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特別買収目的会社 SPAC

  米国でのブームを受けて、日本でも導入に向けてとりあえず検討されているのがSPAC:special purpose acquisition company特別買収目的会社だ。SPACは買収資金を公募で集めることを目的に上場される会社で、上場時点では買収される非上場会社は定まっていない。一旦、集めたお金を信託したあと、被買収会社を選定、投資家はその段階で先に進まず投資資金の現金償還を選択することもできる。その後、実際の買収を進めるときには、機関投資家などから投融資を受ける。買収により両社を合併、SPACを存続会社とする。被買収会社の所有者にすると、自身が直接IPOする場合に比べて、SPAC側と非公開で価格交渉ができること、また資金獲得のスピードが早いことがメリットである。SPACには、著名な経営者・投資家が加わることが一般的なので、その信用力や経営能力が、付加価値になることも知られている。ただSPAC上場時点では投資家にとって、不確定なことが多くリスクも高いといえる。
 What is SPAC? TD Ameritrade

 これは投資家にすれば、上場時点では過去の実績すらないものに投資するこのスキームは、看板になる著名な経営者・投資家の名前というブランドだけに依存した危険なスキームである。しかし投資家は、SPAC株を売却あるいは現金償還で投資リスクをある程度回避できる一方、付与されるワラント(新株引受権)でも利益を確保できる。看板になる人たちは、合併後の新会社の出資比率20%を確保。そして被買収会社にすれば、すでに述べたように、自身が直接IPOする場合に比べて、SPAC側と非公開で価格交渉ができること、また資金獲得のスピードが早いことがメリットである。
 このスキームに対して、裏口上場、空き箱上場とか、白字小切手会社blank check companiesという別称には、得体のしれない会社という批判的ニュアンスがある。
 SPAC制度の在り方等に関する研究会 2021/10/01-2022/02/16 
    事務局説明資料 2021/10/01

 かつてアメリカでは、休眠している上場会社を買収して、それを殻として利用して、アメリカに上場してくる中国の会社に悩まされたことがある。買殻上市(上市は中国語で上場の意味)とか借殻上市と呼ばれるものである。上場達成後、会計上の不正などが事後的に明らかになり上場廃止処分になるものが続出した。つまりこの問題は、非上場会社に投資する投資家の側から議論することもできるが、上場する非上場会社側からSPACを使った上場手法として見ることもできる。非上場会社が上場会社を買収することで上場を達成する手法は、reverse mergerと呼ばれている。


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