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キューバのクラーベ

 クラーべ(clave)とはスペイン語で
鍵という意味です。
キューバ系音楽の世界ではリズムの
アクセントとして非常に重要視されています。
通常、木製の棒状のクラベスという楽器で
このアクセントを演奏します。

キューバで買ったクラベス

 譜例1はソン・クラーべのスリー・ツーと
譜例2はツー・スリーです。
2小節をひとつのまとまりとしてとらえると、
1小節目に3つ、2小節目に2つのアクセントが
あることからこのような呼び方になります。
a.のスリー・ツーの小節を前後にひっくり返すと
b.のツー・スリーになります。

 

譜例1

     

譜例2

         
 譜例3、4はルンバ・クラーべと呼ばれるものです。
スリーサイド(3つのアクセントのある小節)の
最後のアクセントがソン・クラーべと比べると
8分音符1つ分後方にずれています。


譜例3


譜例4


譜例5、6は6/8拍子です。
よりアフリカ起源の
クラーべである印象をうけます。
4拍子クラーベ同様、1小節目と2小節目の
リズム型が入れ替わっています。
プリミティブでありながら、柔軟性と多様な
発展性を持っています。


譜例5

 

譜例6

Tumbao(トゥンバオ)

 トゥンバオとはピアノなどで演奏する
バッキングのことです。
譜例7は3・2ソンクラーべとトゥンバオです。
譜例8は2・3ソンクラーべとそのトゥンバオです。
3サイドと2サイドが逆転しているだけですが、
かなり聴こえ方がかわってきます。
(上段トゥンバオ、下段クラーべ)

譜例7 3・2 ソン・クラーベ


譜例8 2・3 ソン・クラーベ

クラーベの逆転

 3・2のクラーべでで始まった曲は最後まで
3・2で演奏するのが基本です。
しかし、まれに途中で入れ替わるもの
(もちろん意図的に)があります。
譜例9では、リスナーは3・2のクラーべで
感じて音楽を楽しんでいたらいつのまにか、
2・3になっていたという不思議な罠に
落ちることになるわけです。、
なおかつそれが快感だったりします。

譜例9

クラーベ逆転方法
 
 譜例9がクラーべを逆転させる方法です。
通常8小節あるAメロをあえて7小節という
奇数の構造にして、本来あるべき3・2の
2サイドを次のBメロの
先頭小節にするのです。このようにすると、
違和感なくクラーべを逆転することができます。
単純ですが、音楽のノリが突如かわるので
面白い効果を生みます。

クラーべ逆転の参考曲

・ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブに収録の
「Candela」
・ティト・プエンテの
「Maria Cervantes」

「Maria Cervantes」はたいへんよくできた曲で
サルサインストの名曲だと思います!


なぜ、興味深いか?

 多くの日本人が生の音楽にあわせて
手拍子を叩くとなると、単純な2拍子か
4拍子が圧倒的多数ですね。
しかし、キューバでは露天のみやげ物屋の
おっちゃんでも、お客にクラベスを薦めるとき、
クラーべを叩きます。
「なーるほど!」と思いました。
キューバ人は無意識に叩いてしまうリズムが
すでにクラーべになるのがあたり前です。
(スペイン人にもフラメンコのリズムがあり
同様のことがいえます)
ぼくには、このクラーべの上に複雑に
いろんな打楽器が絡んだり、トゥンバオが
発展していった過程を経てきた
歴史をもつキューバ音楽に興味を抱きます。

 正直、現代のサルサではトゥンバオの
役割はほとんどピアノがやるのでギターの
でる幕はありません。
というか、ギタリストが参加している
サルサバンドはキューバでも日本でも
むしろ少数派でしょう。
では、なぜギター弾きのぼくが興味を
持つかというと、やはり音楽的なリズムの
奥深さを感じるからです。
単純に心地よい音楽だからとも言えますが・・。
広いパースペクティブを持つには、
できるだけたくさんのジャンルの
音楽にふれることが大事ですね。
自分が演奏する機会の少ない音楽でも
積極的に聴く姿勢は持ち続けたいものです。

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