何年も結婚していた!
結婚記念日だった。何十年も経過している。でも、わりと簡単に時間は過ぎてきている。いや、そうでもないか。いろいろあったのに、振り返るとあっという間だった、という言葉でくくられてしまうのか。
そう、簡単に過去を振り返らないことだ。振り返ると、それらしい言葉でまとめなきゃいけないし、まとめたら、いや、そんなではないと反発してしまうのだから、過去を語ってはいけないのだ。
何十年も前は、コロナはなかった。ただ猛然と暑かった。都会のターミナルは、建物の中はエアコンで疑似空間が作られていたけれど、現実は熱の壁があたりいちめんにしつらえてあって、そこに入り込んだものは焼き尽くされていた。
そんな時に結婚しなくてはいけないなんて、バカな私たちではあったけれど、家族・親戚のことより、全国から友人に来てもらおうと考え、こんな暑い時に設定したんだった。バカだった。親族はとんでもない目に合わされていただろう。
自分たちの意志を通して、とうとう結婚したのはした。他に好きな人はいないし、この人と結ばれたいと熱望していた。定職には就いてなかった。でも、離れ離れで新幹線で月に一回会うだけの恋愛は悲しかったんだ。どうして離れ離れでなくてはならないのか、理由が分からなかった。
だから、とりあえず結婚して、あとは何とかなるだろうという、希望的観測だけで結婚した。なかなか若者らしいじゃないか。結論なんてないのだ。とにかく今からずっと一緒にいたいと思ったから、結婚したんだった。
お昼に披露宴をしたので、何だか真夏の昼の夢みたいで、黒いカーテンの中の広間で、何度か衣装替えをして、飛び入りゲストも仕込んで、それらしい演出で私たちは結婚し、その夜は友だちみんなと飲んだくれ、まるで学生みたいに、みんなのいつもの宴会芸を楽しみ、夜は更けて、何次会かのあとでホテルに戻り、それからやっと妻となる人のお兄さんと少しだけまたもお酒を飲んで、そんなこんなの夜は終わり、次の日には友だちはみんな去っていき、私たちだけが残され、私たちは何日後かに新婚旅行へ出かけた。
あれから、何年も結婚を続けてきた。これからも続けていこうと思う。もし妻さえよければ、そのつもりではある。こうしてあっという間の時間は過ぎていくことだろう。
「あっという間」と言わずに、何か違う言葉が欲しい。そう、これから新しい言葉を求めて、私たちは結婚生活を続けていきたいと思うんだ。