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コロナワクチンの汚染DNA量は欧州医薬品庁 (EMA) 基準値の500倍だった: methods and protocolsに掲載された論文から

コロナワクチンの汚染DNAについての研究が査読済み論文として発表されました。最終著者のJürgen O. Kirchner博士は2023年9月18日、ドイツ連邦議会の請願委員会でDNA汚染を公表しました。そして私も当時Kirchner博士のDNA汚染の報告をnote記事で紹介させていただきました。


このたび彼の実験結果が論文として発表され、実験の詳細についても公開されました。

COVID-19 mRNAワクチンにおけるDNA不純物の定量に関する方法論的考察

Methodological Considerations Regarding the Quantification of DNA Impurities in the COVID-19 mRNA Vaccine Comirnaty
König and Kirchner (2024) methods and protocols
https://www.mdpi.com/2409-9279/7/3/41

図1

今回解析されたのはファイザーコロナワクチンの7つのバイアルです。そのうち4つは期限切れのもので、3つは11~13ヶ月の期限が残っていました。RNAやDNAの濃度測定に使われたのはQubit蛍光光度計です。QubitにはDNAやRNAの濃度を測定するキットがありますが、各核酸タイプに選択的に結合する特定の蛍光色素を使用する事により、二本鎖DNA、一本鎖DNA、およびRNAを区別して定量する事ができます。使われる蛍光試薬はPicoGreen、SYBR Green I、RiboGreenです。ここではRNAの定量にQubit RNA 高感度 (HS) アッセイキットが使われました (図1)。

mRNAコロナワクチンは脂質ナノ粒子 (LNP) に封入されており、そのままでは蛍光色素がDNAやRNAに接触できません。このため、脂質ナノ粒子を壊す目的で界面活性剤Triton-X-100が使われました。界面活性剤とは水と油の両方に親和性のある物質であり、例えば身の回りでは石鹸や洗剤の主成分でもあります。いくつかのバイアルではTriton-X-100処理後に顕著にRNA測定値が上昇しました。

期限切れのバイアルの中にはTriton-X-100処理なしでもRNA量の大半が測定されたものもありましたが、これは期限切れのバイアルでは脂質ナノ粒子が崩壊していたためかもしれません。しかしながら、すべてのバイアルで高濃度のRNAが検出され、どれも1回の投与量の目標値の30 μg (30000 ng) を大幅に超えていました。

図2

Qubit 二本鎖DNA 高感度 (HS) アッセイキットを用いてバイアル内のDNA量を測定すると多量のDNAが検出され、そしてTriton-X-100処理でDNAの測定値はさらに上昇しました (図2)。ファイザーコロナワクチンの1回の投与量あたりの欧州医薬品庁 (EMA) の基準値は10 ngです。検出されたDNAは3600〜5340 ngであり、バイアルによっては許容限界値の500倍を超えるDNA不純物が含まれていました。

ロット試験におけるDNA含有量の定量にはqPCR測定が、RNAの定量にはQubitが用いられていますが、ここに大きな問題があります。それは一般論として、どの測定法も測定機器も、それぞれの測定原理に従って測定値を導くという事です。異なる測定法による定量では、測定原理の違いのために同一サンプルでも測定値が異なる事がよくあるからです。

qPCRは既知の配列を特異的に増幅し、その量を推定する手法です。配列特異的な手法ですので、無関係な配列は全て対象外になってしまいます。さらに、qPCRでは傷のあるDNAや分断されたDNAを増やす事ができません。また、qPCRは遺伝子の一部分のみを増幅し、他の部分は増幅領域と同等の量と推定しますが、バラバラになったそれぞれの断片が均等な量で存在するというわけでもありません。そういった理由から、qPCRは汚染DNAを定量する際には原理的に過小評価しやすい手法であり、汚染DNAの定量には本来不向きなのです。

図3

図3は私自身で描いたものです。McKernan先生の実験では汚染DNAをQubitで定量する際のDNAの測定値はRNase処理後に約1/10に低下していました。そのためMcKernan先生は、汚染DNAの混入量は500倍ではなく50倍程度ではないかと考察しています。Qubit蛍光光度計でDNAを定量する際にはRNAが干渉する可能性があるのですが、実際にはその干渉の度合いが分からないのです。

DNA汚染関係の話題では「Qubitは過大評価する定量法」ではないかとしばしば議論されてきました。しかし私の経験ではむしろQubitは「過小評価する定量法」でもあるのです。と言うのも、DNAを分光光度計とQubitの両方で定量すると、QubitのDNA測定値は分光光度計の測定値の1/5〜1/20になる事が多いのですが、これは分光光度計は二本鎖DNA、一本鎖DNA、RNAを区別せずに測定するのに対し、Qubitキットはそれぞれの分子に特異的なために対象外のものが測定から除外されるからです。

PCRでは鋳型のDNAが一本鎖でも二本鎖でも増幅が可能です。しかし、実際一本鎖ではなく二本鎖DNAが必要な分子生物学の実験手法は多く、そうした実験に用いるために二本鎖DNAを特異的に定量可能なのがQubit二本鎖DNAキットの長所なのですが、この点を理解していないと逆にそれは欠点ともなり得ます。ここで注意すべき点は、二本鎖DNA用のQubitキットでは一本鎖が対象外だという事です (同様に一本鎖DNA用のQubitキットでは二本鎖が対象外)。そして二本鎖DNAを精製しようとしても、部分的には多量の一本鎖が混じってしまうのです。

また、二本鎖と一本鎖DNAもオール・オア・ナッシングのような単純なものではありません。二本鎖DNAも部分的にほどけてその箇所が一本鎖になる事もあれば、一本鎖DNAも部分的に絡まってその箇所が二本鎖になる事もあるからです。そして二本鎖DNA用のQubitキットはDNAの二本鎖に特異的に結合し、二本鎖の部分のみを定量するようなキットなのです。

RNaseはRNA分解酵素です。では、RNaseで壊れるものは何でしょうか?
RNaseはRNAを特異的に分解しますが、実はもう一つ考慮すべき点があります。それはRNA/DNAハイブリッドの存在であり、これも二本鎖の核酸だという事です。コロナワクチンに混入しているDNAはワクチンmRNAを転写するための鋳型です。このためDNAとRNAは無関係な配列ではなく相補的に配列となっており、それらが二本鎖となって結びつき、DNA/RNAハイブリッドを形成する事が可能です。しかもワクチンmRNAの高いGC率のためにDNA/RNAの結びつきがより強固なのです。

Qubit二本鎖DNAキットではこのDNA/RNAハイブリッドも検出している可能性があります。そしてRNaseによるRNAの分解後に一本鎖となったDNAは検出対象外となってしまいます。このようにDNAの定量という古典的な分子生物学実験でも測定法によって値は10倍以上も異なる事もしばしばあり、DNAの正確な定量は決して簡単ではないのです。

最後になりましたが、私の結論としては「基準値の500倍 (Kirchner博士) は過大評価かもしれないが、50倍 (McKernan先生) は過小評価かもしれない」です。私自身は、Qubit二本鎖DNAキットの測定対象外の一本鎖DNAの量に応じて、50〜500倍の間のどこかの値になるのではないかと考察します。いずれにせよ、これらのどの数値であっても、汚染DNA量は非常に深刻な問題な事実である事は間違いありません。




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*記事は個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。

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