が清掃をしないこと、管理人室で寝ていること、ドア工事が進まないこと、廊下に血痕が落ちていたこと、庇(ひさし)の破損事故、補修工事への損害保険の適用、階上から芝生部分へのたばこのポイ捨て、道路に面した植栽部分へのたばこ不法投棄、植栽が枯れている、7つの定期点検の報告未提出、長期修繕計画の不備、機械式駐車場の建て替えが5倍に、その根拠の説明がないこと、管理費滞納、競売事件、4分の1、10世帯の区分所有者が消防点検未実施、ペットをマンション内で飼育、それによる使用細則違反。

これらの状況をひとつづつ伝えて、相談に乗ってもらいます。最初の数分を伝って事象を伝える。写真を見せる。これらをマンション管理に関する一般的な法律、会計、金融、組織を学び、建築用語を使って話します。マンション管理標準規約と委託契約を読んでおく。事象を伝えると管理士が20分程度、さらに問い合わせを対面でしながら解決策を提示してくれます。

ただ、事象を伝えるといっても問題のうわべだけを伝えたことに終わることが多い。問題を構造化する技を持ち合わせているとは限らない。管理士もなんとか理解はできるものの具体的な解決策を提示できない。きわめて一般的なことは提示できます。

例えば、管理組合への参加率が悪い。それは、理事の問題意識を高める。そのような回答は出ます。では、どう高めればいいのか。マンション・コミュニティがほぼ崩壊し、だれも理事をやりたがらない、理事会に出たがらない、総会に出席してこない。こういった現状を伝えても一般的なことの話になってしまいます。

ほとんど問題に対して理事会で取り上げてもそれを解決することが管理会社で持ち合わせていない。理事会でも事象を掲示板で伝えるのみで改善にはいたらない。それが延々と続きます。また、相談会は単発であるため、次の相談会では、違う管理士が担当をすることで最初の基本情報から話をして理解をしてもらわなければなりません。非効率です。

そもそも最初の相談会からつまづくことがありました。管理士協会から派遣されてきた2名の管理士のうち、ひとりは、面談中にもかかわらず、イヤホンをつけたまま、なにやら音楽を聴いているようでした。こちらが現状を説明している時間に聞こうとしていない。途中で怪訝な顔を示すとイヤホンをとってようやく一言、二言、となりの管理士と言葉をあわせている。これでは相談にはなりません。わたしは、20分程度で切り上げて、ほんとうにまともに受け取ってくれているのかというような表情をして帰りました。

ですので、2度目のときもそれほど期待していなかった。ところが2回目、3回目となると長期修繕計画の見方や不備の指摘、管理会社の経営体質と解決アプローチ、協会と国土交通省といった見落としがちな指摘をしてくれるようになりました。そのような知識は増えるものの、問題の解決にはなかなかならない。

協会とはある程度、ここまでという距離をおきながら、一般的な問題理解ということにとどめることにしたのです。満足度としては半分程度でした。

そしてこのようなことに5年かけているうちに、事態はどうも悪化していき、思わぬ事件に発生していくのではないか。区分所有者によるたばこのポイ捨てでした。3階建てのマンション。1階庭園の芝生にたばこのフィルターが何本も捨てられている。その現物付きで理事会に苦情が来たのです。

そこで警察にいきました。そこで刑事の話から思わぬ市内の状況を聞き、弁護士、医者、裁判所、消防署へと発展していきました。そのエピソードは次回にします。

警察、弁護士、医者、裁判所へ

管理会社が契約どおりにしてこない、仕事を先延ばしにする、理事会はそれをとがめる様子がない。何かおかしい。外部の管理士協会は相談には乗ってくれるものの一般的なアドバイス。4年間、具体的な打開策がないままだった。

そして1階から苦情があった。管理組合宛の郵便受けに。そこには封筒があった。紙面で書かれていた。階上から専用庭へたばこのポイ捨てがある。そして使った複数のフィルターが芝生に落ちている。その写真とフィルターが証拠として入れてあった。理事会でなんとかしてほしいという主旨だった。

理事会は書面で注意書きをして掲示板に張り出すことにした。そして44各世帯に配布するというものだった。わたしは、気になり目安箱に投書をしたひとのところにいって、その後どうですかと聞いた。そうするとフィルターのポイ捨てはなくなった、と。ただ、ほかの理事5人は被害者の状況とポイ捨てがなくなったのかどうかを気にしている様子はなかった。進捗を把握せず、掲示板に注意書きを張り出しただけだった。3年経ったいまも張り出されたままにている。

