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中共六大(1928)時の路線対立

 中国共産党の第六回大会はモスクワ郊外で1928年6月18日から7月11日までモスクワ郊外で開催された。出席142名。そもそも党大会を中国国内で開催できなかったことは、蒋介石による弾圧により中国国内で公開活動ができない状態に陥っていたためであり、逆にモスクワで開催できたのは、当時の中国共産党が、国際共産(コミンテルン)によってほぼ丸抱えの支援を受けていることを示していた。以下、記述は下記資料による。
 李蓉 葉青如編著『在莫斯科舉行的中共六大』中共黨史出版社2017年。
 周恩来はコミンテルン書記のブハーリン、同東方部副部長のミーフがいかに中国共産党に介入したかを記録している。二人は、張国燾、瞿秋白らは大知識分子だとして労働者幹部に交代させることを求めた。またブハーリンは中国のソビエトや赤軍(紅軍)の将来に悲観的で、その高級幹部、朱徳や毛沢東を、赤軍から離れて学習させることを求めた。また、ミーフは中国党の幹部は理論が弱いとして、王明、沈澤民らを中央を参加させることを示唆した。これは東方学校の学生の党幹部軽視をもたらした。また(労働者幹部)向忠發を極度に持ち上げたことは、向による「江浙同郷会」批判や、王明による反「江浙同郷会」闘争をもたらした。ミーフに対する党代表団の印象はよくないとしている(『周恩来選集』から前掲書pp.21-23)。
 張国燾はこのときのミーフの干渉とそれに取り入った向忠發を苦々しく記録している。ミーフは中国共産党を操縦しようとしていると瞿秋白とともに感じたと。また大会で通訳を行った、中国人留学生の陳紹禹や沈澤民などの党幹部を軽んじた態度もミーフがロシアで幹部を培養しているとして反感を募らせている。向忠發は1927年にモスクワにきてコミンテルン中共代表に収まっていた人物。徹底してミーフの主張を代弁して、立場を強固にしていたが、口を開けば「これこそコミンテルンの正しい路線だ」と。その向は陳独秀は地位にとどまるべきでないとした。果たして中央執行委員から、陳独秀は出席していないとして落選。最初の中央執行委員会にもミーフが出席し、その中の7人の政治局員、向忠發を書記とするほかなどひとりずつ役割までミーフの提案のまま決定されたのだとする(張国燾『我的回憶』から前掲書p.31-37,esp.35-37)。
    李立三は大会代表は4派に分類できるという。(1)極右派、すなわち陳独秀の取消主義。(2)張国燾、羅章を頭目とする右派、その主張は極右と似ていて国民大会の開催を主張している。(3)項英を頭目とする江蘇派。中央が暴動主義を行うことに反対し、陳独秀の極右派にも反対だが右派分子に妥協的。(4)瞿秋白を頭目とする中央。広東代表団と共青団代表団の支持を得ている。前3者が連合して中央に反対し、中央は逆に前3者に反対していた、とする。そして開会直前の時点で、李立三は自身、瞿秋白の革命の形勢は依然高いとする誤った観点に賛成していた、そのため盲動主義に陥り、絶えず蜂起を組織しようとしていた、とする。李立三は大会開会前に、スターリンが長時間にわたり、李立三らと懇談し、中国革命が退潮しているとの自身の認識を伝え、盲動主義に反対すべきだと伝えたとする。このスターリンの談話は、第六回大会に指導的作用を及ぼし、六回大会の決議の基礎になったとしている(『李立三百年誕辰記念集』から前掲書pp.24-27)。
   大会は何を決めたのか。一つは人事である。まず中央執行委員会を選出した。そしてこの中央執行委員から政治局員7名がブハーリンの立ち会うなか、ミーフにより示され、中央執行委員会の決定とされた。向忠發(書記)、瞿秋白と張国燾はコミンテルン中共代表としてモスクワに残留、李立三(組織)、蔡和森(宣伝)、周恩来(軍事)、項英(労働運動)である(張国燾『我的回憶』から前掲書p.37)。さきほどの李立三による出席者のグループわけからすると、陳独秀を排除し瞿秋白と張国燾の影響力を削ぎ、どのグループの長でもない向忠發を書記に指名する決定。
 もう一つのおそらくもっとも大きな点は、スターリンが李立三に示した、中国革命は退潮期に入ったというロシア側の認識に沿った闘争方針の変更である。
 羅明は次のように伝える。最終日7月11日に大会は、当面の形勢を2つの革命の高まりの間にあるとして、党の任務は、進攻や蜂起を企てることではなく、大衆の支持を獲得して(爭取群衆)、革命の新たな高まりが来ることに備えることにある、と指摘したと(『羅明回憶錄』から前掲書p.17)。

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中国革命とスターリン、トロッキー(1927-1929)
中国経済学史目次
新中国建国以前中国金融史目次

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