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Ningen Dog

人間ドックの肺活量を測るコーナーでの、おねえさんとの会話です。

「最初はゆっくり吸ってえ〜、ゆっくり吐いてえ〜」
「はい、スゥ〜、ハァ〜」
「はぁいもう一回ぐらいいきましょう吸ってえ〜」
「スゥ〜」
「吐いてえ〜」
「ハァ〜」
「はい! こっから勢いよく吸って!」
「スゥ〜〜〜〜〜〜」
「吸い切ったら吐く! 勢いよく!」
「ハァ〜〜〜〜〜〜」
「もっと! もっと! 最後まで吐き切って!」
「フゥゥゥゥゥ…」
「あら? なんかぜんっぜん弱いですね。息が漏れてないかしら?」
「なんでやろう? 思いっきりやったんですけど」
「もう一回いきましょう。はい、まずゆっくり吸ってえ〜」
「スゥ〜」
「吐いてえ〜」
「ハァ〜」
「はいそこで思いっきり吸う! 吸ったら吐く! ほら強く!」
「ハァアアアアアア〜〜〜」
「もっと吐く! 吐くの! 思いっきり吐く! 何それ! 本気でやってんのそれ!」
「フゥゥゥゥゥ…」
「もう、ぜんっぜんダメですよ。ちゃんとやってます?」
「いやいや、ちゃんとやってますやん。こっちは必死ですよ」
「でも頑張ってこんな数値なわけないでしょう? もう…、どうしよう…」
「どうしようもこうしようもないでしょう。これが現実ですから」
「これが現実? え? なんで? 悔しくないんですか? こんな平均以下の結果で、なんとも思わないんですか?」
「なんとも思わないことはないですけど、でもこれが…」
「はぁいもう一回やってみましょう。きっとうまくいくう〜。吸ってえ〜」
「スゥ〜」
「吐いてえ〜、と思ったら思い切り吸う! 吸う! もうこれ以上ムリだと思うまで吸う! 吸い切ったら吐く! 吐く! もっと! もっと強く! 吐き切る! 最後まで強く! 強く! なんなの! もっと! 行きなさいよ!」
「フゥゥゥゥゥ…」
「もう、なんか情けない…」
「すいません…。来年、出直してきます…」

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