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劇場上映版 ビヨンド7

一度配信で観た作品も、オチを忘れていたりして、改めて楽しめました(それはいいことなのか、悪いことなのか)
体調によっては、全部見れないかも、と考えたのですが、
結果的に全プログラム観れてよかったです。

さて、今回感じた 配信と劇場上映との違い なのですが…

配信と劇場の違い

・配信では読める文字が、劇場では読めないことがある
これは、モニターに対しては自分の頭の位置を即座に調整できるのに対して、スクリーンに対しては ほぼ不可能だという違いからでしょう。
洋画の日本語字幕より小さい文字は、読めないこともあると お考えいただけるとありがたいです(近眼? 老眼?)

・響く重低音
劇場だと、
(これ、おそらく意図してのものではないんだろうな…という)風の音とかが、
ひじょーに体に響きます。配信だと、ある一定のヘルツ数以下の重低音はカットされるのかも。
逆に言うと、普段見ている商業映画の音が、いかに造られたものであるか(かつ、それでいて自然に感じる)ということなのでしょう。
今回、5.1サラウンド作品はなかったと思うのですが、
音に関しても、凝り始めれば沼だなあ、と思います。
どの作品かは忘れたのですが、特に引っ掛かりとか感じず音を聞いていた作品があって、”上善は水の如し”とはこのことだろうか、と思いました(たぶんその故事成語、そういう意味じゃない…まあお酒のことを念頭に置いているんですがw)。
※高音はどうなのだろう? あんまり意識してないけど

・モニターでは小さいものも、スクリーンでは小さいとは感じない
モニターでは細かく小さいと感じていた部分も、
(スクリーンは一種の ぼやけた鏡なので)必ずしも鮮明ではないのですが、小さいとは感じなかったりもします。そこそこ大きい。
比率として小さくても、小さくは感じない。

・沈黙の音
これも、具体的にどの作品だったかは 思い出せないのですが、
沈黙が、モニター視聴時とは別次元で効果的。
※YouTubeなどの動画配信では、沈黙を恐れているようなところもありますね
この映画館での沈黙を味わうために、それまでの騒擾があったのだろうかと
思うことも しばしばあります。

では、各作品の感想とか書いていきます。
勘違いとか見当違いとか あるかもしれません。
お気を害されたらごめんなさい(そうならないように書いたつもりです)

2022年10月22日(土)第一部『THE END OF BEYOND』

>視聴者投票で週間一位の作品たちを一挙上映いたします!

・プログラムA

15:10-16:55(開場15:05)

宙崎抽太郎『失われたウコを求めて』(10min)

配信の時と比べて、ノイズ減りました。特に、緑がきれいになった・・・ 
失われた時を求めて は、いろいろ もじられてきましたが、
プルーストの原作を全部読んだ人はどれだけいるのだろうか・・・

箱崎貴司(A Ladybird Theater Company)『亡国の希望』(6min)

ワンシチュエーションで送る、剣劇&剣戟。
大衆演劇のシナリオに近いかなあ。
赤ちゃんラグビーパスは、赤ちゃんの今後が心配だったりしますが、
それは考えてはいけない(汗
レッドクリフにも赤ちゃん大丈夫かなあ、ってのがありましたけど、
あっちは その赤ちゃんが君主になって亡国しちゃったわけで、タイトルの「の」の意味がいろいろ考えられるところです。

東基済(アローペークスエンターテイメント)『篝火』(44min)

主人公、仕事としては不可なく完全なのだけど、悔いが残っちゃうだろうなあ…
あれかこれか、を脱出し、生き方を決める際の通過儀礼、なのか。
ずいぶん重いものになっちゃいましたが。

りんご『元女子高生VS元女子高生』(44min)

