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「オーダー車だから良く走る自転車とは限らないんだよ。」というお話(10)

今回からパイプ(ブレード、チューブ、ステー)について廣瀬さんから伺ったお話を記して行きたいと思います。

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パイプのこと 1 「自転車の剛性とパイプメーカー」 


パイプのメーカーや品番を主語に完成車の性能を決めつけて語る方がいらっしゃいます。
先日も、廣瀬さんがコロンバスのパイプを使い、ランドナーを作られていたことを、上から目線で小馬鹿にされる方がいらっしゃいました。

コロンバスは硬くて強いからレーサー用のパイプなんだよ。このビルダーはそんなことも知らないのか? ランドナーはレイノルズ531とかで作るべきなのだ。」というのがこの方の主張でした。

あまりに自信満々でらっしゃるので、当方が知らない根拠でもおありになるのかと思い、理由をお尋ねしてみたのですが、昔読んだ雑誌「ニューサイクリング」にそう書かれていたからというのと、この方が出入りされている工房ではそれが通説だから、という二点だけがご主張の根拠のようでした(本当にそういう記事があったのか、そのお店にそういう通説があるのかは知りません)。どうやら、ご自身では「二種類のパイプを使った同一車種の乗り比べ」すら、されてらっしゃらないご様子。

そう言えば、廣瀬さんも、ある時期、似た内容の風説が流布され、閉口したものだ、と仰っていました。
そして、このような局面を限定しない、雑で、いい加減な見解を、一笑に付されていました。

廣瀬さんが作られていたのはオーダーメイド車です。受注するビルダーさんと発注するオーナーさん双方が納得してさえいれば、どのメーカーのどのパイプを使おうが、第三者からあれこれ言われる筋合いはありません。
もし、作った自転車の強度が足りずに壊れたり、硬すぎて乗り辛かったとしたら、それはビルダーの強度設計が間違っていたということです。そして強度設計は使用するパイプだけでは決まりません。
また、廣瀬さんのパイプ選択基準は「硬い」「強い」という尺度だけでもありません。

しかし、せっかくですから、この方の主張に反駁する形で、パイプメーカーや品番と、自転車の剛性について、廣瀬さんから伺った話をいくつか記してみたいと思います。

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「そもそも『旅行車よりレーサーの方が強度、剛性が必要である』という前提からして間違っているよね。」 廣瀬さんは言います。

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