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「迷宮❷」

『迷宮②〜傷の共有』

僕は今日も彼女の心の迷宮にいた。

もう、いくつ、入口を見つけたのだろう。
入り組んだ迷路は、時折僕の方向感覚を見失わせる。

松明が時には明るく輝き、時には消えそうなくらい暗くなる。

迷路の中に落ちている様々な記憶の断片。

一つ一つの断片を丁寧に拾い、僕の記憶にしまっていく。

一つ一つの断片が一つ一つの傷になって、彼女を苦しめている。
入り組んだ迷路に無数に存在する入口と
無数に落ちている記憶の断片。

僕は何度か心が折れそうになった。
心に傷を負いながらも、僕は進んでいく。
出口の見えない迷宮を攻略していく。
彼女の受けた心の傷は、時間によって風化されるわけではなく、潮の満ち引きのように、彼女の心を不安定に苦しめる。

僕は、無数の傷を丁寧に一つずつ、塞いでいく。塞ぎきれない傷はそのまま受け入れていく。その繰り返し。

その間に僕は何度か傷を負う。
記憶の断片を僕の記憶に納める時、
いくつかの記憶の断片が僕を苦しめる。

【それでもかまわない】

彼女の受けた傷の重さに比べれば
僕の傷など取るに足らないものだ。

少なくとも、僕が彼女の傷をこれ以上増やしてはならない。
僕がいくら傷付いても、僕が彼女を傷つけることはあってはならない。

僕はこれからも、記憶の断片を拾うたびに傷を負うことがあるだろう。

でも、一つ一つ乗り越えていこうと思う。

傷を負う、負った傷を乗り越えていく。

その繰り返しで、繋がりの糸は強くなる。

糸を太くする必要はない。

細くても

強靭な糸にすることが

必要なのだ。


 

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