・・・性的に優位でありながらも、結局それは「優位に 消 費 される」という意味でしかない、若年女子へのアンチテーゼ?
よりによって もてない男に偽装するエイリアンとは・・・
いや、SFのエイリアンとは、結局、人間のある種のタイプを誇張したものだったではないか。(ほんまもんのエイリアンは、”ソラリスの海”とか・・・いやあれもヒトの形をとりますけど)
UFOのグリーンバックの境目がはっきり見えちゃうけど、多分それも愛嬌です。
雪景色が悲しいなぁ。
そして、ラスト、海に向かって やけくそぎみに突進・・・カツラがとれたのは実はNGなのかもしれない~(が、脱げないよりも素敵だ)
HPの漫画を拝読したのですが、デス展開の途中に、各キャラの重い過去が語られる、という構造が共通していますね。 
※『元女子高生VS元女子高生』は、なんとびっくり、ゲーム化されてます! https://www.freem.ne.jp/win/game/28997

・プログラムB

17:10-19:15(開場17:05)

家猫しろ(家猫工房)・あさぎ21号『しろ魔っちゃん』(7min)

”家猫しろ”さんのオリジナル版はこちら
オリジナルアニメ『しろ魔っちゃん』PV https://youtu.be/u4_Bs1VU8i0
第01話『猫を裁く』 https://youtu.be/xjan7gRKDpw
第02話『地獄のマグロ』 https://youtu.be/nLQYLHSWfA4
第03話『猫の裁判官』 https://youtu.be/yVTgk_1yJKA
第04話『小鬼の助手卒』 https://youtu.be/GyX4pxkP_-c
第05話『地獄温泉ー足の湯編ー』 https://youtu.be/reDA2hMvnc4
ドットが分かる鮮やかな感じです。
今回 ビヨンド7に応募するにあたり、あさぎ21号さんによりHD化され、アフレコされてます。
ドットがスムージングされたり、緑の影が入っていたりするので、
すわ! AIによるものか! と思ったんですが、
ソフトの いたずららしいです(^^)
劇場で見ると、そういう細かいところは、あんまり感じなかったです
(当方の視力が悪いせいでもありますが)
地獄も楽しそう・・・?(楽しいといいな)

石山泰人『Letter to you 〜想いは時を越えて〜』(16min)

非の打ち所がない作品です。
スマホ撮影による車窓のローリングシャッター現象(柱が斜めになる)、
上手くやれば、スピード感の新しいリアルになるんじゃないかなと思いました。(スマホを180度回転させれば、傾きが逆になるらしい)
手紙の文字をちゃんと読んでくれるのが親切(バリアフリー的でもある)
被災地では、実話の物語が発生し、それが傷ついた人たちの支えになったのだろうか?

汗だく子(スタジオ放課後)『尊厳』(18min)

初見。双方の尊厳は、これで守られたのだろうか?
戦後、子供は殴って育てるというような風潮があって(学校含む)、
それは、徴兵制から遺伝してきてしまったものなのだろうけど、
そういう意味で、戦争は終わっていない。
どこかで負の連鎖を止めなければ、止まらないのだが・・・

田中亮丞『バロンを探して』(22min)

考えてみれば、自分も横浜で 赤レンガ倉庫など"大決戦 超ウルトラ8兄弟"の聖地巡礼を おこなってたわけだw
それは、より深く作品を味わうことにも通じるわけで。
彼らも探していたのは、バロンだけではないのかもしれない・・・
そして、肝心の「耳をすませば」を見ていないのが悔やまれるw
ごめん、バロンって何(誰)? 男爵? 猫ってことでいいんでしょうか?
ラストのどんでん返しが面白く、爽快(劇場で声が上がった)。

橋本知佳『幕末HEROZ』(60min)

乙女ゲーに逃避するアラフォー女子社員、
(なお、逃避することが悪いのではなく、現実の方に問題があるのだ)
”ダンプに追突され異世界転生”・・・ではなく、
頭を打って、幕末にタイムスリップしちゃいます。
(メガネ無いと、ものを見るのに苦労しただろうなあ、とは思うけど、そういうことは たぶん考えなくていいw)
ここで、沖田総司と坂本龍馬に会うわけですが、
(ゲームと考えるなら、攻略対象であるわけだ)
この二人、いろいろ対照的でそれがよかったなあ、と。
古い侍と、新しいサムライ、坂本龍馬のあのラストは、歴史を知ってる人にとっても新しい説ではなかったでしょうか!

