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なぜmRNAワクチンにDNAが混入するのか

引き続きコロナワクチンへのDNA混入疑惑についての記事になります。

そもそもなぜmRNAワクチンにDNAが混入してしまうのか? これは「mRNAワクチンのコンセプトそのもの」に関わってきます。判明したのは、シュードウリジン化されたコロナワクチンRNA自体がDNAの分解を妨げているという事です。

こちらは「DNA-RNAハイブリッド、R-ループ、mRNAワクチンのヌクレアーゼ耐性」についてのMcKernan先生本人のブログ記事です。


McKernan先生は、何がDNAの分解を阻害しているのかを定量PCR (qPCR) によって解析しました。PCRの増幅対象はスパイクDNAとベクターDNAです。スパイクの部分には同じ配列を持つ大量のシュードウリジン化RNAが存在します。一方、ベクターの部分には対応するシュードウリジン化RNAはほとんど無いでしょう。McKernan先生がまず試してみたものは、RNA分解酵素 (RNase A)、そしてDNA分解酵素 (T5エキソヌクレアーゼ) です。T5エキソヌクレアーゼは直鎖状の二本鎖または一本鎖DNAを分解する酵素です。ただし環状DNAは分解しません。

https://anandamide.substack.com/p/dna-rna-hybrids-r-loops-and-nuclease?utm_source=post-email-title&publication_id=456768&post_id=112678117&isFreemail=true&utm_medium=email

グラフの見方を簡単に説明します。DNAが減少するとPCRで増幅しにくくなり、PCRの増幅にかかるサイクル数が多くなります。そのため、DNAが減少するほどqPCRのグラフが右にシフトします。

RNase AによるRNA分解だけではスパイクDNA (左) もベクターDNA (右) も減少は見られませんでした。RNaseはRNAを分解しても、DNAは分解しないからです。スパイクDNAの場合、T5エキソヌクレアーゼによるDNAの分解だけではDNAはわずかしか減少しませんでした。しかし奇妙な事に、RNAを分解してからDNAを分解すると、DNAは検出限界以下に減少しました。

スパイクDNAとは異なり、ベクターDNAはDNA分解酵素によって分解されやすいようです。こうしたDNAの減少量はCT値 (サイクル閾値: グラフが閾値を超えるのに必要なサイクル数) から推測できます。ベクターDNAのDNA分解酵素処理によってCT値は28から31に変化しました (CT値が3増加)。理論的にはDNAは2の3乗、つまり8倍減少した事になります。一方、RNAを分解してからDNAを分解するとCT値は28から37に変化しました (CT値が9増加)。理論的にはDNAは2の9乗、つまり512倍減少した事になります。

スパイクDNAに対応する大量のシュードウリジン化RNAがスパイクDNAを分解から保護しているのです。つまり、RNAの存在がDNAの分解を妨げているという事です。

ファイザー社がプラスミドDNAを除去するために使用した酵素はDNase Iです。では、DNase Iではどうでしょうか? 次の図はファイザー及びモデルナの二価ワクチンのDNase IによるDNA分解実験です。

https://anandamide.substack.com/p/dna-rna-hybrids-r-loops-and-nuclease?utm_source=post-email-title&publication_id=456768&post_id=112678117&isFreemail=true&utm_medium=email

ベクターDNAはDNase Iで比較的簡単に分解されます (CT価30以上)。一方、ベクターDNAよりもスパイクDNAははるかにDNA分解酵素に耐性です。スパイクDNAはDNase Iによる分解後もCT値22-24のままです。スパイクDNAのRNAを分解してからDNase IでDNAを分解するとCT値は10以上上昇します。つまり、RNAを分解してからDNAを分解すると、スパイクDNAは2の10乗 = 1000倍減少するのです。スパイクDNAはやはりRNAによって、DNase Iによる分解から保護されている事になります。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7102939/

DNAやRNAの相補鎖への粘着度は「融解温度」として計算及び測定可能です。DNAやRNAの融解温度は二本鎖の半分が一本鎖に解離する温度です。

上の表は短いRNAの融解温度についてのデータです。11ヌクレオチド中のたった4個のウラシルをN1-メチルシュードウリジン (m1Ψ) に置き換えるだけで、融解温度は約9℃も上昇するのです。これは短いRNAについてのデータです。融解温度はRNAのサイズが大きくなるにつれて上昇し、そして、シュードウリジンが増えるほど上昇します。融解温度が高いという事は、シュードウリジン化RNAがDNAに対して非常に「粘着性」があるという事を意味します。

https://anandamide.substack.com/p/dna-rna-hybrids-r-loops-and-nuclease?utm_source=post-email-title&publication_id=456768&post_id=112678117&isFreemail=true&utm_medium=email

ハイブリダイゼーションとは、一本鎖のDNAまたはRNA分子が相補的なDNAまたはRNAに会合する現象です。細胞内のDNAは通常二本鎖であり、RNAは一本鎖です。しかし、化学的にはRNAもDNAと会合でき、しかもRNAとDNAの組み合わせは、DNAとDNAの組み合わせよりも安定です。

