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「オーダー車だから良く走る自転車とは限らないんだよ。」というお話(3)

前回までは「芯が出ていない」ことで良く走らない自転車があった、というお話を紹介させて頂きました。
廣瀬さんがビルダーを目指す中、反面教師にされていた自転車は他にもあります。それは強度に問題がある自転車でした。
「半世紀以上前、僕が高校の頃は、強度や精度が足りない部材が多かった。自転車製作の技法的にも、日本はまだ手探りの時代。結果、強度が適切では無い自転車が少なくなかったんだよ。」

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私が廣瀬さんのお店に出入りするようになった2010年頃、お店のキャッシャーの直ぐ下の床には、鉄粉にまみれたフレームやフォークのカットモデルたちが転がっていました。
その存在に気付いた人にだけ、自らが実践しているロウ付けを具体的に説明できるよう、わざと無造作に転がされていたものと思われます。廣瀬さんには、こういう悪戯っ子のような側面もありました。

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今回から数回にわたり、このカットモデルを使い「パイプ同士を接続すること」にまつわるお話を記して行きたいと思います。
廣瀬さんが、どれだけパイプとパイプとの接続に心を砕かれていたか。そして他の自転車の研究をされていたか。ご紹介していきます。まずはラグフレームのお話から。

カットモデルは物語る 1 (ナベックスのラグ)


フレームの大きな役割の一つは、人が全身を使って出した力を、なるべくそのまま地面に伝えること。せっかくの力が無駄にならない、逃げてしまわないフレームが良い...。
かといってガチガチに硬いフレームでは肉体への負担が大きく、疲れてしまう。また、硬すぎると上手く振動をいなせず、ちょっとした凸凹でもポコポコ跳ねてしまうから漕ぐ力が無駄になってしまう。カーブでは遠心力で大回りになりがち。
その人の筋力、体と荷物の重さ、使いたいスピード等に適した硬さ。同時に、路面を追従するしなやかさを持った、疲れにくいフレームが良い...。
廣瀬さんはそう考えられていました。

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