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一本鎖DNA汚染が危険な理由

コロナワクチンの汚染DNA量は欧州医薬品庁 (EMA) 基準値の500倍だった」の記事を書いた後、Kevin McKernan先生とメールでコロナワクチンへの一本鎖DNA (ssDNA) 汚染とその危険性について短く議論しました。その後McKernan先生も新しいブログポストで一本鎖DNA汚染について触れられました。


さて、汚染DNA内の一本鎖DNAに私がこれまで触れてこなかったのは、専門性が高く一般向けには難しすぎるという理由からです。私の本来の狭義の専門分野は抗体遺伝子変換や突然変異、標的組換えの分子機構であり、一本鎖DNAは私自身には馴染みの深い分子でもあります。

一本鎖と二本鎖の境界も実は曖昧です。一本鎖も部分的に絡まって二本鎖となる事もあれば、逆に二本鎖も部分的に解けて一本鎖になる事もあるからです。基本的に二本鎖DNAは曲がりにくいのですが、一本鎖DNAは容易に曲がります。そしてDNAやRNAの中の相補的な配列は短くとも自然にハイブリッドを形成し、部分的に二本鎖構造を取ります。こうした部分的構造はニ次構造とも呼ばれます。

https://ja.wikipedia.org/wiki/転移RNA

RNAウイルスなどを除き細胞内のRNAは基本的に一本鎖です。ここでは例としてtRNA (トランスファーRNA) の構造を挙げます。tRNAはmRNAのタンパクへの翻訳を仲介するRNAです。tRNAは内部で折れ曲がり、幾つもの分子内二本鎖構造を持ちます。このようにRNAや一本鎖DNAも容易に部分的な二本鎖構造を取る事ができるのです。

RNAがQubit二本鎖DNAキットに干渉するというのは、実はRNAの部分的二本鎖構造をDNA二本鎖と誤認識しているのでないかと私は考えています。

二次構造を取るのは一本鎖DNAも同様です。例えば、カスタムオリゴDNAを発注する際に「オリゴの二次構造の取りやすさ」を警告してくれるメーカーなどもあります。その際の二次構造とはつまり「部分的二本鎖構造」の事なのです。Qubit二本鎖DNAキットは原理的には一本鎖DNAの部分的二本鎖構造も検出する事が可能です。

また、一本鎖DNAは組換え能が高い事もよく知られています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/相同組換え

DNA組換えのうち相同組換えはDNA末端のリセクションによる一本鎖DNAの露出から始まります。そしてこの一本鎖DNAが組換え相手のDNAの探索に利用されます。つまり一本鎖DNAは遺伝子組換えの直接の材料となるDNAでもあります。最近ではこの仕組みがゲノム編集にも応用されています。一本鎖DNAを基質として用いると容易に相同な配列の近傍に取り込まれるのです。目的のゲノム領域にDNA断片を導入する技術は標的組換えと呼ばれますが、標的組換えの効率を上げるためにゲノム領域とDNA断片の組換えを橋渡しする「接着剤」として一本鎖DNAを用いる技術も実用化されています。

一本鎖DNAがとりわけ組換え能が高いのは相同組換えにおいてであり、相同組換えでは「似た配列 (相同配列)」が必要となります。しかし相同配列が一部でもあれば、任意の一本鎖DNAはそうしたゲノム領域に取り込まれる可能性があります。また、その際必ずしも相同組換えの機序が使われるとも限らず、多様なDNA組換えや修復の仕組みの中でどの機序が発動するかはケースバイケースです。相同配列の必要な長さも組換え機構によってまちまちであり、例えばマイクロホモロジーを介した末端接合に必要な相同配列は最短のものではたった1塩基です。

Qubit二本鎖DNAキットでは一本鎖DNAは測定対象外です。しかしこれまで見過ごされてきた一本鎖DNAの汚染も改めて注視する必要があります。一本鎖DNAも二本鎖DNAと同様にゲノムへの組込みの危険性があるのです。



#コロナワクチン

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*記事は個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。

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