ルーチェのお散歩日記　出張編2 犬山城

空は、あの頃、見ていた空と一緒。
川は、あの頃、見ていた川と一緒。
山は、あの頃、見ていた山と一緒。
お城もあの頃、見ていた城と一緒。
朝日もあの頃、見ていた朝日と一緒。

赤い雲が流れてた。
あの頃も、こんなに綺麗な空だったのだろうか。
戦で、流れた血で染まった、赤い空だったのだろうか。
戦争の爆弾で燃えた家々の赤い火に見えたのだろうか。
その時でもこの空は、綺麗に見えていたのだろうか。
あの頃も僕は、この空を見ていた。
どの時代が幸せだったかということではなく、どの時代も空は綺麗だったかどうか。
空はずっと綺麗だった。
その空を見上げた瞬間は幸せだったのだろう。
そらが綺麗でもなにも行動は変わらない。
じゃあ綺麗な空になんの意味があるのか。
意味なんて特にないだろう。
ただ空が気になるようになるだろう。
今日の空は綺麗だろうか。
明日の空は綺麗だろうか。
この時間の空はどんなだろうか。
この場所の空はどんなだろうか。
そしてなんだか上の空になる。
上の空はいいことだ。
いい言葉だ。
余計なことを考えないで済む。
頭の中がすべて空になる。
空を見るしかなかったのかもしれない。
現実が嘘みたいで、嘘みたいな空を身近に感じたのかもしれない。もくもくと膨れあがった雲は、人が作り出したものだった。すぐにわかったよ。不自然すぎだよ。カタチもぜんぜん綺麗じゃないしね。空まで攻めてこられると困りますね。せっかく上の空になってるんだから、邪魔しないでくれる。でも空は広いから助かるね。別の方向を向いて見なきゃいいんだから。

空のほうがよっぽど捉えどころがあるよ。毎日変わっていくもんね。人がつくりだしたものはさ、全然変わっていかないけど、急に無くなったりするもんね。極端だよ。
時が止まればいいと切に願っただろうね。
その時、時の感覚はなくなるけどね。人の感覚でいう一生分を感じることはできるよね。ほんとに幸せ。それはどの時代も一緒。外にさえいれば誰でも見れるし。輪廻転生とか知らないけど、あるんだとしたら、空が存在する間だけだね。空がつないでくれているから。時と時をつないでくれているから。空ってこんなに近くにあるのに、あるキッカケが訪れないと見ることができないよね。ほんとに近くて遠いのよ。ほんとにそうだよ。なんたら流星群を見るために、夜中屋上で、眺めていた時も見れなかったし。日本海の先端から、朝日を見ようと、バイクを走らせ行った時も見れなかった。ましてや、小さい頃の空の記憶も一切ないしね。ほんとに近くて遠い存在。いま見れている空に感謝したいよ。

ブーン。
飛行機だか、鳥だか、小さくてなんだかわからないけど、音は、聞こえるから繋がってるんだろう。ブーーン。
いつの時代から来た音だろうか。

ブーーン。ブーーン。音が近くなる。
ブーーン。ブーーン。

チクッ
かゆいー
はっ
…っとまあ、思いにふけってしまって、どうもルーチェです。犬やらせてもらってます。そんなわけで、今日は、朝日を見る会の二回目。犬山城にきております。空と川とお城。変わらないものと移ろいゆくものが共存するこの場所は、空を見ながら時空を行き来するのに持ってこいのところなんです。でもね、ここは蚊が多くて困っちゃうよね。ワクチンは打ってるからいいってわけでもないんだよね。ただでさえかゆいの弱いんだから。耳もかゆくなっちゃうから、薬も飲んでるんですよ。薬の匂いがねぇー苦手なの。たまきちゃんが、ささみに包んでくれるからまだいいけどさ。ほんとやんなっちゃうよ。せっかく時を行き来してたところだったんだからね。邪魔されちゃー困るのよ。かゆいかゆい！というわけで、もう今日はお開きです！
そうなのルーちゃん？まだ朝日見てないよ？もうちょっとじゃない？
また次回にお預けです！
了解！いつになったら見れるかね。
それよりあっちに、いい砂場が見えますね！ドキドキ。
砂場で遊びたいの？ルーちゃんも子供ね。
砂場最高！行きましょ、行きましょ。

僕はね、足がものすごく敏感なんです。デリカシーのない同居人のアホがいつも足を触ってくるので、かんぱついれず噛みちぎってやるんです。それでも懲りずに触ってくるし、鬼畜でしかありません。鬼畜は八重歯で切り裂きます。光の呼吸、第３の型、鬼畜の八重歯です。それぐらい僕の足は大事って事です。足から学ぶことはとても多いですね。歩く地面によって、全然ちがうから。
とくに川砂は最強。土でもなく、砂利でもなく、川砂がいい。均等な粒子の集合体に、足の指がふんわりと暖かさに包み込まれる。優しさのかたまりです。るんるんです。足がるんるんします。
どうしたのルーちゃん！るんるーーーんだね！足から音符が出てるし。びっくりよ。
そんなにるんるんするもんかね。まあよかったよ。
わかったか同居人よ、私の足を触るときは、川砂のような優しさを持って触れるようにしたまえ。
わかりました！では、さっそく...
ぎゃー！
以上。次回につづく。