苦情が出た頃、京都でアニメ・スタジオが放火された。アニメーターが火事で死傷したという事件がおきた。そんなこともあってか、ちょっともよりの警察署にいった。

署に入るとすぐ受付の案内にいった。マンションで困っていることがある。係は3階の生活安全課に行くように指示した。そこで受け付けるという。窓口で時間の空いている刑事が相談に乗ってくれた。20分程度話ができた。

そこでわかったことはよほどのことがないかぎり、警察は事件発生後でないと出動しないということだった。被害届がでれば事情聴取をする、と。その被害届の記入欄に何が書けるか。物損事故、身体への損傷、それらを事件として扱うかどうかといったことを判断する。

フィルターが何本落ちているか。庭は火事になったのかどうか。なったのならばどんな損害が出たのか。証拠はあるのかどうか。

管理組合から要請があればパトロールはできる。全世帯対象にして各世帯個別にはしないということだった。そこまではする必要はないか。ここは判断しにくいところ。100メートルも離れていない公園近くのアパートが全焼している。そこは全部新しく建て替えたという事件も起きている。

なかなか判断がつかないところでふたりめの刑事が話してくれた。住人どおしのトラブルはとてもやっかいでなかなか打開策がない。そうなのか。

この市では生活安全課で対応する案件が毎日30件ある。そんなにもあるのか。めったには起こらないはずなのでは。いやいや、ほとんど毎日発生しており年間では6千件にのぼる。そんなに安全な市ではないとのことだった。

刑事さんも大変ですね。そうするとこんなことも話してくれた。県庁所在地のほうではさらに状況がよくない。どういうことですか。毎週のように強制入院者が発生する。県知事が署名して隔離施設に送られる。強制入院になるようなひとが千葉県内には年間50~60人いる。そうなのか。そのとおりだということだった。

やはり調査をお願いしたほうがいいでしょうか。

やろうとすればできる。しかし、フィルターについたつばからDNA鑑定をして加害者を特定しなければならない。それには医者に依頼する。その鑑定には30万円ほどかかる。そして被害届を出して損害賠償になれば弁護士を雇うことになる。どこまでやるか。そこで警察署をあとにした。

そこまではすることもないかもしれない。しかし・・・。

弁護士に会うことにした。法テラスに電話をすると、「管理会社の契約不履行の可能性あり、その責任追及ですね」と理解してくれた。そうして市の相談窓口で30分無料という法律相談という制度を知った。

その制度を利用して、3年間で4人の弁護士とあった。弁護士というのは、とても話が通りやすく時間効率がよい。理解が早いため、判断がつきやすい。ただ、少しだけ相性がある。

ひとりめの弁護士は、弁護士が署名をして管理会社へ業務改善命令の手紙を出状できるということだった。打開案をすぐ出してくれた。ただ、その着手金には10万円がかかる。そして一般向けに扱う案件と報酬について説明があった。民事訴訟であれば、着手金+成功報酬(損害額)+実費(交通費、食費など領収書)であり、時間あたり3万円の弁護料が発生する。全体として1千万くらいの事件からを担当する、と。

すばやく理解でき、日頃から法廷で弁護をするひとだ。わかりやすい。ただ、責任追及をしてこれだけの損害賠償をできるのか。

半年くらいしてふたりめの弁護士にあった。委託契約を解除するだけの話だ。裁判所で弁護をするような案件ではない、と。管理会社を代えるだけの話。そうすればよいだけだ。

ところがある理事が代わりの管理会社候補を提示したにもかかわらず、理事会で理事長が一切とりあげようとしなかった。これでは管理会社はこれまでどうり引き延ばしをするだけで仕事はしない。

そこで三人目の弁護士にあった。理事長の独善性。理事長と管理会社の私的な関係が疑われる。規約に沿って契約解除しなさい。また、このような(安っぽい)案件を持ってくるな。8分で終わる面談だった。わたしは頭に血が上った。お盆明けの暑い夏だった。

1年ほどたってもうひとりの弁護士にあった。前回の弁護士は指名しないようにと依頼しておいた。親切に聞いてくれた。それでも内容は同じだった。規約に沿って理事会で決議をし、契約解除をしなさい。それだけの話だ。

少し、話が通ってきたところで、それとなく聞いてみた。どのくらいの報酬なら訴訟を引き受けてもらえますか。やはり、1千万ですか。返事はこうだった。2~3百万でも引き受けますよ。損害賠償額の計算が前提だった。

