マガジンのカバー画像

中国思想・短編小説・歌曲選

66
https://blog.goo.ne.jp/fu12345/e/7cc5e1ad373775c11668b88a748c64a6 中国的な考え方を知る手がかりを探しています。
運営しているクリエイター

#文化大革命

陳再見「黒豆,或者反賊薛嵩」『創作与評論』2017年第12期

陳再見は1982年広東陸豊生まれ。以下、老弭(ミイさん)から聞いた話が語られる。  当時ミイさんはなお書記で、バイクを1台もっていて、昔のことを「あの時、私はまだ書記だったが」と話し始めるのが常だった。私は当時、もう子供ではなく小学校で代講していた。夏休みでその年は特に暑かった。他の話しを私が促すと、ミイさんは「黒豆のことを話そうか」といった。  黒豆は女性の名前で、結婚して4日で実家に帰された。4日前に黒豆が結婚したときミイさんは黒豆の父親の米貴に招かれ、酒食をふるまわれ

葉兆言「滞留于屋檐的雨滴」『江南』2017年第3期

 葉兆言(イェ・チャオヤン 1957- 南京出身。南京大学中文系在学中に執筆始める。多作で知られる。お母さんは演劇界で、またお爺さん(祖父)は教育界でそれぞれ活躍。)の短編小説(最初に『江南』2017年第3期に発表され《2017中國年度短篇小説》灕江出版社2018,pp.153-161に収められた。)。表題《滞留于屋檐的雨滴》は、屋根の庇(ひさし)を雨が潤す、といった意味であろう(写真は東京ドームシティにて)。  ときは1978年12月。北京で大事な三全会が開かれているとき

韓少功「搶手」『収穫』2016年第4期

 著者の韓少功は1953年1月湖南省生まれ。まさに文革世代でこの小説はその時の長沙での出来事を扱っていて経験談としても興味深い。『収穫』2016年第4期に掲載後、《2016中国年度短編小説》灕江出版社2017年,pp.236-237.搶手は射撃者程度の意味。   最初に、訳者の私たちの世代には懐かしいが、謄写版印刷でビラを作って街頭に張り出したという話がある。それは、14歳(1967年)の時だったとする(つまり「文化大革命」の時のお話しが語られる)。当時、印鑑の偽造を行った

麦家「日本佬」『人民文学』2015年第3期

麦家(マイ・チアー 本名は蔣本滸 チアン・ベンシュー 1964- 17年ほどの従軍経験あり。浙江省杭州市富陽の人。2013年より浙江省作家協会主席。)の短編小説。《2015年中國短篇小説精選》長江文藝出版社,2016年,55-76 原载《人民文学》第3期。  私の父には「日本野郎(日本佬)」という綽名がある。15歳のとき、日本軍に徴発されて担ぎ人(挑夫)として数日働き、村に帰ってから何かにつけて、日本語を口にしたのでこの綽名がついた。ただ背が高くないのに、元気がよく、あ

艾偉「小説兩題」『上海文学』2013年第7期

 艾偉《小説兩題》載《中國當代文學經典必讀 2013短篇小説卷》百花洲文藝出版社2014,pp.26-48(原載『上海文学』2013年第7期)の要約 著者の艾伟アイ・ウェイは1966年生まれ。浙江省の人。重慶で都市建築を学んだ(写真は水道橋より御茶ノ水方面望む。左手は都立工芸高校校舎。水景は神田川。)。  この小説は子供の時の思い出から始まる。李小強(リー・シアオチアン)といういたずら坊主が、喻軍(ユー・チュン)という友達との物の取り合いの果てに道端の生石灰(しょうせっか

阿成「老秦」『作家』2013年第5期

 阿成の「老秦」は『軽風拂面』と題した中に収められた3篇の小品の一つ。その最初が「草根飯店」、二作目がこの「老秦」で、三作目が「野百合小学」。3作は独立しているが、主題は共通していてごく普通の人の情感を描いている。中國當代文學經典必讀 2013短篇小説卷 百花洲文藝出版社 2014,pp.18-21より(なお見出しの写真はヒナギク。英語ではdaisy。白いヒナギクの花言葉は純潔。)。  私と秦(ちん)さん(老秦)とは昔からの隣人である。秦さんは70をすでに超えているだろう