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紅孩「囚徒」『福建文学』2018年第3期

 紅孩(ホン・ハイ)は筆名か。紅孩の「囚徒」は当初、2018年第3期に『福建文学』に発表されたもの。『短編小説 2018中国年度短編小説』灕江出版社2019年1月、238-245より。あらすじは以下。

 主人公の胡二(フウ・アル)の住む村はかつて荒地で、皇帝が狩りの場所(狩獵)につかったところ。やがて皇帝がここはおもしろくない(不過癮)としてこなくなると、墓地(墳地)として使われるようになった。胡二の住む村には胡家墳と吳家墳があり、看墳人は山東から食い詰めて流れてきたひとだという。そしてそれぞれ、胡と吳の姓を名乗っている。
 新中国が成立するまえにできた慣習は、胡と吳の間では結婚しない、冠婚葬祭ではこの両姓間でや金銭や物のやりとりをしない、というもの。
 でお話しは、少し頭のわるそうな胡二のことを、村の主任の吳歌が気に掛ける。成長した胡二は、結婚しないと収まらない年齢になる。他方で目の病気で失明した吳家の娘がいて、この娘も胡二を気に入るが、二人の結婚には慣習が壁になる。困った胡二が、吳歌に相談すると、村役場に行って幹部に挨拶することを勧められる。でも頭の悪い胡二は、口の中に人がいる囚という字を(飢饉で流人を助けた経験から)悪い言葉とは思わず、役場で自分は「囚徒」だと名乗ってしまう。(これは人の作った掟によって、自身が囚われていることを、胡二が結果として言い当てることを指しているのだろう)。

 このお話は、前半の都市の外側の荒地に墓地(墳地)、看墳人。さらにそこから姓が生まれるといったところはおもしろい。また、新中国が生まれる前にできた村の慣習が、新中国ができたその後もしっかり生きているという設定もそうなのだろうかと思いながら頭にとどめた。国慶節で学生の行進をみてそれを真似る話、結婚相談(介紹)所を探して都会に行く話、などの挿話も印象的だ。

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