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陳雲 ソビエトに向かうため上海へ 1935年6-8月

 この1935年にソビエトに向かう「旅行」は、国民党軍の包囲を破り、その支配地域を抜けてゆくものであり、陳雲は中共の最高幹部の一人であり、国民党軍に逮捕されるリスクは高かった。その中で敵地に深く進入して、ソ連への渡航を実現している。これは実現するオペレーション能力が、共産党側にあったということ。具体的には秘密党員のネットワークが存在し、多くの共産党協力者が国民党の陣地の側にいたこと。結果として、国民党(蒋介石)の側は、陳雲のソビエト「旅行」を阻止できなかった。葉永烈は、陳雲のソ連渡航について宋慶齢の関与について具体的に書いている。以下からの採録。葉永烈『歴史的注脚』中華書局2014年6月pp.25-26

p.25   1935年1月、長征途中、陳雲は中共中央政治局常務委員として、著名な遵義会議に出席した。遵義会議は中国共産党の中央指導部を改組して、毛沢東を中共中央政治局常務委員に新たに選んだ(増選)、陳雲は引き続き(仍是)中共中央政治局常務委員で、この時点の常務委員は毛沢東、張聞天、周恩来、陳雲、博古の5人だった。遵義会議のあと、1935年5月29日赤軍(紅軍)が盧定橋を奪取した日の夜、毛沢東は、朱徳、周恩来、張聞天、王稼祥と陳雲を集めて会議を開き、陳雲を中共中央代表として、上海を経てモスクワに向かい、コミンテルン(共産国際)に対して遵義会議の情況を報告することを決定した。このほか、潘漢年も陳雲とともにモスクワに派遣される。陳雲は赤軍が懋功(四川省西北部の地名)の雪山足元の霊關殿に達したあと、赤軍を離れ上海に向かった。潘漢年は陳雲よりは早く出発し上海に向かった。
 長征の途中から上海に向かうことは、すこぶる危険でまたすこぶるむつかしかった。同年に陳雲は上海から秘密ルートを通って、江西の「ソビエト区」に入ったが、もう少しで敵軍に包囲されるところだった。現在、出発にはさらに大きな危険があった。陳雲は四川の人と生活に不慣れであり、かつかなり濃厚な上海訛りがあった。四川でもし陳雲が一言でもしゃべれば、すぐによそ者だと知られた。彼は「資金回収人(收账先生)」に扮し、当地の地下党員の懋昭と陳梁が護送して、秘密裡に重慶まで達した。陳雲は重慶で懋昭と陳梁と分かれ、一人で長江輪船に乗って上海に向かった。
 リスクの中、陳雲は1935年6月に上海に達した。当時、無錫から上海へ陳雲を護衛(掩护)した孫詩圃の記憶では、陳雲は上海に到着後、上海のフランス租界天主堂街(今の四川南路)新永安路新永安旅館に宿泊した。そこは蘇州河から遠くなかった。当時上海には白色テロの気分が覆いかぶさっていた(笼罩)。陳雲は一時, 地下党と一切連絡をとらなかった。というのは新聞をみて、脱党の公開声明を出した離反者(叛徒)の名簿に自分が知っている70人あまりを見つけたからである。·
p.26     陳雲の子の陳元によれば、当時陳雲は国民党のスパイに見つかった(認出)ことがあった。「当時蘇州河には十幾つかの橋があり、橋ごとにすべて国民党のスパイがおり、ほとんどは離反者だった。認識すると、多くの場所がすべてその姿を連絡した。あるとき、不運にも一人のスパイと出くわせた。すぐにスパイに言った、警告する、もし君が私を暴露するなら、共産党は君を許さない、必ず君を探し出して償わせるぞ!陳雲は長い間地下工作をしたので、離反者の心理をとくによく理解していた。果たしてそのスパイは下を向いたまま、帽子をさらに下げ、身体の方向を転じ、何も見なかったかのように立ち去った。」これが上海における二度目の危険だった(訳注 上海での一度目の危険とは、1931年6月23日に逮捕された党トップの向忠発の即日全面自供によって、逮捕の危険にさらされたことを指すのであろう。p.24参照)
 陳雲は当時、上海浙江実業銀行副総経理の章乃器に電話を入れた。陳雲は章乃器に章秋陽への伝言を頼んだ、章秋陽と面会すると。章乃器の三弟の章秋陽、またの名前章郁庵は中国共産党の党員であり、かつて陳雲とともに上海商務印書館で仕事をともにしたことがあり、陳雲と親しかった。章秋陽を通して、陳雲は先に上海にきていた潘漢年と出会うことになった。
 陳雲は上海で孫中山夫人の宋慶齢と秘密裡に会見し、ソ連に行くことについて彼女の援助を求めた。宋慶齢は、陳雲がソ連の貨物船に搭乗する手配をした。陳雲と同行したものには、中共「一大」の代表陳潭秋、瞿秋白夫人楊之華、さらに何叔衡の子の何実楚がいた。潘企之が護送した。こうして陳雲一行は1935年8月5日、上海を離れソ連に向かった。


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