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「短編小説集」

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自作の短編小説集です。キャバクラ からファンダジーまで。作品によって幅があるので、気に入っていただけるものがあると嬉しいです。
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2019年6月の記事一覧

短編 「ヨーグルトのある世界の恋」

水平線の向こうまでヨーグルトだから、これは水平線じゃなくてヨーグルト線だと思います、と理科の授業中にこたえたら、「水平線は水平線だ。おまえは理屈っぽいから、みんなに嫌われる」と先生が冗談っぽく言って、みんなが爆笑する。 僕もつられて笑うけど、何がおかしいんだかさっぱりわからない。僕のほうが絶対に正しい。どう見たって窓の外の、はるかかなたまで広がっているのは、白い白いヨーグルトのかたまりだ。 クラスでただ一人笑わなかった美玲と、僕はのちに結婚する。 こんな小さな村にいるの

『お姫様の口から「好き」だの「愛してる」だのといった言葉を引き出せれば50兆もらえると知って有頂天になった身の程知らずたちの物語』

全世界の男子に告ぐ!姫の心を射止めたものには、王宮の財産の、半分をやろう! と、義眼の大臣が広場に集まる1000人の男子に向かって大声で呼びかけた。直後、興奮の雄叫びが地鳴りとなって広場を埋めつくす。 王宮の財産は軽く見積もっても100兆はあり、その半分なら50兆だ。一生遊んで暮らせるどころか、高額紙幣をトイレットペーパーにしても5000万年はもつ。 ある者は感極まって泣き叫び、ある者は天高く飛び上がって着地に失敗して捻挫し、ある者は前後左右から押されて失神し、ある者は

短編 「第173話 最終決戦」

※10年以上前に他サイトで発表した短編です。短編なのに第173話というのは、一種の洒落です。元になった話はだらだらと50話ぐらいまで書きましたが完結できず。とりあえず飛ばして最終決戦だけ書こうと試みたのが本作品です。セックスはいっさい出てきません。 (第173話までのあらすじ) ある日突然、「白パンダ」になった僕。同じように「黒パンダ」になった親友の田中は、ずっと眠ったままだ。僕らは中国軍や国連軍に命を狙われるも生き延びる。僕は田中を背負い、かつての師匠だった「紫色パンダ」