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高口康太『現代中国経営者列伝』2017

 星海社新書である。中国の経営者の自伝を扱った本は中国の本屋さんでよくみかけるが、それを励志書籍とよび、かれらが最初に成功のきっかけをつかむことを第一桶金という、という知識の伝授から本書は始まっている。そして日本でもたびたび消息が断片的に伝えられる8人の経営者について、その成功物語をまとめている。まず本書について感じるのは、大変ありがたい労作だということ。ともかく知りたかった知識が満載である(写真は東京大学本郷キャンパス 2019年12月4日)。
 本書に共感する点はもう一つあって、中国の現代経済史の俯瞰についてコラムの形で書かれているが、それに共感できることだ。つまり妥当な経済史の見方の上に、成功物語を書いている。紹介されている人物はいずれもメジャーだがたとえば
 聯想の柳傳志(1944- 1966西安軍事伝訊工程学院卒業 1968下放 1970計算技術研究所 1978研究所有志とともに中国科学院計算所新技術発展公司を設立 2004  IBMのPC事業買収 2011 NECのPC事業を傘下に収める)
 華為の任正非(1944- 1967重慶建築工程学院卒業後基建工程兵部隊 1982退役 1987仲間と華為を創業)
   阿里巴巴の馬雲(1964-  1984二浪の末に杭州師範学院英語専攻に合格 1988卒業後杭州電子科技大学教員 1992翻訳会社を創業 1995中国初の商用サイト立上げ 1997中国国際電子商取引センター情報部長 1999同左退職杭州に戻り阿里巴巴創業)
 小米科技の雷軍(1969-  1991武漢大学コンピューター学部卒業    金山軟件:キングソフトに入社 2007辞職 2009小米科技を創業)
 著者の知識の奥深さを感じるのは終章だ。2010年に滴滴出行COOに就任した柳青(柳傳志の娘 北京大学からハーバード。ゴールドマンサックス経て2014年滴滴出行COO)を、新しい世代の経営者の一人として紹介。山寨王、呉燁彬の近況まで説き及んでいる。本書は、中国の企業研究をこれから始める人にとって適切なソースブックだといえる。

#中国 #経営者

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