・プログラムC

19:30-21:25(開場19:25)

戸巻のぞみ&小泉京介(映像制作団体202)『TAPE21』(5min)

TAPE1からtape20までの存在が気になるところですが、
これ本当に救いがないんですよね~
スマホで、ただ撮っただけっぽくみえるのですけど、実は編集(カット割り)があったりします。もちろんトリック(仕掛け)も。
スマホ撮影(縦)のため、横長シネスコスクリーンにおいて、小さくなり、
その分、陰惨さは薄まったかな?
とはいえ、一部目をつぶってましたが(汗
本当は、スマホで縦画面視聴するべきなのだろうか?

井坂優介『千のひとつまえ』(16min)

実はこれ今も、ネットでも特別公開されています。
【特別上映】千のひとつまえ https://youtu.be/7klD7yymUxM
主演女優さんが実は会場にきてらしたのですが、
スクリーン上の方と同じだとは気がつきませんで・・・
こっちもゲr・O(モビルスーツ風にぼかしてみましたw)シーンは
目をつぶってましたわ(まあ一度観てるので)
観てる割には、ストーリー詳細を忘れてまして、
これどうやってループを脱出するんだろうと、ハラハラしてました
(この記憶力は得なのか損なのか)

齋藤竜一(齋藤會)『プロジェクトO【吹替版】』(43min)

アクションと香港映画へのオマージュがすごいw
あの落下シーンとか、よく学校の許可がおりたなあ、と
(3回繰り返すのもアクション映画あるある)
なんか広東語ぽく台詞をしゃべって、あとで日本語吹き替えしてるのですが、リップシンクとか、映画館で観てる限りでは気にならなかったな。
映画を作る楽しさにあふれてました。
齋藤さん、家紋はやっぱりナデシコなのね~

 【特別上映】

MATSUMO『Laika 〜犬小屋の世界外伝〜』(8min)

今回、縦字幕&声の形で上映されました
マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグの元ネタともなっている宇宙に行った(そして帰ってこなかった)犬の話です。
宇宙開発と軍事は切っても切れないらしく、あの娘は、徴兵されて、戦死した、とも見なせますね。
今、人工衛星は、世界を繋ぐのに使われているわけですが、時にその情報は、無意味だったり、攻撃的だったりして(Twitterとか)、そんなもののために、あの娘は死んだのだろうか、と思います。

ただ、普通では決してみれない景色を観れた。

犬小屋は、パッション込めた高速移動を行い、
(空飛ぶ犬小屋は、MATSUMOさん永年のテーマ)
奥へとハイスピードで小さくなっていく景色は
映像的な快楽だったりもします。

坪井勇樹『ころんば』(14min)

時代遅れのおもちゃにリング状に囲まれて、その中心で、幼児用の椅子を大にして、首を吊ろうとする・・・
この絵面だけで、もう満足です。
ネオ仏教というパワーワードw しかし、昨今の政治とカルト宗教のことを考えると、ヤバイですな?
大画面で観ると、あのVRトリップシーンが眼福だったりします。
こういう大人になりたくないなあ、という思いで作られたそうですが、
うん、なりたくなくても、なっちゃうものなんですわ(悲痛

永井茜『この恋はスベってる』(24min)

ルックスとか関係なしに、漫才師ってモテるみたいなのですよね~
で、地下漫才師、なんてのも出てくる。
お笑いの人は、自主演劇のように自らチケットを売ることはしないらしいのだ(本当?)。
地味にカラオケで働く女性は、密かに漫才師のネット番組に投稿しており、
そこでは、男だと思われていた。一種の性別トリックなわけですな。
スマホ画面の文字は、残念ながら劇場では読めず(読めなくてもいいのかもしれませんが)
芸人へのガチ恋を拗らせたお笑いファンが自主映画を作った話|永井茜 https://note.com/nagai_akane/n/n3b272581bc29

鈴木俊哉『錆びた手』(5min)

