見出し画像

ルーチェのお散歩日記 晴れの日(2)〜トンネル

ルーチェのお散歩日記
晴れの日 〜トンネル

 どうもールーチェです。犬やらせてもらってます。1日3回、朝、夕方、夜と毎日散歩に出かけています。いっつも同じ道をぐるぐる回ってるだけで、何が楽しいの?って思ってみえる方もいると思います。たしかに行動範囲は、そんなに広くはありませんが、どういう順序で巡るかで、ルートとしては、案外多くなるんですよ。数えた事は無いですけど500通りぐらいあるんじゃないかな。そしてその順路の構成は全て僕が決めています。世間には、可愛いだけのおバカキャラで、絶賛売り出し中ですが、実は緻密な計算もできるインテリ犬なのです。そうなのです。右に助さん、左に格さんを従え、練り歩いているのです。われは、水戸黄門なりー。黄門様のチャームポイントは、文字通り、こうもんじゃー。ぷっくりと可愛いですぞ。目に入らぬかーって感じに、ふりふり歩きます。いかぬいかぬインテリジェンスが溢れ出てしまいましたね。話に戻りますね。散歩コースごとに、目的や楽しみ方は、変わってきます。それぞれの、コースの詳細は、おってたぶん紹介させてもらいますが、今日は、その中のコースのひとつをご紹介します。ほとんどのコースは、些細な変化に意識を研ぎ澄ますような、旅なのですが、一つだけ、わかりやすく環境が変化するコースがあります。それがトンネルコースです。このコースだけは、ガラッと空間が、変化します。国道高架下のトンネルを抜けて、田園風景を横目に川沿いの道をぐるっと歩き、同じトンネルを潜って帰ってくるコースです。国道の南側から北側に抜けるトンネルがあり、道路幅は、20ほどです。それがトンネルの長さでもあり、高さは、1.9m 、コンクリート造でコノ字型の架構です。南側は、市街化区域で、北側は、市街化調整区域となる為(たぶんです、違うかも)建物の建ち並び方も、違っています。ただ、そんな事は、あまり関係がなく、このトンネルを通るか通らないかが鍵なんです。20mほどの短いトンネルなので、入る前に、向こう側の風景もハッキリと見えます。その時点で若干、んっ??っとなります。ほんの少し先の光景に、何故か違和感を覚えるのです。その時は、まだ何もわかりませんが、後から考えると、地続きのはずの向こう側のはずが、そうではない別の世界のように見えていたんです。トンネルへ一歩足を踏み入れた瞬間に、それは確信に変わります。すっーと冷気で、身体を包み込まれます。その瞬間
 「入った!」
 スイッチが、オンになった瞬間です。トンネルを抜けた先は、まるで別の世界でした。なにが、違っているのかは、よくわかりません。そこは、何日か前の過去なのかもしれませんし、未来なのかもしれません。もしくは、地球上では、ないのかもしれませんし、もしくは、この世では、ないのかもしれません。いやいやルーちゃんそこは、しっかりと考えましょうよって思うかもしれませんが、つまりは、何がどう違っているのかなんて、どうでもよいことなのです。ただそこが、別世界であることは、紛れもない事実で、それだけで、充分なのです。しばらく、別世界の空気を感じ、別世界の蜂と戯れ、別世界の草花さんと触れ合って、別世界の犬と人間とも、挨拶したりして、また同じトンネルを潜って、この世界に戻ってくるのです。けっこうな長旅なんですよね。何億光年離れた場所かもしれませんしね。それは分かりません。いつかわかる日が来るかもしれないし、もしくはわかる必要もない事かもしれません。
 「ルーちゃんもう歩かないの?はい、だっこね」
 トンネルを抜けると僕はもう疲労困ぱいです。僕は常に、片道切符。帰りの余力は、一切考えていないのです。「ルーちゃんゆうけど全然計算高くないじゃん。途中で力尽きてるし。その辺の力配分も、計算しとかないとさ」「よいですか同居人よ、そなたは何もわかっておらぬぞよ。いったいなんの為の計算なのか、考えてみなされ。これらは、すべて別世界への入り口を導く為の計算なのじゃよ。そこに入ってしまえば、あとは、身を任せるのみじゃ、けして何も考えてはいけないのだよ」「黄門さま、なんだか序盤におっしゃっていたことと矛盾してくるようにも思いますが、、、」「そんなことはないぞ、とにかくな、おぬしはどうも皮膚感覚が鈍すぎる!」「そんなことないよ、トンネルはヒヤッとして気持ちよかったよ、今日暑かったしね」「ほうほう、それでそれで?神秘は感じたのか?」「神秘って世界の絶景とかで感じるやつでしょ?」「今日のできごとが神秘じゃよ。日常の話じゃ。」「よくわからん」「ばかもの!まだわからぬか!このもんどころが目に入らぬか!」「黄門さま、さらになんだかよくわかりません、、」「そうじゃの、おのれでは、まだ早かったかもしれんの、まあよい、とにかくワシはもう歩けん。さっさとおぶって帰るのじゃ」「ははぁー」
 「つまらんことやってないでさっさと帰るよ、ルーちゃん明日美容院だからね」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?