大企業vsベンチャー どちらが成長できる?を考えてみた
大企業vsベンチャーの成長論争
先週twitterを見ていると、「大企業とベンチャーでどちらが成長できるか?」や「そもそもそんなことを気にしている時点でベンチャー向きではない」という投稿があり、(いつものことながら)たくさんの意見を目にした。
ツイート・リツイートも終盤になると「最終的には本人の納得感でしかない」という論調が多く、「その通りなんだよなあ」と思った記憶がある。
一方で、大企業とベンチャーの違いはある程度理解した上でないと納得感も何もないと思ったので、私なりの見解を少し示してみたい。
簡単な自己紹介
新卒でIBMという世界でも有数のIT超巨大企業のコンサルティング日本法人(IBCS)に入社し、約3年ほど大企業向けのコンサルティングを行ってきた。
その後、上司にあたる方と独立し、引き続き大企業向けのコンサルティングを行っており10年ほど経つ。独立後は、ベンチャー事業会社として、自社でも事業を立ち上げ推進している。
そういった意味では、大企業のこともベンチャーのこともバランスよく理解していると言えるのではないだろうか。
そもそも成長とは何か
まず話の前提として、「成長とは何か」を考えてみたい。
採用面接時によく聞くコンサルやベンチャーの志望理由として「成長したい」があるが、「では、どんな成長がしたいか?」と聞くと、思いの外漠然とした回答が返ってくることが少なくない。
成長を一言で言えば、
『これまでできなかったことができるようになること』
もしくは
『これまでよりも上手に(品質高く・速くetc)できるようになること』
だと思っている。
とすると、多くの場合、やったことがないことにチャレンジできる仕事であれば成長することができることになる。
これでは、特に新卒においては、就業先が大企業でもベンチャー企業でも変わりがない。
そこで、大事な考え方が登場する。
『成長には方向性がある』ということだ。
成長の方向性とは何か
成長の方向性ということについて少し例を出して説明したい。
例えば、同じ売上アップを担う役割でも
・営業
・マーケター
では、獲得する経験・スキル・強みは別のものになる。
これは成長の方向性で言うと、『ヨコ軸』を考えていることになる。
上記とは別に、「そもそもどんな目標を達成する必要があるのか?」「目標達成のために最適な施策は何か?」というような、HowではなくWhy(目的)やWhat(ゴール・成果物)を決める仕事も存在する。
これは先ほどのヨコ軸に対比し、『タテ軸』と呼べる。
後ほど、もう少し詳述するとして、先に結論を書いておくと、
大企業とベンチャーでの成長の違いは、このヨコ軸×タテ軸について、
・扱う業務1つあたりの大きさが異なる
・扱う業務の数が異なる
と言うことになる。
仕事は様々な業務の組み合わせ
仕事は、どんなものであれ現状と目標の間にある乖離(=問題)を解決していくことである。また、その解決のやり方は無数にあるといえる。
このため、仕事をすると言っても、組織では大きく5つの業務を分担することになる。(下図の①〜⑤参照)
順番が入れ替わる部分もあるが、以下で詳述する。
①実行(現状)は、今ある仕組みを回すことだ。例えば、営業であれば既存客を回る、マーケターであればリスティング広告を運用するなどを思い浮かべてもらうと良い。
⑤戦略決めは、①と真逆であり、目標や理想像を定義することを指す。WhyやWhereを決め、事業や組織がどこに向かうべきか決定する。ここまで来ると営業・マーケティングなどの垣根はあまりなくなってきて、事業主や経営者という、業務を統合した視座で仕事を行う。
④作戦決めは、目標・目的地が決まったとして、そこに到達するための道筋を決めることだ。例えば、現状10億円の売上を来期15億円にするとして、5億円の積み増し方にはいろいろなやり方がある。営業で言えば、既存顧客の深耕・既存横展開・新規開拓の選択肢があるが、どこをどれだけやれば目標が達成できるか、また実現性があるかを考えることになる。
③戦術決めは、④で決めた作戦の勝ち方を決めることだ。別の言い方をすると道の登り方を決めることになる。例えば、営業で新規顧客を開拓するのであれば、『ターゲットを決める→リストアップする→スクリプト作る→アタックする→PDCAを回す』ということが必要になるが、これを設計するのが③の仕事だ。
最後に、②実行(改善)は、③で決めた作戦の1つ1つを実行する係だ。結果、①でやっている仕事から少し変えたり少し新しい仕事をすることになる。
大企業とベンチャーの仕事の違い
ようやく終わりが近づいてきた。大企業とベンチャーでの成長の違いは以下の通りだ。(再掲)
大企業とベンチャーでの成長の違いは、このヨコ軸×タテ軸について、
・扱う業務1つあたりの大きさが異なる
・扱う業務の数が異なる
大企業について見ていきたい。
1つ1つの事業規模が大きく社員などのリソースが豊富であることから、当然5つの業務の分業が進んでいる。このため、個人が扱う業務は単位としては小さく、しかし個人の総和である組織全体で扱う業務は大きくなる。よって、組織として社会に与えるインパクトは大きくなる。
また、比較的現状の仕組みを回す人(①実行(現状))の割合が高いと言える。このため、①の業務から⑤の業務まで縦断している(タテ軸の縦断)はほぼおらず、また同じ業務レベルであっても複数を掛け持つということはあまり多くない。ただし、1つ1つの業務が標準化されているため、型を覚えるという点においては強みになる。
次にベンチャーに目を向けると、大企業の逆を想像して見てもらえば良い。
事業規模もまだ大きくなく1人が(良くも悪くも)見れる範囲が大きいことに加え、普通はリソースにも余裕がないことがほとんどであるため、1人でタテヨコ複数の業務を担当する。特に、ベンチャーは常に改善し常に新しいことをしないと勝てない為、自然と大企業よりもタテの仕事を任される機会が多い。
大企業=ベンチャーの成長論
最後に1つ、大企業でもベンチャーでも共通する成長している人の考え方があるので紹介したい。大企業で史上最年少で出世街道を進む人、ベンチャーで2年目で社長の右腕を任される人などからの共通項になる。
・任された仕事を完全にNoと言わない(調整はする)
・任された仕事に対して期待値以上の成果を出す(売上などの定量目標もそうだし、品質やスピードなども該当)
・そのために、あらゆる選択肢を想像し、常に最善の選択肢を用意しておく
・もし100点が取れない場合でも、必ず最後までやり遂げ、70点でもその時の最善を尽くす
仕事の成果が次の仕事につながり、仕事を通じて人は成長することを考えると自明だが、『仕事を任せたくなる人』になることが、成長への近道となる。
弊社でも23卒の採用活動が遂にスタートしたが、これから就職活動する若いみなさんの参考になれば幸いだ。
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