殺し屋もの。
錆びた手は、ビジュアルというよりは、音で分からせた。
自分が固まっていく恐怖、というのは、殺し屋でなくても あるのかもしれない。

2022年10月23日(日)第二部『檄』

>ゲスト作品と共に、時間の許す限りセレクション作品を上映いたします。

プログラムD

15:10-17:10(開場15:05)

山口健太(グラウンドレベルシネマ)『しょうきっとん』(14min)

エンドロールで、しょうきっとん のところが、別の名前に変わるのが白眉。全体的な謎の多さ(ずらし)と、白黒写真とがマッチしている。

らぐすけ『Showery intersection』(2min)

考えてみれば、これも無限ループなのだろうか・・・
ひとりで信号待ちしてたとき、パッポ パッポの音ガイドを聞いて、
この作品を思い出しました。
静かなスローモーションと、迫力の雨音。
あと、Showeryはシャウ(ワ)リィ・と読むそうな 

泡井才『昼休み』(6min)

『殺す』(配信のみ 現在終了)とは先輩後輩が入れ替わり、よみがえって再登場。
落語(こんにゃく問答)みたいなすれ違い。
"のぞみ"は無いんですか!! 

中沢志保『檸檬』(10min)

ちょっとレトロな、気品ある映像。
もちろん 梶井基次郎の あの「檸檬」へのオマージュなのですが、爆発するのはレモンではなく・・・
梶井基次郎は結核だったのですが、この作品の主人公も、そんな脆弱さを抱えているようで・・・

田村宗慈『未来写真』(13min)

オープンエンド、というのかな(違う気もする)、
超能力とも修正とも、どっちとも取れるようになっていますね。
主演のかたの、フツーの人っぽさがいい。
虐待からいかに人を救うか。
当事者ではない、他の人が必要だ、ということか(『尊厳』にも通じる)

堺史洋『ハルコのまじない日記』(14min)

安倍晴明のもじり(子孫?)っぽい「安倍ハルコ」という名前(明かされるのは中盤 漢字は不明)
占いもするのだけど、悪魔払いもする。
言葉が呪い(呪=しゅ)だというのは、夢枕漠の「陰陽師」でも描かれた概念で、冒頭のハルコは、実は男友達に、「そこに来ている」という言葉で、呪いをかけているのだとも考えられる。
「人って死ぬんですよ、知ってましたか?」
ハルコの男友達の女友達の恋人(男)の死は、偶然だったが、
(あるいは「偶然」と発言することにより、偶然にしたのか)
呪いは意外な形で返ってきた。

栁澤公平『少し未来のある部屋で』(16min)

そう、少しだけ。
ひとつの部屋だけで進むのですが、シナリオが素晴らしい。
初見の前に、少しネタバレを読んでしまい、それは惜しかったかな、と。
今回、劇場で初見だった方は、幸いです。
字幕付きです。理解の助けになります。
字幕のフォントは小さいのですが、セリフと同期しているため読めます。

浜川昌宏(映像集団ふうりゅう舎)『霧子とキリコ』(20min)

こっちも『ハルコのまじない日記』同様、いわゆる悪魔払い師は出てくるんだけど、
ハルコのほうが地味目だったのにたいし、こっちはヒーロームーブする。
それだけに、ラストは本当に意外だった。
画質・・・ではなくて、画の感覚がビデオっぽく、(FPSが24よりも多い? 画質はきれいです)
2000年代前半の特撮もの(ネクサスとか牙狼とか)を思い起こさせました。
タイトルも2004年の ”ウルトラQ dark fantasy” #14の「李里依とリリー」を彷彿とさせる。

>【重要】Dプログラムで上映予定であった『解離するヴァルネラビリティ』は諸事情により中止となりました。
ヴァルネラはかなりの名作で、映画館で見たかったとも思うのですが、
「諸事情」は諸事情なのでしょう(よく分からない)
ただ、かなり賞をとってらっしゃるので、今後映画館で見るチャンスもきっとあるでしょう。
解離、という点では、『霧子とキリコ』『西園さんは今日も』にも通じる。

