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投資引き揚げと座礁資産 OECD Oct.28, 2015 

Richard Baron and David Fischer, Divestment and Stranded Assets in the Low-carbon Transition, OECD,  Oct.28, 2015    2022年11月11日閲覧

要約 地球の平均温度の上昇を2°Cにとどめるために、我々の経済の、化石燃料へのまた関連するCO₂排出への依存を減らすことが求められている。地球の気候を安定させるためには、膨大な量の再獲得できる化石燃料を地中にとどめておくことが必要である。より低カーボンの強化された技術と熟練のためのスペースをつくるため、エネルギー消費設備ー電気やそのほかの経済活動は、加速された規模で引退されるべきである。気候政策がこの転換を推し進めると、ある資産はー意図されていたように投資コストを回復できず投資家の損失となるー「座礁資産stranded assets」になるだろう。これら潜在的座礁資産の価値は正確に推計できない、それは、気候政策の介入とその有効性に関して投資家が明確であるか、一度転換が始まったあとの金融市場の不確かな反応、さらにマクロ経済の傾向、に多くを依存しているからである。
 このリスクを認識して、一群の個人と投資家は、化石燃料活動からの資産の引き揚げ(divest)を始めた。そのほかの利害関係者は、もし化石燃料の使用が地球を脅かすなら、この活動から利益を得ることは非道徳的だとの観察に、影響された。最近の推計によれば、引き揚げに従事した投資家は、2014年に500億ドルの資産を管理していた。この数字は本年(訳注 2015年)の早い段階で2.6兆ドルだった(Arabella Advisors, 2015)。化石燃料からの引き揚げを、それゆえ政策形成者はもはや無視できない。
 引き揚げの一部は、座礁資産のリスクへの反応である。(また)気候政策が化石燃料会社に衝撃を与える中、投資家の誠実義務の表れの一部である。引き揚げは有効だろうかと質問する人がいる。いずれの場合についても、引き揚げは座礁するリスクを最小化する唯一可能な対応であり、気候変動に対応する政策を定式化する企業に影響している。積極的な参加や金融上のヘッジは、別の代替案である。
 引き揚げと座礁資産は政策介入のための話題だろうか?もし経済がcarbon pathwayへまっすぐ2℃の目的にシフトするなら、保有化石燃料関連活動の中断が生じることが意図されることになる。座礁資産は有効な気候政策の不可避的な結果である。他方で今日、投資家は、会社に対し生じるであろう気候政策の結果(そして気候政策のインパクト)について不十分な情報下にあり、座礁資産による損失に傷つきやすい、と議論されている。それゆえ政府は、この領域でできる限り透明性を確保すべきである。気候に関するリスクについての一貫した比較可能な企業開示(corporate disclosures)は、この方向への強力な一歩になるだろう。政府の道具箱には、価値破壊を最小化し、低炭素の解決への再投資を最大化する、その他の政策や規則が存在する。


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