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「短編小説集」

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自作の短編小説集です。キャバクラ からファンダジーまで。作品によって幅があるので、気に入っていただけるものがあると嬉しいです。
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#自作小説

短編 『サラダだから冷める心配もない』

ケチャマンの意味がわからなくて、え、ケチャマン?と聞き返したら、女の子の日だよ、と笑われて3秒後に意味がわかる。あの単語とあの単語の組み合わせか。下品だけどセンスがあってなんか可愛い。 僕にとってはどちらも食べ物、と言いそうになって止める。さすがに変態がすぎる。変態キャラでとおしてるけど、羞恥心はある。というより女の子には良い印象をもたれたい。良い印象をもたれてどうするのか?決まってる、 売買するのだ。 今から10年以上前。スマホじゃなくてガラケー時代。もちろんラインも

「お父さん、お母さん、お姉ちゃん、弟」

ツイッターを始めて、使い方がよくわからないけど、心に思った事をつぶやくといいらしいので、ひとこと、「七転び八起き」と言ってみた。 2、3日たっても、誰からも反応はなかった。 今度は「明けない夜はない」とつぶやいた。やっぱり誰からも、なんのリアクションもなかった。 それから1週間がたったある日。いきなりリツイートが10万、いいねが300万になった。 僕のアカウントが【爆心地で生き残った、ただ一人の少年】だと、ヤフーニュースで流れたからだ。 2週間前、姉の結婚式に参加し

目醒めると全裸の美女が鎖に繋がれていた。

錆び付いて剥がれた浴室のタイルは冷ややかで、体温を奪う。身震いする気力も湧かず、視界が暗闇に慣れるのを待った。 頭が酷く痺れる理由は、昨夜の二次会で甲高い声の女と甘いウォッカを飲み競ったせいだ。俺のワイシャツの裾を頻繁に引っ張る女だった。二十三歳の新卒一年目。自分の肌艶の若さと、胸の大きさが武器であることを十分に承知していて、素知らぬふりで肉体を押し付けてくる。幼子の稚拙な作戦に陥落する歳でもない俺は、暫く巨乳の感触を肴に、酒を飲み続けることにした。 歌舞伎町の地下にある