【特別上映】

森幸光『エクソダス』(25min)

しっとり鮮やか柔らか、とも言うべき色調。
抜け出せそうで抜け出せない水くぐり。
愛人(というかコンパニオン?)が母親だという(アポロンの)地獄。
エクソダス・・・できたのだろうか。
ギターだけが杖であり武器である。
ビヨンド7開催の前日に(会場となる)横浜シネマ・ジャック&ベティで
ウォン・カーウァイ×クリストファー・ドイルの『恋する惑星』を観ていたのですけど、色調的に、それ思い出しました。見比べたら全然色調違ってるかもしれませんがっ

・プログラムE

17:25-19:20(開場17:20) 

hiroshi yamada(白熊映像製作委員会)『E L E B A T O R』(8min)

ヱヴァのオペレーターたちが状況を口々に報告する のを元ネタにされているそうなのですが、そういうことを思い起こさせない作品です。
青い空に赤い東京タワー。
レールの上を 振動なく ゆるやかに 無人で動く ゆりかもめ。
スローで、人も文字もない高層ビル群を、奥方向に移動していく映像的快楽。
そこに、エントロピーが(微細なところから)増大していくコトバが重ねられます。
もちろんコロナ禍のメタファーなのだ(メタファーになって”しまった”?)と思いますが、
地球温暖化のことを語っているのかなとも思ったり。 

高上雄太(映像集団ブンカモノ)『セルフタイマー』(3min)

ワンショット ワンオペで魅せるホラー。
配信だと、ボケた背景含め全体を見ていて、カメラのモニターが(全体に対して)小さい印象なのですが、
劇場だと認識が逆転し、カメラのモニターが「全体」であり、そこに 背景が環境として付属しているという認識になります。
それゆえに! ラストは、マジでびびる!  

岸本真季『茸の唄』(3min)

子供向け番組のようなナレーションで始まり、
任侠ヤクザ映画のような会話が繰り広げられるという・・・
まあ、生存競争は仁義ないっすよね~
BL(ぽさ)、おふくろさん、ぬくぬくと生き残るボス、
などなど、ヤクザ映画あるあるが満載です。
そして、子供向け番組のように終わ・・・ってないな(汗 

熊捕聖奈『灯火』(4min)

配信では(私の)モニターの外に、キーボードとかご飯とかコップとか、いろいろ賑やかにモノが置かれているわけですよ。
でも劇場では、真っ暗。シネスコ画面の下中央にちょこっとだけ、消えそうな灯火があるだけの絶望感。
配信の際は、女子生徒がなりたいのは女優とは限らず、他の人のともしびとなるような人になりたい(けど、恥ずかしくて言えないので、女優というダミーを友人には語った)のだと思ってましたが、
劇場では、そうではなく本気で女優になりたいのだなと、ひねらずに鑑賞できました。

ひろさわ(ひろさわ工房)『うごめくゴッホ ひまわりバージョン 完成版・改』(7min)

発表するたびにバージョンアップしていく「うごめくゴッホ」、
英題が Moving Vincent であることで分かるように、
当然 Loving Vincent(邦題:ゴッホ 最期の手紙)からのインスパイアなのですが、目指すところは違っている。
その違いは、なかなか伝わりにくいのですが。

平野玲央『YUKI』(10min)

男女がいる(A・Bとしよう)。二人は恋人。
もう一人、男(C)がいる。3人はトモダチ。
・・・この恋人同士(A・B)の、友達(C)に対する油断。
CのBに対する想い。Cが偶然たばこの縁で知り合う「ユキ」という名の女性。それはBと同じ名で・・・
青い舌と赤い血。
不穏な予感は、予感のまま終わる。
パーソナルな映像として、スマホ縦長画面が。(これは『TAPE21』にも通じるか) 

蔵岡登志美『日本の中の小さな異国』(20min)

異国と書いて「ふるさと」とルビが付きます。
朝鮮初級学校(この書き方でいいのかな? 小学校に相当)を取材。
ホームムービーぽさがあります。
そして、この「ホームムービーぽさ」自体が、
この作品の主題なのではないかと。