帰宅して被害額を計算ができるかを調べた。弁護士と話すのが一番早い。ただ、証拠、損害賠償額、そして報酬額はどのくらいになるのだろう。計算の目安が出ないと弁護士が親身になって話を進めない。

そうこうしているうちに競売事件が発生した。競売というのは、所有者が債務不履行になり借金分を支払うことができない。そのため、不動産会社にかなりたたかれて所有物件を手放さざるをえなくなる。それがわかったのは、毎月の管理費・修繕積立金の滞納が発生したからだった。

その滞納問題が1年半続いているのに管理会社からのフロントマンは事態の把握ができていなかった。それどころか委託契約に記述されている督促をししたかということにはっきりとした回答をしない。督促は、郵便、電話、電子メールのいずれかで発生時から毎月しなければならない。そして半年後は理事会の方でひきうけるように明記されている。理事会がそうしている様子はない。

滞納が続き、所有者の物件が売りに出されるまでにはいくつかの不動産会社が見学に来る。その見学をしにきたひとに聞いてみた。督促をしているかどうかはどうやったらわかるんですか。通常は管理会社は裁判所に通知を出すそうだ。そこで裁判所にいってみた。

自転車で10分くらいのところに裁判所がある。駅から数分のところという恵まれた立地。にもかかわらず裁判所の中は日中がらがらだった。競売物件の資料は4階にあるという。狭いロッカーがあって、そこに競売事件になった物件資料が置いてある。探したが見つからなかった。

そこでまた、別の日に見学に来ている人に聞いてみた。そうするとインターネットで競売物件が開示されている、と。検索すると確かにあった。競売になれば裁判官の署名がはいり、販売価格よりも1千万ほど安い価格になっていた。これほどまでに下がってしまうのか。その場所はリフォームされて売却され、販売されることになった。

こうなってくる区分所有者にとっては、自分のところがどのくらいの価格まで下がっているか気になる。長年、取引のある金融機関に相談した。そこには宅建の専門家がいて、わざわざ時間をとって、マンション物件の資産価値について説明してくれた。資産価値を守るのは簡単ではない。

資産価値を守る

長年取引のある金融機関。もよりの店舗にいくと住み替えの広告が目に入る。広告を展示しているくらいなら住み替えの相談にのってもらえるであろう。宅建の資格を持つ担当者と話ができるという。そのひとに20年経過したマンションでやや困ったことがある、と。住み替えを検討したい。ただ、現在住んでいるマンションをできるだけ高い価格で売却したい。そのようなことをいってみた。

1時間ほど話すことができた。最初の30分は、生活スタイル全般についてであって、千葉県東葛地区の住まいの実態。やはり、徒歩で駅まで何分でいけるのか。それが住宅選びのポイントだという。

後半は、住み替えについて。マンションの資産価値はどのように決まるのか。できるだけ高く資産価値を保持するにはどうしたらいいか。担当者の話では、管理組合が機能していること。そして修繕積立金が十分にあるということだった。管理会社については一切話されなかった。ということは、管理会社は資産価値には影響を及ぼさないということか。

系列の不動産取引会社を紹介してもらった。あらかじめマンション名を伝えておき、住み替えの相談をした。現在のマンションはどのくらいの価値があり、どのくらいで売却できるのかを聞いてみた。それは驚くような下降線を描いていた。

20年経過すると買った時の値段では売却できない。それどころか7百万円程度価格が下がってしまう。そして取引で100万円程度かかる。さらに引っ越し費用がかかる。ざっと1千万円程度下落する。

さらに20年間で払い続けた借金の金利支払い分。借りた時の住宅金利は2.6%であったため、1400万円くらいの金利負担になっている。これに管理費・修繕積立金を負担してきた。20年で売却をした場合、毎月10万円程度は支払ってきたことになる。駐車場代が加わる。決して安いわけではない。

金融機関の担当者の話に従えば、資産を守るには、組合を機能させること。そして修繕積立金を確保させることしかない。絶望するわけではないが、奇跡は起きない。わたしは、高い理想主義者ではないが、現状が悪くなっていくのを達観しているような理事会が理解できなかった。なぜこれほどにマンション管理の実態が悪化しマンション・コミュニティが機能してこなくなったのか。

やはり、13年くらい前に気づいたこと。リーマン・ショック以降にマンションに住んでいる人たちが会っても挨拶をしなくなった。もともとよそよそしい住人はいたけれども、挨拶はしていた。それが次第に言葉を交わさなくなっていった。そしてすれちがっても表情すら変えない。だれが住んでいるのかわからない。どんな仕事をしているのかもわからない。

