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コロナワクチンとクロイツフェルト・ヤコブ病: Turk J Intensive Careに掲載された論文から

2021年9月にプリオン病についての記事を3つ掲載しました (「コロナワクチンによるプリオン病と神経変性の可能性について」「スパイクタンパクとプリオンモチーフ」「プリオンとパーキンソン病」) 。スパイクタンパクがプリオンとして働く危険性は当時から指摘されていましたが、コロナワクチン接種後のプリオン病が現実に報告されるようになってきました。

クロイツフェルト・ヤコブ病 (CJD : Creutzfeldt-Jakob disease) は、1920年代初頭にドイツの神経病理学者クロイツフェルトとヤコブによって発見された、全身の不随意運動と急速に進行する認知症を主徴とする中枢神経の変性疾患です。異常プリオンタンパクが脳内に侵入し、脳組織に海綿状の空腔を作り脳機能障害を引き起こす事が原因となります。長い潜伏期間を経て発症しますが、発症してからは進行が早く、1 - 2年で死に至ります。根治療法は現在のところ見つかっていません。

CJDはヒトの代表的なプリオン病です。プリオンとは「タンパク質 (プロテイン) による感染性因子」という意味です。プリオンを構成するタンパク質 (PrP) はもともと健常なヒトや動物が全身に正常型として持っているものです。しかし、感染部位で見つかるプリオンタンパクは正常型とは異なる構造を取っています。プリオン仮説によると、プリオン病の原因はミスフォールドした (誤って折りたたまれた) プリオンタンパクです。この異常型構造を持つプリオンタンパクが正常型プリオンタンパクに接すると、自身と同じ異常型に変換してしまうのです。こうして次々とプリオンタンパクの間で異常型構造が伝播し、正常型が異常型に変化していきます。

プリオンはアミロイド構造体の形成を誘導します。アミロイドとは、タンパク質が重合する事で密集したβシートから成る凝集体です。この変形構造は極めて安定で、感染組織に蓄積する事により組織損傷や細胞死を引き起こします。

CJDは、原因や症状により以下のように分類されています。

1) 孤発性 (散発性) CJD
孤発性CJDは発症の原因が不明です。およそ100万人に1人の割合で発症するとされています。患者の多くは50歳以上です。
2) 遺伝性 (家族性) CJD
プリオンタンパク遺伝子の変異が原因です。遺伝性CJDを引き起こす原因として、プリオンタンパク遺伝子上の点変異と挿入変異の両方が知られています。
3) 医原性CJD
CJD患者由来の硬膜や角膜などの組織の移植、患者由来の下垂体ホルモンの投与など、医療行為を原因とするものです。
4) 変異型CJD (vCJD)
1980年代から1990年代にかけて、英国で変異型CJDが発生しました。いわゆる狂牛病騒動です。これは、狂牛病 (牛海綿状脳症) を発症した牛の特定危険部位を食する事で人間に感染したと考えられています。孤発性CJDと大きく異なるのが、孤発性CJDが高齢者に好発するのに対し、変異型CJDの好発年齢は10 - 30歳までの若年層である事です。また、原因が狂牛病に感染した牛の肉食であるために、症例数も限定的です。2020年の時点で、英国で178例、その他の地域で50例が記録されています。

現在これらとは別の新たな機序として、コロナワクチンによるCJDの誘発が懸念されています。ここではコロナワクチン接種後にCJDを発症した症例について紹介します。

Creutzfeldt-Jakob Disease After the COVID-19 Vaccination
Kuvandık et al. (2021) Turk J Intensive Care
https://cms.galenos.com.tr/Uploads/Article_50671/TYBD-0-0.pdf
COVID-19ワクチン接種後のクロイツフェルト・ヤコブ病について

