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猫とネズミ

「実験でワクチンを接種された猫が死亡したという話はデマだ。」「猫が実験動物に使われる事などない。」「猫ではなくてネズミに違いない。」「ネズミだとしたら2年以内に死ぬのは当たり前だ、そもそもネズミの寿命は2年程度しかないんだから。」等といった猫とネズミに関する話を何度か耳にしましたので、今回はその事について取り上げようと思います。

デマではありませんよ。良い研究がいくつもありますので紹介させていただきますね。以前にも記事内で触れたのですが、ここではもう少し詳しくコロナワクチンを接種した猫の抗体依存性感染増強(ADE) についての話しをしたいと思います。

実際に人間の病気の研究モデルになる動物はネズミ (マウス) などが多いのですが、猫は人間にとっては犬と並ぶ代表的な愛玩動物ですので、例えば獣医師にとっても猫の病気の理解や治療法は重要です。そういった理由からも猫の病気に興味を持って研究している研究者も多いのです。

猫におけるコロナワクチンとADEの研究の代表的なものは1990年代初頭からすでに見られます。SARSが流行するさらに10年以上前ですね。猫伝染性腹膜炎ウイルス (FIPV) は猫伝染性腹膜炎 (feline infectious peritonitis;FIP) の原因となるウイルスです。以前の記事内でも触れましたが、FIPVもコロナウイルスのひとつで、猫に感染するコロナウイルスです。


FIPVコロナワクチンに関係する猫の実験を2つ紹介します。
1つはオランダの研究です。

猫伝染性腹膜炎ウイルス接種後の早期死亡は組換えワクシニアウイルス免疫によるものである
Early Death after Feline Infectious Peritonitis Virus Challenge due to Recombinant Vaccinia Virus Immunization
Vennema et al. J Virol. (1990)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2154621/
ネコの感染症である腹膜炎の原因となるコロナウイルスのフソゲンスパイクタンパクをコードする遺伝子をワクシニアウイルスのゲノムに組み込み,マウスにスパイクタンパク特異的な体外中和抗体を産生させた。 子猫にこの遺伝子組換えワクチンを接種したところ,中和抗体価が低く,ネコ伝染性腹膜炎ウイルスに感染させたところ,野生型のワクシニアウイルスを免疫した対照群よりも早期に死亡した(早期死亡症候群)。


Vennema Table II.png 解説付き

猫5匹ずつを2つのグループに分け、片方のグループにコロナワクチンを接種。もう片方のグループは対称群。

もう少し詳しく説明すると、このワクチンはワクシニアウイルスゲノムにクローニングされたFIPVのスパイクタンパク。対称群はスパイクタンパクの入ってないワクシニアウイルスです。それぞれ2回接種したのちにFIPVコロナウイルスを感染させています。

コロナウイルス感染後、対称群は3匹が約1ヶ月で死亡しましたが、400日以上生存した猫が40% (5匹中2匹)。それに対し、スパイクタンパクのワクチンを接種した猫はコロナウイルス感染後に5匹全員が死亡。しかも重症化であっという間に死亡。感染後7〜9日しか生きられませんでした。

PCDはFIPV感染後の日数 (post challenged days)です。抗体を持っていても病気の感染を防いでくれるとは限らず、かえって重症化する事があるという事です。これがADEです。FIPVはもともと猫を死に至らしめる事のあるウイルスですが、ワクチンを打った方がウイルス感染の症状が暴走しやすく、ずっと死にやすくなるのです。


もう一つ研究の紹介を。ワクチンによって抗体を作らせるのではなく、コロナウイルスに対する抗体そのものを接種した猫でもADEが起こります。これは日本の北里大学の研究です。

猫伝染性腹膜炎ウイルス感染症において同一血清型ウイルスを再感染させると抗体依存的感染増強が起こる
Antibody-Dependent Enhancement Occurs Upon Re-Infection with the Identical Serotype Virus in Feline Infectious Peritonitis Virus Infection
Takano et al. Virology (2008)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19122397/
猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)は,そのスパイク(S)タンパク質のアミノ酸配列により,血清型Iと血清型IIに分類される。FIPVのSタンパク質に対する抗体の存在下では,マクロファージ感染の抗体依存性感染増強(ADE)が起こり,ADEと中和エピトープの間には密接な関係がある事が報告されている。しかし、ADEの誘導にFIPVの血清型の違いが重要であるかどうかは不明である。本研究では、FIPVの血清型が同じか異なるかで、猫のADEが誘発されるかどうかを調べた。特定の病原体を持たない猫にI型またはII型のFIPV抗体で受動免疫し、I型のFIPVを皮下接種してADEの誘発を調べた。FIPV血清型I特異的抗体で受動免疫した猫では、FIPV血清型Iを接種する事でFIPの発症が促進されたが、FIPV血清型IIに対する抗体で受動免疫した猫では発症しなかった。これらのデータは,FIPVに感染した猫が同じ血清型に再感染することでADEを引き起こす事を示唆している。

ref. 2228 Figure.png 解説付き

横軸はFIPV感染後の生存日数。縦軸は生存率。猫が死亡するごとに縦軸の数値 (生存率) が下がっていきます。

この研究ではワクチンを打つのではなく、コロナウイルスに感染した猫から精製した抗体、あるいは抗血清を猫に接種しています。抗血清は抗体を含む血清です。FIPVコロナウイルスに感染させただけの猫の80% (5匹中4匹) は2ヶ月以上生存しました。それに対し、FIPV に感染させる前にFIPVに対する抗体を接種した猫は24日から36日の間に死亡しています。つまり、対称群はウイルス感染後8割が生き延びたのに対し、コロナウイルスに対する抗体を与えられた猫は全て一月余りで死亡しています。


この2つの研究に共通するのは、コロナウイルスに対する抗体を持った猫の方が重症化しやすく、死にやすかったという事。つまりワクチンによって抗体ができた方が死亡リスクが高くなるという事です。こういった一連の猫のコロナウイルス、コロナワクチンの古典的な実験の結果等からも「コロナウイルスに対するワクチン接種は危険なのではないか」という考えが研究者の間では共通認識として持たれ続けていました。

そもそもコロナワクチンで集団免疫が成立すると言うのはあくまで一つの仮説であり、それ自体が前例の無い壮大な実験です。結果ADEが起きるなどして実験が失敗すれば、人類の大量死にも繋がりかねません。もし失敗した事が分かった時には一体誰がどうやって責任を取れるのでしょうか。

ちなみに実験でよく使われるマウスの寿命は2〜3年程度ですが、ハダカデバネズミの寿命は15年以上です。飼育下では40年近く生きている個体も。
ハダカデバネズミは哺乳類でありながら体温調節ができない変温動物。哺乳類では数少ない真社会性で、蜂や蟻のようにコロニーを作ります。そして癌に耐性で、めったに癌になりません。その特異性から生物学では非常に興味深いモデルとなっています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ハダカデバネズミ

人生いろいろ、ネズミもいろいろですね。



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*記事は個人の見解であり、所属組織を代表するものではありません。



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