上の図は一般的なDNA/RNAハイブリッドです。ゲノムDNAに相補的なRNAが会合してハイブリッドを形成し、余ったDNAは一本鎖として露出します (Rループ)。このように二本鎖DNAとRNAの会合は三本鎖の核酸構造を取ります。

Rループの「R」はRNAが関与している事を表しています。生理的DNA/RNAハイブリッドの原因は、例えばゲノムから転写されてできたRNAがゲノムにもう一度張り付いたようなケースです。RNaseH酵素はRループの解消を担う主要なタンパク質であり、RNaseHの不具合もRループの原因となります。DNAの局所的な構造、RNAの局所的な構造など様々な要因がDNA/RNAハイブリッドとRループを引き起こします。

単純なDNA/RNAハイブリッドでは、RNAと会合していないDNAは一本鎖として露出し、むしろDNA分解酵素に脆弱になるはずです。実際、免疫系におけるスイッチ組換えや体細胞突然変異の分子機構では、DNA/RNAハイブリッドによって露出したDNAが、組換え酵素や変異酵素の標的となる事が分かっています。

シュードウリジン化RNAは、その粘着性の高さのためにDNAと強固に会合します。混入したDNAは部分的にシュードウリジン化RNAとハイブリダイズ (ハイブリッド化) している可能性が高く、これがDNAが分解されにくい原因と考えられます。

そして、通常のDNA/RNAハイブリッドよりもシュードウリジン化RNAと会合したDNAでは状況はさらに複雑です。コロナワクチンは翻訳効率を上昇させるために、コドンの最適化によりGC含量が上昇しています。グアニンが豊富な配列は「G四重鎖」(G4) と呼ばれる特殊な構造に構成される場合があります。また、ヒトプリオンタンパク質のmRNAには複数のG4形成モチーフが存在しますが、G4はプリオンタンパク質がミスフォールドした状態になるために重要な役割を担っているという仮説があります。DNA/RNAハイブリッドによって形成される一本鎖DNA自体もG4構造を取り得ます。シュードウリジン化RNAはGCリッチ配列によってスパイクDNAに強力に粘着し、スパイクDNAはDNase Iによる分解から保護されているのかもしれません。

シュードウリジン化RNAはスパイクDNAを他のタンパクからも保護する可能性があります。例えばPCRポリメラーゼの接近を妨げるならPCRで増幅できないDNAとなり、qPCRでは定量化できない「幽霊」のようなDNAともなり得ます。その場合、qPCRによる定量化では混入量を極端に過小評価してしまう恐れがあります。

しかしながら、現時点では分からない事もいくつかあります。ベクターDNAはスパイクDNAより分解されやすいのですが、RNA分解後にはさらに分解されやすくなります。ベクターに対するRNAはほとんどないはずにも関わらず、なぜRNAによって保護されているのか? そしてもう一つはDNA/RNAハイブリッドによって露出した一本鎖DNAは通常のRループのように脆弱なのか? という疑問です。実際、Qubit蛍光光度計の測定によるとワクチンに大量に混入しているDNAは二本鎖DNAなのです。

これは私自身の推測になりますが、GCリッチ配列に富むスパイクDNAの局所構造のために、シュードウリジン化RNAは通常は余った一本鎖DNAにも複雑に絡み合って、通常は脆弱になる部分まで保護している可能性です。またそうした高次構造による保護は部分的にはベクターDNAにも及ぶのかもしれません。


大前提として、DNAの混入を防ぐためにRNAを分解しないといけないならば、そもそも論として「mRNAワクチンの製造行程には致命的な欠陥がある」事になります。つまり、「mRNAワクチンへのDNAの混入はどうあっても避けられない」のです。DNAがゲノムに取り込まれた場合に予測される事態はスパイクタンパクのトランスジェニックだけではありません。ゲノムへの遺伝情報の介入によって一番頻度が高い副作用は癌です。癌は遺伝子の傷による病気です。SV40プロモーターの癌遺伝子近傍への取り込みだけではなく、微細な遺伝子変異による癌遺伝子の恒常的活性化や癌抑制遺伝子の欠損も癌の要因となります。そして、そうした変異には必ずしも大きなDNA断片は必要ではないのです。これは遺伝子ワクチン全般に共通する潜在的なリスクとなります。接種者の遺伝情報を改変する可能性のある危険なmRNAワクチンは決してコロナワクチンのみではないという事です。


*Kevin McKernan先生は博士課程を中退して起業されていましたので、この記事からは改めましてMcKernan先生と呼ばせていただきます。日本では大学は必ず卒業するものという意識が根強いですが、米国ではむしろ能力のある人は積極的に在学中に起業するという文化があります。例えば、スティーブ・ジョブズ氏が大学をわずか6ヶ月で中退して事業を始めたエピソードは有名です。McKernan先生はMedicinal GenomicsのCSO兼創設者です。先生はエモリー大学で生物学の学士号を取得し、2005年に共同設立した新興企業Agencourt Personal Genomicsでは社長兼CSOを務め、ヒトゲノムのシークエンスのコストを3億ドルから3000ドルに引き下げる革命的なシークエンサー技術を発明しています。McKernan先生はNature誌やScience Translational Medicine誌の論文を含め、多数の論文を発表されています。




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*記事は個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。


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