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さよなら、またいつか

この電車にはもう乗らないよ。ボクはこれから違うところに行く。お母さんと離れてしまうよ。もう、ボクはおじいちゃんの家に行くんだ。お父さんと一緒に行くんだ。

お母さんは、ボクのことをキライになったって言ってた。ボクはかなしかった。どうしてお母さんはボクをキライになったんだろう。わからない。

ボクがゲームばかりするからかな? オモチャで遊んでばかりだったからかな? お母さんと一緒にお買い物に行ってあげなかったからかな?

それとも、ボクがチョコレートをこっそり食べたからかな? わかんないな。

ボクは、お母さんが大好きだよ。お母さんに本を読んでもらうのが好きだよ。お母さんの作るカレーライスも好きだよ。お母さんといっしょにいたいよ。でも、もうお母さんは、知らないところへ行くって言ってた。ボクのいない、遠いところに行くって言ってた。

ボクは、お父さんといっしょにおじいちゃんの家に行くよ。おじいちゃんの家は広いけど、少し古いよ。電気も暗いよ。怖いところがいっぱいあるよ。でも、お父さんがボクを連れてってくれる。

ボクはもう、今まで住んでたところにはもどれないよ。そこにボクのおうちはないみたい。だれもいないおうちにはもどらないよ。

ボクは、今までのおうちにお別れするよ。おもちゃはもうお父さんが持って行ってくれた。この電車は、もう乗らないよ。ボクは、かなしいんだ。ボクは、おじいちゃんのおうちに行く、それしかないんだ。

お母さん、さようなら。また、いつか会おうね。電車は、いつか乗りたいけど、もういいや。お父さんは、どこへ行ったかな。あのおばさんは、何してるんだろう。

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