COVID-19の臨床像として、神経症状の報告が増えている。今回報告された臨床症状は、全身性疾患の非特異的な合併症、脳血管系の炎症、およびウイルスによる直接感染の影響が複合的に作用していると思われる。クロイツフェルト・ヤコブ病は、プリオンによる海綿状脳症で、重度の神経破壊を特徴とし、死亡率も極めて高い。今回、COVID-19ワクチン (CoronaVac、Sinovac Life Sciences、Beijing、China) 接種後に発症した神経学的所見で、Pamukkale大学麻酔科集中治療室に入院した患者を発表した。この患者は進行性の神経障害により死亡した。急速に進行する神経障害が認められる場合にはクロイツフェルト・ヤコブ病を考慮し、病態の進行に免疫関連疾患がどのように関与しているかを検討する必要がある。
症例報告
82歳女性、高血圧と認知症の既往があり、右半身に震えと脱力が出現した。この患者の所見は、コビド19コロナバックワクチンの初回接種の1日後に出現した。翌月に意識状態の後退、周囲の人が認識できない、視力低下、場所・時間の見当識障害、意味のない叫び声などの症状が加わり入院した。脳炎、硬膜下血腫と診断され、当院神経内科に入院した。
入院時、右四肢のミオクロニー収縮と見当識障害を認めた。脳神経検査では異常が見つからなかった。右半身にクローヌス、硬直、反射亢進が認められた。神経学的検査でGlasgow Coma Scale (GCS) 10/15であった。肝腎機能検査、電解質検査、全血球計算、血液ガス分析、凝固検査、甲状腺機能検査、自己免疫マーカー、ウイルス性脳炎マーカーなどの臨床検査が行われた。髄液の採取と検査が行われた。脳波検査が行われた。血液、尿、呼吸器分泌物、脳脊髄液の培養が行われた。血液検査では異常が認められなかった。自己免疫性頭蓋症は陰性であった。脳波は、鋭い発作と鋭い緩慢な発作が混在する発作性で、側方や局在性のないびまん性の脳生体電気活動の遅滞がみられた。神経内科で自己免疫性脳炎と診断され、パルスステロイドと免疫グロブリンg (IVIG) 静注療法が行われた。神経内科でGCSが4に低下したため挿管し、当院集中治療室に入院となった。脳・胸部CTおよび頭蓋MRI検査を施行した。髄膜炎予防のため経験的抗生物質と抗てんかん薬療法を行い、集中治療室ではパルスステロイドとIVIG静注療法を行った。感染性心内膜炎のため経食道心エコーが施行された。拡散強調MRIでは、左頭頂葉、後頭葉、側頭葉、右後頭葉に皮質拡散制限を認めた。FLAIR検査では同領域に高輝度化を認めた (図1)。14-3-3蛋白検査陽性、MRI所見、身体所見、病歴の評価から、散発性CJDと診断された。検査の結果、ウイルス性脳炎、自己免疫性脳炎、硬膜下血腫は除外された。患者は進行性の経過の結果、死亡した。

患者に接種されたコロナワクチンはコロナバック (CoronaVac) 。これは中国の医薬品メーカーであるシノバック社が開発した不活化ウイルスコロナワクチンです。この症例では、患者の症状はコロナワクチンの初回接種の1日後に現れています。その後現れた症状は、意識状態の後退、周囲の人が認識できない、視力低下、場所・時間の見当識障害、意味のない叫び声などです。孤発性CJDは多くの場合、人格障害、うつ病、睡眠障害、体重減少などの症状で始まります。行動上の問題や認知機能障害は目安となる重要な症状です。

核磁気共鳴画像法 (magnetic resonance imaging、MRI) は核磁気共鳴現象を利用して生体内部の情報を画像にする方法です。基本的に濃淡を持つ白黒画像に処理、出力されます。以下の拡散強調MRI、フレアー法 (fluid attenuated IR、FLAIR) はどちらもMRIの一種です。

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症例では、拡散強調MRI (A、B、C、D) 、フレアー検査 (E、F、G、H) で左頭頂葉、後頭葉、側頭葉、右後頭葉に高輝度信号パターンが認められました。身体所見、MRI所見に加えて、14-3-3タンパク検査陽性、病歴の評価から、孤発性CJDと診断されました。患者は最終的にCJD進行のために亡くなっています。

コロナワクチン接種直後に急性神経症状が出現した事から、ワクチンに関連した副作用が疑われました。ただし、ワクチン接種の1日後に症状が現れたというのはあまりに早急にも思えますし、この1症例だけではCJD発症が偶然であった可能性も考慮すべきでしょう。