【特別上映】

高橋佑輔(Metalmaster Cinematic Universe)『THE SHIBUYA REDEMPTION』(60min)

最初の、サイケなチューブの中を進んでいく画が、大画面に映えましたね。
そして、この作品、実は男しか登場していない気が・・・
マトリックス的な異世界を、薬物の力で存在させようとする、それは"AKIRA"でもありますね(AKIRAは徹頭徹尾、東京の話ですし)

・プログラムF

19:35-21:25(開場19:30) 

浅野勇貴(司法書士事務所フォーエバー・ジーニー)『アナリティクス』(10min)

小泉政権あたり(西暦2001年ぐらい?)の靖国神社スケッチ。
ナレーションはない。
アナリティクス=分析 を行うのは、見ているこちらのほう。
自分が視たのは、そこにいる人が、なにやらすべて演劇的であるということ。軍服を着た人も、「ヤンキーゴーホーム」の叫び方も。それはカメラの存在がそうしているのかもしれない。
そして、異様に男女比が男のほうに偏っているということだった。

塩原璧(ぺキサイト)『カップ大魔人』(3min)

ベクターグラフィックス? きれいに画面に映えていました。
ストーリーは、らせん型無限ループとも言えそうなもの。
セリフなし。ゆえに世界に通用しそう(カップ麺=安価 というのは世界共通?)しかも3分ピッタリ?

古里静花(東京大学映画制作スピカ1895)『ポプリの瓶』(26min)

『YUKI』以上にポリガミーな男女関係。一夫一妻性の道徳からすれば、乱脈、とさえ言える。
『ポプリの瓶』は、劇中の雑誌に掲載された小説のタイトル。
小説家志望の男は、その小説を「おもしろくない」とか「小説なめてる」とか、編集部を含めて散々けなすのですが、
2度目に映画館で見ると、その批評、というか やつあたりが、全部自分にかえってくることになるんだよなあ、とニヤニヤしてました。
・・・ポプリとは、死んだ(枯れた)花であり、
そして、作品の最後には生きた花束が現れる。

蒲生映与『西園さんは今日も』(70min)

今回、初見。
私は主人公の男性が「西園さん」だと思ってましたが、それは女性のほうの名前で、
じゃあ「今日も」の続きは なんだろう、と謎かけが残ります(明かされるのは真ん中ぐらい)
解離性同一性障害。かつて二重人格・多重人格と呼ばれ、フィクションで興味本位に語られることが多かったものですが、
「解離」とは、なにかツラすぎることがあったときに、それを忘れてしまう現象、であり、これは病気なのだ、と。

もともとの圭一郎を中心に、
漢字一文字であらわせば
暴・女・知・子 の4つの人格が、外部状況に応じて現れます。
そして、仮面ライダー電王(唐突やな)と違うところは、
それらの人格は、同時には出現しないこと。
他の人格は、ある人格にとって忘却のエリアにあり、
メモ帳で文通するしかコミュニケーションの方法がないこと。
(電王は電車の中で憑依元が話し合えた)

なお、
「西園さんは、今日も いやな顔もせず 私の話を聞いてくれた」・・・なのですが、
西園さんが、実は圭一郎(たち)のイマジナリーフレンドではないか(実在しない)、という解釈が思い浮かんでしまった。でも、さすがにこれは飛躍しすぎか。元クラスメイトも西園さんを見ているし。

過食してしまうのは、どの人格だったか・・・
普通に食べたい、という思いは、自分にもありますね。
過去の摂食に関する失敗が、ネトネトと今の自分にまとわりつく。

ラストはめでたしめでたし、ではないのだろう。
一つの区切りがついたというだけで。
幸せでなくても、これからの圭一郎さんの生活が、
心静かなものであってほしいと、願う。


というわけで、二日にわたって 横浜シネマ・ジャック&ベティ で行われた上映イベントも幕を迎えました。作品賞は、最後に上映された2作品、
『ポプリの瓶』と『西園さんは今日も』。


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