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『鬼滅の刃「刀鍛冶の里編」』のアニメ俳句鑑賞

こんにちは!
アニメ俳句部部長の広瀬康です。

先日、アニメ俳句部で『鬼滅の刃「刀鍛冶の里編」』の俳句を募集したところ、44句の俳句が集まりました。ありがとうございます!

みなさまが詠んでくださった句の中から広瀬が個人的にいいなと思った句をピックアップし、鑑賞文を書きました。

句のあとに作者名を敬称略で記させていただきます。

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鬼喰ふて二百十日の戦場を   雨野理多

鬼を食べて戦う玄弥のことを詠んだ一句。台風が襲来することが多い時期と言われる季語「二百十日」の戦場は、台風のただなかにいるかのような過酷さなのでしょう。「鬼食ふて」まで戦わねばならない戦場に季語「二百十日」がすごく合っていると思いました。

よかったね朝が来て空澄んでいて   イサク

日光を浴びても死ななかった禰󠄀豆子の「よかったね」という台詞を句にしていただきました。夜の戦いを終えてようやく「朝が来て」、日光を克服した禰󠄀豆子と戦い抜いた戦士たちを癒すように空が澄んでいる。読了感がとてもよかったです。

震える夏木立刀光の縦横   一久恵

刀鍛冶の里編では、林の中での戦いがたくさん描かれました。夏木立が震えたかと思うと、刀を縦横に振ったときの光が閃く。「震える」や「縦横」で動きが見える映像を作りだしているところが上手いです。

白百合の凛と朝日に焼かれても   水蜜桃

朝日に焼かれても兄を蹴り飛ばした禰󠄀豆子を思いました。「凛と」で季語「白百合」の表情が見えてくるのがいいですね。朝日を綺麗なものとして捉えるのではなく、植物を焼きうる強い光として捉えてる点も鬼滅を見たからこその句だと思いました。

変化とは衰へなのだ春の雷   土佐藩俳句百姓豊哲

鬼舞辻󠄀無惨の台詞を季語「春の雷」と取り合わせた一句。変化を衰えと捉える鬼の思考に含まれているある種の真実。「なのだ」という断定と雷がラスボスの強さを思わせます。雷でなく「春の雷」としたことで、鬼舞辻󠄀無惨の妖しさも醸し出されています。

山彦や不穏を払い涼新   猫髭かほり

上五の「山彦」は甘露寺蜜璃の耳に届いた感謝の山彦でしょうか。切字「や」による詠嘆が効いていて、山を渡る声が聞こえてきそうです。中七下五にさわやかさがあふれていて、とても気持ちがいい一句だと思いました。

ニーハイソックス新緑を駆ける恋   三浦海栗

恋柱・甘露寺蜜璃のニーハイソックスですね。着眼点がすごくいいなと思わされました。「新緑を駆ける」の疾走感と体躯のしなやかさ、そして「恋」という結び、一句の構成がとても上手いです。

大銀河弟の名を正したし   宮本隆邦

霞柱・時透無一郎、その兄の気持ちを詠んだ一句だと思いました。無一郎を戦いから遠ざけるために、無一郎の無を無能の無、無意味の無と散々言っていた兄ですが、本当は無限の無なのだとずっと伝えたかったのでしょうね。「大銀河」という季語が弟思いの兄の死を悼みます。

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謝辞

みなさま、素敵なアニメ俳句をありがとうございました。

今回の『鬼滅の刃「刀鍛冶の里編」』の俳句44句は一覧画像にしてアニメ俳句部のアカウントからツイートする予定です。でき次第、後日、ツイートします。

今後もアニメ俳句部はアニメと俳句をかけあわせたイベントを開いていきます。

リクエストご要望等ございましたら、いつでも気軽にリプライやDMをお送りください。

ではまた。

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