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中国経済学史

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#顧准

新中国の社会主義とその経済学の歩み

                      福光 寛 (お問合せ先)  中国経済学の歴史を俯瞰しようと考えているのですが、まだその作業は出だしの段階です。今回2019年の春夏講座では、その最初の試みとして、孫冶方(スン・イエファン 1908-1983),薛暮橋(シュエ・ムーチアオ 1904-2005),于光遠(ユー・グアンユアン 1915-2013),顧准(グー・ジュン 1915-1974),杜潤生(ドウ・ルンシェン 1913-2015)の5人を取り上げました。いずれも、こ

吳敬璉 経済学者と中国改革 2004

 以下は吳敬璉《經濟學家,經濟學與中國改革》載《經濟研究》2004年第2期,8-16の前半3分の1を訳出したものである。吳敬璉(1930-)は高齢ながら、改革を進める立場で最近も発言する経済学者であるが、その評価を改革派とすべきか戸惑うところがある。たとえばだが、趙紫陽と李鵬との対立において、李鵬にすり寄ったとされる点。証券取引所について、これを賭博に例える議論をしたとされる点(株価をどう捉えるかの問題も確かにあるが、国営企業改革との関係、企業の資金調達との関係などの論点が落

衛興華《社會主義經濟學》2004

陳東琪主編《1900-2000中國經濟學史綱》中國青年出版社, 2004より第1章社会主義経済学pp.1-22 を抄訳。この章の分担執筆者は中国人民大学の衛興華(1925-2019)である。(写真は成城大学1号館中庭 2019年6月21日) p.1 第一節 社会主義経済学の萌芽時期    一、社会主義経済学の最初の探索  20世紀に入るところで、マルクス主義が中国に伝播し世界で最初の社会主義国家ソ連が建設され、社会主義生産関係を研究対象とする社会主義経済学が生み出され

顧准 資本主義も変わった 帝国主義と資本主義(下) 1973年5月8日

 顧准《從理想主義到經驗主義》光明日報出版社2013年pp.103-107を翻訳したもの。手元にある《顧准文集》民主建設出版社2015年pp.257-261も参照している。  日本では、中国の経済学者、顧准(グウ・ジュン 1915-1974)はほとんど知られていない。しかし、かれの到達した知的水準がかなり高いことが、以下の翻訳からもうかがえるだろう。学問的に不毛であった文化大革命が終わる時期、ただ一人病躯に鞭打って北京図書館に通い詰め、資本主義や民主主義の本質を理解しようとし

顧准「 資本主義がなお生命力を有する原因はどこにあるのか」1973/05/09

顧准《從理想主義到經驗主義》光明日報出版社2013年pp.107-108 顧准(グウ・ジュン 1915-1974)について驚くのは、1973年―世界から孤立していた中国で、ここまで幅広い知識で、資本主義の生命力を見ていた人物がいたということだ。顧准は資本主義の生命力の源を批判の自由にもとめている。また批判を受けての改良を通じて、資本主義は少なくとも昔の資本主義とは異なったものになっている。それを顧准は資本主義の滅亡だとさえ言っている。(写真は文京シビックセンター) p.10

コース 王寧『中国はいかに資本主義になったか』2012

Ronald Coase and Ning Wang, How China Became Capitalist, Palgrave Macmillan 2012(ロナルド・コース 王寧共著 栗原百代訳『中国共産党と資本主義』日経BP社 2013)現代中国経済史のすでに古典といってよい。繰り返し読んでそのたびに、発見がある。以下、気になる箇所を(栗原訳は大変こなれているが、訳せるところは私の訳で)引用する。 p.5 訳pp.30-31 中央計画の固有の致命的欠陥は、社会の

顧准:探索的過程 by 張曙光 2018

張曙光《中國經濟學風雲史》八方文化創作室,2018 p.948 顧准(グー・ジュン 1915-1974)の探索(人生上の大きな疑問に対して答えを得ようと探し追い求めること)は前世紀の50年代初めに処分を受けてから始まった。その思想の発展と探索の内容からみて、3つの段階を経ている。  第一段階。発芽期(萌芽期)。1952年から1956年ソ連共産党20回大会前後。党校での学習期間が進んでいる。顧准の探索はすでにマルクス主義理論から開始され、(しかしまだ)完全にマルクス主義の範囲に