見出し画像

1921年の馬寅初 上海滞在から北京へ

 馬寅初は1920年7月、北京大学に申請して1年の予定で上海に滞在。以下の年譜による講演記録から判断するに、1921年11月には北京に戻っている。しかし明らかに上海滞在を契機に、馬寅初の講演活動は劇的に活発化。彼はその言動が社会的に注目される存在に変化したのではないだろうか。また1921年10月の上海暨南学校師範科で講演「自由平等と中国の経済」で馬寅初は、自由平等の三要件(法律平等、機会平等、機会平等)を上げ、それを満たさないのは奴隷国家だといっている。馬寅初は自由主義者だったのかもしれない、とここを読んだときに思った。
 資料 徐斌 馬大成編著《馬寅初年譜長編》商務印書館2012年pp.55-65

1921年1月 上海浙江興業銀行で講演「我が国の幣制の整理」

   2月 上海浙江興業銀行で講演「外国貨幣売買の危険」
       上海吳淞公学で講演「上海交易所の前途の推測」(上海では150余りの交易所ができ投機が盛んだが、資本薄弱、管理組織不良なものの失敗を予測)
   3月 上海吳淞公学で講演「経済学中の重要哲理」(商品交易において信用は主動的。経済界での信用制度の重要性。時間空間の短縮など。)
   4月 上海紗布交易所で講演「銀行及び交易所と社会の関係」
       上海吳淞公学で講演「中外国際貿易の比較」(貿易の逆調により外債を償還をできないことは中国を危険にさらすと指摘。)(8日)
      上海紗布交易所で講演「普通人の銀行と銭庄に対する心理」(銀行や銭庄が貸付において不良貸付を避けるべきことを力説」(8日)
        上海暨南学校商科で講演「中外匯兌の欠点」(中国の貨幣不統一、銀本位であると等が、為替に不利、商業の不振を招いている。10日)
      上海紗布交易所で講演「我が国商界と銀行界が注意すべき商業手形(標据)」商業手形再割引で得られる弾力性を指摘(19日)
   5月  上海紗布交易所で講演「軽質銅元問題」(本位貨幣は人民に自由に鋳造させ、補助貨幣は政府鋳造として流通に政府が責任を持つ子ことを主張。)(8日)
       上海紗布交易所で講演「通貨派と銀行派の学説」両派の均衡が紙幣発行に現金を担保として保有することにつながったと評価。
   6月  上海吳淞公学で講演「貨幣の起原」
      上海浙江興業銀行そして暨南学校商科でそれぞれ「信託公司」で講演。今日の上海の信託公司はただ、儲けを追求するだけで、道徳法律政治習慣を無視している。将来必ず失敗すると批判。
   7月 東南大学商科と暨南学校商科が連合して上海商科大学設立。教科書の編集の相談(24日)には胡適も加わっている(14日、24日)
                    上海商務印書館敷設国語演習所で講演「中国の経済問題―資本は万悪、労働こそ神経説を評す」左派は資本は万悪だとするが、自分は資本も労働もいずれも神経だと思うと述べている。(31日)
     上海浙江興業銀行で講演「我が国信託公司前途の推測」近々の信託熱の勃発。さらに暴発を予測。投機の風潮は寒心に堪えないとしている。 
     上海銀行学舎で講演「中国公債問題」1921年4月政府は公債基金を設立した。軍部や交通部による流用を批判。
   8月 上海商科大学の新入生募集の件で手紙を書いている(3日4日)
      胡適の依頼で上海での北京大学新入生募集試験に立ち会っている(胡適との相談10日 試験は20日)。 
     浙江興業銀行の葉景揆に手紙を書いて同行顧問の職を辞職したいと申し出ている。能力もなく成績もないと(30日)。
   9月 浙江興業銀行の葉景揆は慰留に努めるが、送られた9月の報酬を返納、辞職している(1日 12日 16日) 
     上海商科大学教務長に就任し開学の典礼に参加(28日)。同大学では教授として経済学の課程を開講。
   10月 暨南学校師範科で講演「自由平等と中国の経済」私有財産のもとでの経済発展には自由と平等がともに大事。自由平等には 法律平等 機会平等 契約平等の3つの要件がある。現在の中国にはこの3つがすべてない。この3つを欠く国は奴隷国家とならざるを得ない。中国は奴隷国家に陥っている。
   (このころ上海から北京に戻ったと思われる) 
   11月 「米国新旧銀行制度の研究」を発表(5日)
      北京大学組織委員会委員長、予算委員会委員に就任。なお組織委員会は委員長以下9名。予算委員会は同8名で胡適も委員の一人(10日)
      北京大学で講演「国鈔擠兌(中国銀行、交通銀行が見舞われた紙幣を一斉に兌換しようとする風潮)は経済原則に合わない」(16日)
      北京大学及び北京政法専門学校でそれぞれ講演「世界最大の国家銀行をいかに維持するか」(20日)
      北京中国大学で講演「太平洋会議と我が国関税問題」(29日)
            12月 北京清華学校で講演「今日洋商銀行の勢力」(5日)
      北京大学経済学会で講演「上海140個の交易所」(18日)
      北京平民大学商学研究会で講演「我が国関税と幣制との関係」
      北京清華学校で講演「関余(関税のうち外債に対する支払いを行った余りのこと)と国鈔擠兌の関係」

画像1

   

main page: https://note.mu/hiroshifukumitsu  マガジン数は20。「マガジン」に入り「もっと見る」をクリック。mail : fukumitu アットマークseijo.ac.jp