しかしながら、このケースとは別に、コロナワクチン接種後にCJDが相次いでいる事を報告している論文が発表されました。私はこれまでこのブログ内では基本的に査読済みの論文を紹介してきました。この論文は現時点では査読前ですが、重要な論文と考えますので、今回ここで要約して紹介します。

Towards the emergence of a new form of the neurodegenerative Creutzfeldt-Jakob disease: Twenty six cases of CJD declared a few days after a COVID-19 “vaccine” Jab
jean-claude Perez's Lab (2022)
https://canadahealthalliance.org/wp-content/uploads/2022/06/V2CJDPerezMoretMontagnierRIP2022REFERENCEARTICLE.pdf
神経変性疾患である新型のクロイツフェルト・ヤコブ病の出現に向けて:COVID-19「ワクチン」接種の数日後に宣言された26例のCJD

この論文でJean-Claude Perezらは、ヨーロッパ各国で最近発生したCJDについて報告しています。ヨーロッパで、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカのワクチンの初回または2回目の接種後すぐに、50例以上のCJDが発生しています。著者らが分析した26例のうち、CJDの最初の症状は平均してコロナワクチン接種後11.38日に現れました。この26例のうち、すでに20例が亡くなっています。この20人の死亡例は接種後わずか4.76カ月で発生しており、そのうち8例は突然死です (接種後2.5カ月) 。

このように、コロナワクチン接種後のCJDが徐々に世界中で散見されるようになってきました。日本も例外ではありません。報告されているのは、中国製の不活化ワクチン、そしてファイザー、モデルナ、アストラゼネカの遺伝子ワクチンのいずれもです。これらに共通するものはスパイクタンパクです。コロナワクチン接種後のCJDは未知の新型CJDであり、これが既知のクロイツフェルト・ヤコブ病と異なる点としてはコロナワクチン接種と関係がある可能性、そして潜伏期間が短く進行が異常に速い事です。

実際にコロナワクチンとプリオンはどのように関係するのでしょうか。以前MITの総説論文を用いて「コロナワクチンによるプリオン病と神経変性の可能性」について解説しましたが、考えられる作用機序について改めて要約しておきます。

第一に、スパイクタンパクのアミノ酸配列にはプリオン様モチーフ (GxxxGモチーフ) が5つ含まれています。また、TetzとTetz (2020)によると、SARS-CoV-2のスパイクタンパクの形態には、他のコロナウイルスのスパイクタンパク質には存在しないプリオン領域があるという事が分かっています。

第二にファイザーやモデルナのコロナワクチンでは細胞膜との融合を防ぐために融合ドメインの隣の2つのアミノ酸をプロリンで置き換えており、このためにスパイクタンパクは強制的に開いた状態になっています。これはミスフォールド型プリオンへの危険な一歩となる恐れがあります。

第三に、J. Bart Classen (2021年)らによると、スパイクタンパク質は多くの既知のタンパク質と結合し、それらのタンパク質のミスフォールドを誘発してプリオンになる可能性が指摘されています。IdreesとKumar (2021) は、スパイクタンパクS1が機能的なアミロイドとして働き、毒性のある凝集体を形成する傾向があると提言しています。

スパイクタンパクは脳への障壁である血液脳関門を超える事が分かっています。コロナワクチンのスパイクタンパクがプリオンタンパクに類似した働きをし、脳内でプリオンを凝集させるコアとなる可能性があります。

孤発性CJDの発症頻度が100万人に1人であるように、CJDは本来非常に稀な病気であり、実際に患者を診た経験の無い医師の方も多いかと思われます。そのために見過ごされている例もあり、現在見えているものもおそらく氷山の一角ではないでしょうか。若い人に症状が出れば気が付く医師もいるかもしれませんが、高齢者がCJDを発症した場合などは、単に年齢による認知症などとして判断され、それ以上精査される事も無く放置されるのではないでしょうか。コロナワクチンがCJDにつながるにしても作用機序は古典的なCJDとどのくらい同じなのか、また異なるのか、これらの解明はまだこれからの問題となるでしょう。



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*記事は個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。

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