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ヒックス「経済史の理論」1969

J.R.Hicks, A Theory of Economic History, 1969.手元の翻訳は新保博,渡辺文夫訳。講談社学術文庫1995年版である。金融論の勉強の中に、歴史をどのように読み解くかという部分があり、ヒックス(1904-1989)のこの本に時々立ち返って考えることがある(写真は東京ドーム。建築1985~88. 日本初の大規模エアドーム。当時、野球場に屋根をつけることで全天候型とすることは画期的だったとされる。設計:日建設計。施工:竹中工務店。)。

第三章市場の勃興。商人は取引する財産に所有権をもたなければならず,買い手や第三者に、彼の財産であることを保証・証明しなければならないが、(それには)慣習的制度は十分ではなく、紛争を解決する法律的制度が必要。商人的経済が隆盛に向かうには、財産の保護と契約の保護がともにある程度確立されなければならないが、この二つは伝統的社会によっては与えられない。訳pp.63-67

以下は第5章「貨幣・法・信用」から。
債務返済の疑いから利子が生まれる。債務不履行の危険が大きいほど高い利子率が課される。
法廷が債務者の立場にたち、利子に敵意を持つと、貸借は法律の外でひそかに行われることになる。訳pp.124-125

債権者には担保を要求する方法があり、それには質入れpledge or pawnと抵当権hypothecという二つの種類がある。
これに対して無担保貸付は貸手にとって危険性の高い行為であり、・・・高い利子率をともなうのが普通である。訳pp126-128

信用の高い借り手の範囲を広げる方法 主要な二つの方法がある。
第一は保証人surety or guaranteeである。例 手形引受人
もっと有力な方法は金融仲立ち人(仲介者)の発展である。銀行の登場。訳pp.131-132

(また)もし危険分散の可能性、すなわち「保険」の基礎であるいわゆる「大数法則」がなかったら、上述した方法はいずれも実際に見られるほど有効なものにならなかったであろう。同じ原理が銀行にも適用された。訳pp.132-133

証券市場 資産を分散させ危険を減ずることができ、投資家が引き寄せられ、証券取引を可能にするような市場がもうけられるようになった。訳pp.133-134

一連の発展のなかで最も特筆すべきことは「有限責任会社」制度の創案であって、これによって企業は投資家に利潤の分け前を与えるよう約束して、資本を調達することができるようになった。確定利子付き借り入れが困難あるいあっ不可能でも、資本を調達できた。そして有限責任は、失敗しても投資額以上に損失を被らないことで、(また投資の分散もあって)資本市場を広げるのである。訳p.134

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