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【ショートショート】流しそうめんの思い出

あれは確か小学校に上がったばかりの夏休みだった。母方の祖父母の家に遊びに行って流しそうめんを食べた。

祖父は器用な人で竹を半分に割って、流しそうめんができるように準備してくれた。竹は急角度で固定されていたので、そうめんを流すと結構なスピードで流れていき、興奮したことを覚えている。

流しそうめんをするからと近所の子も呼んでいたのだが、ひとり可愛らしい女の子がいた。私と同じ歳で名前は梅子といった。

途中で祖父が「五色そうめんもあるぞ」と誇らしげに言った。色の付いたそうめんが流れてきて子供達は大喜び。
梅子が「ピンクのが食べたい」と言うので、私は取ってやろうとしたがうまくいかない。白いそうめんばかり取れる。
「白いそうめんの方がおいしいんだよ」と言ったら、梅子は「絶対ピンクのがいい」と泣いてしまった。

私は意を決して上流に移動した。祖父がピンクのそうめんを入れると同時に箸を突き立てた。3本だけピンクのそうめんが絡まって取れた。梅子の器に入れてやると梅子は「ありがと」と笑って食べた。

梅子とはそれっきりだ。
祖父母に聞いても知らないと言う。

私には五色そうめんを食べて梅子の笑顔を思い出すことしかできない。

(愛媛新聞、超ショートショートコンテスト、2022年度、落選)

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