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朱鎔基 改革開放は上海発展の動力 1991/03/13, 15

朱镕基上海讲话实录,人民出版社,2013年,pp.590-594(この原稿は1991年3月13日および15日に朱鎔基が上海の改革の状況を説明した会話をまとめたもの。)(写真は1990年9月27日 上海市第九届人大常任委員会における朱鎔基。) 

    改革開放は上海発展の動力である。我々の改革の目標は今世紀末以前に、商品経済を計画する社会主義(社会主义有计划商品经济)を発展させる要求にもとづいて、中国が創造した、計画経済と市場調節とが結合した運行メカニズムを実現する(具体化する)ことである。我々はすでに10年余り改革開放を進め、とても大きな成果(成績)を挙げている。今後この基礎の上に改革を深化する必要がある。
 まず住宅制度改革である。住宅制度改革の目的は住宅の商品化を実現することである。これまで市民の住宅はすべて国家(国営企業を含む)がすべて丸抱えで建設し、かつ無償で分配し、家賃はとても安かった。上海の住宅制度改革の第一歩は、住宅を完全に政府が丸抱えすることから、政府、企業、個人の共同建設に変えることである。目下は住宅商品化をすぐに実現できないのは、われわれは、市民すべてが住宅を買う力をもつまで労賃水準を高めることはできないからである。そこで最初の改革は、住民が支払う住宅公積金で住宅建設債券を買うことで住宅棟建設資金の一部を集めることである。収入が比較的高い人は、住宅を少し安く売る。このような方法で、住宅建設資金の3分の1を集めることができる。住民の生活水準が高くなるとともに、公積金の割合も増加し、次第に住宅棟建設資金のより多くを個人が負担することになり、最後には住宅の商品化が実現する。この改革案は、全市民の討論を経て、圧倒的多数の市民の支持を得た。これはとても重要なことである。というのは改革するには、まず人々の伝統観念が変わる必要があるからである。
 住宅制度改革の方案は国務院の批准を経て5月1日に開始実行される。しかし我々はすでにかなり大きな住宅棟建設を進める能力がある。上海は去年420万平方メートルの住宅を竣工した。予測ではことしは500万平方メートルに達する。来年は500万乃至600万平方メートル、再来年は700万乃至800万平方メートルである。このように上海市民の住宅状況は多いに改善される。
(中略)
 第二、金融体制改革。
 金融を活性化する(搞活金融)ことは浦东開発の最重要条件である。去年(1990年)12月に上海は中国最初の連合証券交易所を開設した。その前に上海はすでに証券交易を開始していたが、交易所が設立されてからは、証券交易はさらに規則に従って行われる(规范化)ようになり、交易量も増加した。このほか上海にはもともと4つの外資銀行があったが、最近中央は(さらに)6つの外資銀行を批准した。かれらの業務経営範囲はもとの規定から拡大された。二つの中外合資財務公司もまたすでに開業した。今後さらにいくつかの外資銀行が上海に支店を開設する。たとえば日本の第一勧業銀行、フランスのパリ国民銀行はともに強く求めており、我々はなんとか彼らが満足するよう努力するつもりだ。
 現在株式市場に上場する上場銘柄数は少ない。我々は今まさに大量の国営企業から選んでおり、株式制の試行を拡大し、株券の上場量を増加し、国内発行の株券だけでなく国外発行の株券を準備している。株券はA、B制を実施。A株は国内住民向けに発行、B株は国外向け発行で、この2種類の株券はしばらくは相互に流通(融通)できない。
   私は、経済を計画することが社会主義だとも、市場を利用することが資本主義だとも、考えていない。社会主義と資本主義の主たる違い(主要区別)はそこにはない。社会主義の重要な特徴は公有制を基礎とするところにある。社会主義初級段階においては、その他の経済成分の存在が排斥されないだけではない。われわれはただ社会主義公有制が主体地位を占めることを要求するだけである。だから株式制と株券上場は、私有株が一定程度の割合にとどまる限り、問題にならない。対外開放にあたり、国際慣用の方法で融通資金を利用するにあたり、株券売買はルールに従って行われる(規範化される)。株券の価格(行情)は企業経営の状況を反映せねばならないし、株券の交易は国際金融システムのルール(規範)に符合しなければならない。この方面で、我々はなお経験が不足している。今まさに試験と探索の途中である。だから焦ることはない。一歩一歩っ進むのだ。しかし改革の方向は決まっており、党の十三届七中全会(1990年12月25日から30日に審議可決された)中の文書で明確に提起されたように、株式制企業の試行と株券の発行を次第に拡大することである。
 第三、社会保障制度改革。
 現在の国営企業の労働用工制度は、労働の良い悪いにかかわらず、労働者れてから病気で死ぬまで丸抱えで、労働者の積極性を促すうえで不利です。同時にこの種の制度は企業の重い負担になっていて、労働規律や製品の品質に大きな影響を与えている。この改革の第一歩は待業保険制度を実施すること。労働者と企業は(雇用)契約を結び、(労働者は企業を辞めて)待業に加わって良い、(また)社会保障(救済)を享受できる。企業は労働者を丸抱えするのではない。第二歩は養老保険制度を実施すること。第三歩は医療保険制度を実施すること。これらの改革は大変難しい。公費医療制度は人民にとり大きな福音であるが、大きな浪費となり、現在改革はむつかしく、上海一地方では改められず、全国で一緒に改める必要がある。
 第四、価格体制改革。
 価格体制改革は一貫して続いている。目下は主副食品価格改革が進んでいる。この改革の意味は食品価格の自由化することで、市場メカニズムによって価格が決まるようにというもの。現在我々は物価を抑制するに、主として財政補填に頼っている。毎年主副食品価格の補填にはすくなくとも40億元である。それゆえ主副食品価格改革を実施するには、住宅制度改革よりさらに広範な市民の討論を進める必要がある。(中略)
 第五、企業体制改革。
 企業体制改革は企業集団の組織建設のほか、内部管理を強化し、株式制を試行するなどの内容で、外国人に関心のある、中国企業を倒産させるべきかどうかという問題を含んでいる。私はかなり前から賛成で、経営がまずい企業は破産すべきだ。(中略)
 さらに政府機構改革がある。
 現在外国人は我々の仕事の効率の低さ、官僚主義がひどいことに憤慨している。私が考えるのは、第一、官僚主義はどこにもあり良く起こる病気であり、どの国家にもまたそのどの地方にもみなあり、少なくとも上海の官僚義がもっともひどいとはいえない。第二、上海に対して外資を吸引する方面で現れる官僚主義問題に対しては、すでに解決することを決心して、市外国投資工作委員会を設立した。この方面の工作はすでに改善されているが、なお理想的とはいえない。改善されており、外国投資者は上海がこの2年投資手続きの事務処理での改善を賞賛し、基本的に満足の意を示している。理想的でないのは、なお外国人は上海の審査項目や過程で手続きが煩雑で、時間が長くかかり、効率が悪いとしている。私が感じるに根本の原因は、政府機構が膨大すぎて、人が多すぎ、部門が多すぎ、かつそれぞれの部門が法規をもち、法規を執行しなければ過失になる、そこで良くないことをする。問題を解決する根本の方法は組織を簡素にすること、簡素な組織だけが官僚主義を克服できる。(中略)
 まとめるなら、改革の方向はすでに決まっている。改革の歩みを止めてはならない。現在、一部の省市の改革は上海の前方を進んでいる。経済の発展も上海に比べ早い。我々はここ数年内に上海の改革がさらに上手に進められることを希望する。

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