【毎週ショートショートnote】親切な暗殺
「よく私が犯人だと分かりましたね」
「苦労しましたよ。関係者の中であなただけが犯行可能だったので。一か八かでした。あなたに任意で家宅捜索をお願いしたのは。自白してもらって助かりました」
「ま、もう目的は達しているのでね」
「ただ動機が。なぜ、あなたが社長を？ほぼ接点ないですよね？」
「ああ、社長秘書の太田さんに親切にされたことがあったのです」
「……それで？」
「それだけですけど」
「太田さんに頼まれたのですか？」
「いえいえ、とんでもない。彼女、毎朝早く出勤して社長に珈琲を淹れていたのですが、ある日聞いたのです。『アイツに珈琲淹れるために毎朝早起きするの、ダルいわー』って給湯室で話しているのを」
「そんな！それだけで社長を？太田さんは社長の暗殺を望んでいたのでしょうか？」
「分かりません。しかし、親切は頼まれてするものではないですからね。お母さんから教えてもらいませんでしたか？太田さんが早起きする必要がなくなってよかったです」
（410文字）
※こちらの企画に参加させていただきました
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