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范小青「設計者」『花城』2015年第3期

作者の范小青は女性で江蘇省南通の人。蘇州で育った。1978年に蘇州大学中文系に入学。1982年に卒業とともに大学に残り教育に当たり、1985年から江蘇省作家協会に属して創作活動とのこと。この作品は『2015中国短篇小説年選』花城出版社2016年1月pp.262-272より(原載『花城』2015年第3期)。主人公は室内設計の人だから作者個人の話ではなく創作である。主人公には学歴のない悪人でもある兄がいて、しかしその兄には主人公にないものがあって、兄は学歴で苦労したのではないか、あるいは、兄の悪行は精神の病のようなものと許す気持ちになる。そういう小説であろうか。背景には学歴の有無による社会格差の問題があるのではないか。以下あらすじをみる(見出し写真は小石川後楽園の花菖蒲)。

主人公が進学するとき、母は鶏や豚を育てて苦労して学費を作ってくれた。ところが兄がショートメールを寄せて仕事で足を切断したと写真を付けて言ってきた。かわいそうになって、母から受け取った学費を兄に送ってしまった。
その結果、主人公(私)は働きながら学ぶことになり、家の内装会社で働いたが、大学で専門の室内設計の人手は足りていると社長に言われて、実際の内装の作業をすることになり、高所恐怖症なのに梯子をあがり、その梯子から落ちたり苦労した。そこにまた兄からショートメールがきて、お前からもらったカネの治療ではよくならず、かえって悪化したと腐乱した足の写真を付けて送ってきた。かわいそうになって、稼いだばかりのカネを兄にまたおくってしまった。

ところが2枚の写真をよく見ると、まったく別の足だった。兄は私を騙したのだった。兄は悪い人(骗子)なのだ。そこで兄と呼ばず人でなし(狗日的)と呼ぶことにした。彼は私が足の切断や腐乱が嘘だと気付くことがわかっていたようで、2回目にカネを奪ったあと、携帯の連絡はつかなくなった。その後、兄は私の名前を使って母を騙しカネを召し上げた。こうして兄は我々の前に現れなくなった。兄は完全消失を設計したに違いない。

しかし私は兄への怒りの気持ちが収まらなかったので、卒業する最後の年。ショートメールのグループ機能を使って、兄を探すことにした。すると、初中の同窓生からそのまた友人からのまた聞きで、南州市で瓦工(泥水匠)をしている兄を見たとの連絡が入った。そこで私は自身の履歴書を持って、南州にむかった。働きながら兄を探すためだ。

そして私は大きな会社で見習い設計士(師)になった。そして再び兄を探し始めた。そこで私は現場では私の配下になるであろう、高校に上がらず働き始めた兄のことを改めて思うのであった。

ある日、社長に部屋主に鍵を渡せと、電話番号を渡された。私は聞いた。「この人の名前は」。社長は言う。「名前がそんなに重要か?人を探すのに、名前を探してどうするんだ。」。電話を掛けた私は、彼の会社に鍵を届けることになる。そして相手先の会社が不動産仲介会社であることに気づく。そしてその人の語り口から、私は彼を遠くの親類(遠親)と名付けた。「遠くの親類」の携帯が何度もなってから取る様子を見ながら、再び私の思いは兄に飛ぶ。私が電話をしたら兄はその電話を受けるだろうかと。

別の日、社長に明日、現場で現場頭(包工頭)と話すように指示される。翌日、先に現場に入って待っていると、少しだけ年上の頭(かしら)が現れた。頭は兄貴(包大哥)と呼んでくれと言う。これでまた兄貴ができてしまった。その頭にお前は内向的だと言われながら、もし兄が頭を勤めるなら、この頭と同じように多弁だろうかと考えるのであった。
そこに頭を探して女が入ってくる。この女は、頭と親しげなやり取りをするのだが、私と同様室内設計出身で、加えて父も兄も瓦工(泥水匠)だという。そこでまた彼女も同じ目にあったのだろうかと考えた。そして水道の水が出ない原因は、断水かどうか確認することになり、隣家を訪ねた私は、隣家の老婦人が痴ほう症を患っていることに気づく。

仕事を終えて帰ったこの日の夜。故郷の古い友人から電話があり、兄を見た、兄は郊外の工事現場で働いていたとして、工事場所の地番をくれた。すぐに家を出て車(公交车)を探したが、すでに遅い時間だったので車が少ない。運よく乗車、しかし途中で同乗させた一人の男性は、病院服を着ていて言動が変。運転手は面倒は御免だと「チェ」と舌を鳴らした。その時一通のショートメールが届いた。私は兄からの返信だと期待した。私はつぎのように送っていた。「兄さん、私よ。ご無沙汰しましたね。これは私の新しい携帯です。連絡してね。」

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