わたしは、20年以上、毎年12月中旬に行われる管理組合の通常総会に出席した。2時間かけるがほとんど管理会社のフロントマンがしゃべっている。参加者から質問はほとんど出ない。管理会社が信頼できると誤解している。理事会に誠意があるか。

年々、参加する組合員の人数が減ってきた。半分に達しないどころか10世帯。4分の1程度まで下がった。昨年はたったの5世帯だけだった。だれも総会に参加したがらない。輪番制の管理組合の理事を引き受けたがらない。隔月の理事会に欠席する。管理会社に丸投げしたまま。

この事象を説明するにはおそらく住人にこのような心理が働いているのではないか。

だれかがやるだろう。自分でなくても、(じっとだまって、静かにしていれば)、だれかがやってくれるだろう。自分の仕事ではない。管理会社は大きいからまともにやってくれるはずだ。管理なんてめんどくさい。トラブルに巻き込まれたくない。住人と関わりたくない。

少しくらい乱れていてもいいではないか。たとえ、管理人が掃除をしなくても。バルコニーからたばこのポイ捨てがあっても。共有部分の庭にたばこが捨てられていても。ペットを飼って汚物を廊下に垂れ流しても。駐車場に苔が生えていても。管理会社が別の地区で管理費を横領・着服していても。

なんとかなるだろう。なりはしない。解決策はあるだろうか。泣き寝入りをして住み続けるか。それとも住み替えるか。

問題提起はし続けた。確かに提起をして理事を引き受け、組合員として通常総会に参加するというのもありうる。しかし、提起をしても理事会が機能していない。だれも助けてくれない。助ける組織もなければ、救い出してくれるひともいない。

理事が規約と契約を読んできていない。そして読まないということは読めない。総会で発言がないのだ。それほどまでに放置状態になっている。そう考えると現実的になるしかない。状態は悪くなる。マンション資産価値は下がる。

そうなると住み替え。なるべく住みやすい場所を探す。東葛地区であれば、流山おおたかの森、あるいは、柏の葉であろう。ここはつくばエクスプレスが開通したあと、急速に新興住宅地として発展してきた。柏の葉は、三井不動産がスマートシティとして未来都市構想の一環としてまちづくりをしている。ららぽーとがあり、蔦屋書店がある。公園もあって、スポーツも盛んである。裕福な地区で安全であろう。

もうひとつは、流山おおたかの森。ここにもつくばエクスプレスが通っており、人口15万人。比較的小さな市である。常磐道が近くにあり、交通アクセスがよい。森の図書館がある。

また、神奈川県には大和市がある。ここは、家電メーカーが住宅コミュニティをつくっている。戸建ての屋根には太陽光パネルが設置されている。エコに関心の高い人たちが集まってくる。この時代にはエコに関心が高い人がいい。

このことからいえるのは、都心から20キロくらいの郊外にあるマンションであれば、20年くらい経過したところで住み替えた方がよい。40年にもなると管理会社が委託を拒むという。そうしたら自主管理をするしかない。しかしだれもできない。やりたがらない。

20年くらいであれば、資産価格はそれほど下がっていない。3千万程度で買ったならば、物件の値下がり、管理費・修繕積立金の負担、そして金利負担を合わせても月12万の出費で済む。20年で3千万くらい消失してしまうが致し方ない。マンションは終の棲家にはならない。あくまでも仮の住まい。

大学生は両親と住めるのであれば、できるかぎり30歳くらまで両親と住む。そして貯蓄をしたほうがいいだろう。結婚をして子供ができれば教育費もかかる。2歳から大学卒業までの22歳までオール公立(県立→国立大学)で770万、月当たり3万円。オール私立であれば2,200万かかる。月当たり9万円。首都圏ではこれだけの負担になるため住宅費はかけないようにしたい。

読者の皆さんが住んでいるところはどうでしょう。マンションに住んでいるのであれば、すれ違ったときに、軽い挨拶はする習慣があるでしょうか。朝、おはようございます。それが次第に小さな声になっていったりはしていないか。あるいは、全く声には出さないようになった。

それどころか挨拶もしない。玄関を出るなり、歩きスマホをはじめる。目を合わせない。もし、そのようなことが起きていたら10年後には、わたしの住んでいるマンションのようになっているかもしれません。かろうじて形は成しているが限界集落になっている。

見えない落とし穴に気づく。そして快適な暮らしができますように。