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「短編小説集」

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自作の短編小説集です。キャバクラ からファンダジーまで。作品によって幅があるので、気に入っていただけるものがあると嬉しいです。
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#恋愛小説

短編 「百年の愛の行方」

雷雨の夜に恋が生まれる、かどうかはわからないけれど、身体の関係には発展しやすい。 ああ、またこんな情緒のない書き出しになってしまった、だから神聖なるnoteの雰囲気を汚すなとあれほど注意されたのに懲りない。 男女の話ばっかりしてるからよくAV男優に間違われる。存在がいやらしいとか言われるし、男性ホルモン過多なんでしょうって頭皮見て言われる。頭皮は遺伝だから関係ない。呪うなら僕の父と、父の父と、父の(〜300世代前〜)アマ○ラス様のせい(諸事情により伏字)。 僕の誕生時の

短編 「彼女を迎えに」

見慣れないドレス姿の写真が雑誌に掲載されていて、「顔出ししたんだ」と彼女に質問すると、「そのほうが指名が増えるから」と無職の僕には痛いことを返す。 生活費は僕も出しているから、僕はヒモではない。彼女も「仕事はしなくていい」と言ってくれる。「したい仕事がないのなら、無理して働かなくていいから。家にいて」 昼過ぎに二人で目がさめる。彼女は寝起きが悪いので、僕がお湯を沸かしてミルクティーをいれる。朝食をとらない彼女のために、蜂蜜をたっぷりと。ちゃんと混ぜないと最後に甘い部分が残

短編 「楽しいできごと」

吉祥寺にはラブホテルが全部で4ヶ所あって、そのすべてを利用したことがあるのは地元住民ならではだと思うので、今回はホテルの紹介をしたい。利用する機会がない?かどうかは誰にもわからないので後学のために。 僕は駅から徒歩7分のマンションにバイセクシャルの男性と2人暮らしをしていて、彼が在宅中は邪魔するのも悪いので、至急を要する場合には駅近のホテルを利用していた。だいだいにおいて男女の関係は至急を要するパターンかほとんどだ。恋愛に躊躇は無用。終電逃してハモニカ横丁で飲んでて酔ったら

短編 「ヨーグルトのある世界の恋」

水平線の向こうまでヨーグルトだから、これは水平線じゃなくてヨーグルト線だと思います、と理科の授業中にこたえたら、「水平線は水平線だ。おまえは理屈っぽいから、みんなに嫌われる」と先生が冗談っぽく言って、みんなが爆笑する。 僕もつられて笑うけど、何がおかしいんだかさっぱりわからない。僕のほうが絶対に正しい。どう見たって窓の外の、はるかかなたまで広がっているのは、白い白いヨーグルトのかたまりだ。 クラスでただ一人笑わなかった美玲と、僕はのちに結婚する。 こんな小さな村にいるの

短編 「ブルーベリー・ラズベリー・ストロベリー」

20代のころはネットで目立つことが至上命題だったので、「セックスの貴公子」「セックスの王子様」「3s(セックス・サックス・ソックス)」という名のアカウントを作って、毎日、セックスに関するうんちく、セックスに関する日記、セックスに関する小説、手描きの図解入りのセックス体位解説書(もっとも気持ちが良い体位はどれか?)をアップしていた。一人称は「俺」で、語尾にやたらと「!」を付加して。自画像は拾ったイケメンモデルの写真を拝借して。 「みんなー!ガンガンセックスしてるー?やれるうち