停電と断水
わざわざ書くまでもないぐらい途上国では当たり前のことなのだが、停電と断水は頻繁に起きる。停電も断水も週に3〜4回くらい起こる。我が家に入居した日の夜、水の備蓄もないまま停電と断水が同時に起きた時はさすがに焦った、500mlの飲料水で身体を洗った時のひもじい思いが心に刻まれている。であるから、当然それらへの備へはガーナでの生活において必須のものである。
停電の備えとしては、モバイルバッテリー(携帯用充電器)2個と登山用ヘッドライト、キャンドルを用意している。ガーナに来る前は、携帯用太陽光発電パネルを買おうかとも思ったが、停電が1日中続くことは稀なので、モバイルバッテリーで十分だ。夜間よりも昼間に停電することが多い印象がある。昼間に停電してもパソコンを使った授業ができなくなる程度の問題でそれほど困らない。日本人的な視点では、暑い気候の中で扇風機もエアコンも止まると言うのは地獄のような状況にも思えるが、ガーナでは多くの人が日中は野外の日陰で過ごすので、昼間の停電はさほど苦にならない。
断水は停電より重大な問題である。もちろん備えは怠っておらず、我が家では大きなポリバケツ2つに常時水道水を貯めているのと、Sachet water(小さなプラスチックの袋に入った水)をまとめ買いしている。断水は短ければ数時間で復旧するが、長引けば何日も水が出ずにそのままということもある。ポリバケツ2つでは3、4日が耐えられる限度なので、断水が長引けば、ポリバケツに残った水の量を常に気にしながら断水が早く回復するように祈るハメになる。ちなみに近所に住んでいる日本人の青年海外協力隊の先輩が言うには最長2週間の断水があったとのこと。
全ての民家はそのような水の備蓄があり、病院や優良なホテルには発電機が備えてある。ただ発電機も燃料が高騰している現在では、燃料も豊富に備蓄できないらしく、一度下痢で病院に行った時に停電していた。
ついでなのでガーナの水・電気事情についても話そう。
ガーナの水道は「飲める」らしく、校長が蛇口から出た水を飲んでいるところを見たが、私はとても飲む気にはならない。上の写真は麦茶、ではなく水道水をコップに入れたものである。中国人が川の上流で行う金の違法採掘のために土砂が河川の水を汚染しそれが断水を頻繁に起こすのだと誰かが言っていたが、真偽の程は定かでない。河口に行くと川の水がオレンジ色をしており、確かに川の水に土砂が混じっている。
ちなみに我が家をはじめとして多くの民家には日本と違い給湯器がなく、シャワーは水しか出ない。冷たい水を浴びるのはまだあまり慣れない。なので、最近では数十分ほど筋トレなどの運動をして身体を温めた後にシャワーを浴びている。「身体に浴びる水が冷たいなら、身体を温めればいい」、発想のコペルニクス的転回だと自画自賛している。
ガーナの電気は電圧230VでプラグはGタイプ。ドライヤーなど一部例外はあるが、スマホをはじめとするほとんどの電子機器は230Vにも対応している。電気料金はプリペイド式で、我が家は隣人と電気メーターを共有しているため、隣人7:私3の割合で分割して支払っている。市中の電気料金支払い所でプリペイドカードに残高をチャージし、プリペイドカードを電気メーターにかざすと残りの電気がその分増える仕組みだ。残高がなくなっているのに気付かず停電させてしまうことがしばしばある。そういえば今月2月から電気料金が”50%”も値上がりするため、先月まとめて数ヶ月分の電気残高をチャージした。
日本のように水も電気も当たり前に使える環境というのは、実にありがたいものだと感じると同時に、断水・停電が当たり前の環境に適応しつつあることに誇らしさを感じる。
日本の安定した電気・水道というのは、それだけ日本人がインフラに対して投資したことや、電気会社や水道局の日々の研鑽の成果であると痛感する。こうした自分を支えている足元の現実というのは、電気や水道に不自由しない環境では、当たり前に思えてありがたさを感じないし、なかなか見えてこないものなのだ。日本ではいまだに多くの原子力発電所が稼働しないままに、高騰する電気料金にあえいでると聴く。安い電気は先進的な産業を支える重要な要因であり、産業によって今の日本の豊かさが成り立ったという経緯を忘れてしまっているのだろう。自分の足元を支えているものについて真摯に向き合わず、脱原発や再生エネルギーといった現実を欠いた夢想に浸っている人たちには是非に日常的な停電や断水が起こる環境を知って頭を冷やしてほしい。
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