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クラウド・ファンディングで「預かったお金」と税金の申告

佐藤ひろおです。会社を休んで三国志の研究をしています
……が、職業は経理マンです。税理士・会計士の資格はないですが、企業側の経理部署の社員として、10年以上の実務経験があります。

友人からの税金にかんする質問

友達から質問を受けました。クラウド・ファンディング(以下、「クラファン」)の税金の確定申告について。

「購入型のクラファンで集めた資金は、商品やサービス提供時に売上として計上するっていう情報があったんだけど、そうなん?」

ぱっと見て、なにを聞かれているのか、むずかしいですよね。今回の記事で、「考え方」を解説しようと思います。 ※答えは書かないです

ぼくは、自分で三国志のクラファンをしたこともあり(現在も継続中)、職業的な興味もあるので、友人に答えがてら、記事を書いてみます。

ぼくがやっているのは、正史『晋書』完訳プロジェクト
http://3guozhi.net/sy/top.html

購入型クラファンとは??

まず、「購入型クラファンって、なんやねん??」というところから。
購入型のクラファンとは??ぼくの言葉で、書き起こしてみます。

たとえば、「オリジナルな商品を思い付いた!!さっそく作りたいが、商品を制作するにも、けっこうなお金がかかる」というひとがいます。
①さきに制作代金を払えるだけの、資金的な余裕がないし、②せっかく作っても、1つも売れなければ破産する。
こまった!!

そこで、まだ商品はできてないけど、
購入の予約注文をさきに取り、さきに購入代金を集めてから、そのお金で制作に取り掛かります。①制作の資金が手元に集まるし、②もう買い手がついているから、在庫リスクもない。解決!!

ネットが発達し、情報発信のコストが下がりました。お金を専門技術を投入しなくても、開発した商品への「思い」や、独自性をアピールしやすくなりました。薄く広く、購入(希望)者を募ることができるようになりました。マッチングのチャンスが増えました。
第三者のあいだでお金を授受できる「決済」の仕組みが、浸透しました。ちょっと前まで、「クレジットカードなんて、借金でしょう??良識ある大人が使ってはいけません。現金決済なさい!!」てな感じでしたよね。
ネットの発達と決済手段の普及が、購入型クラファンの「時代の追い風」になっていると思います。

友人の質問をかみくだく

正しく答えるために、ぼくは、友人の質問をかみくだきました。

経理の経験上、受け取った質問に対し、言葉どおり答えようとすると、誤解を招いたり、処理を間違ったりするんです。
日常会話において、「質問を質問で返す」というのは、マナー違反とされています。「今夜、なに食べたい?」「あなたは?」って、感じ悪いじゃないですか。でも、経理の質問においては、きちんと聞き返し、「一般の質問」を「経理の質問」に翻訳・変換する必要があるんです。

・クラファンでお金を受け取ったときに「収入」とするか
商品やサービス提供した後に、はじめて「収入」とすればよいか

質問の意図は、受け取ったお金を、税金計算に「収入」として反映するタイミングだったんですね。なぜこれが、問題となるのでしょうか??

もっとも一般的な処理

前提として、クラファンでお金を受け取って、商品をお届けするまで、同じ年に収まっていれば、この質問は出てこないんですよ。

たとえば、10万円あつまり、そこから3万円をクラファンの仲介業者・プラットフォームに手数料を支払って、5万円で商品制作と発送をしたら、

受けた支援10万円-手数料3万円-制作費等5万円=もうけ2万円

この2万円に対して、税金がかかります。たとえば、税率が20%だとするならば、2万円×20%=4千円を確定申告でお納めして、おしまい。簡単。

年をまたぐと税金が増える

購入型のクラファンは、
さみだれ式に募集をかけ続けている期間とか、商品を制作している期間など、時間がかかりがちです。年が終わった時点で、お金だけ受け取った(預かった)けれど、まだ制作できてない、商品を発送できてない、ということが、往々にして起こり得ます。

お金だけ預かってしまったままの年越しです。

税金は、12月31日までの収入と支出に基づいて計算します。たとえば、10万円あつまり、3万円の手数料を払ったが、商品の制作がまだならば、

受けた支援10万円-手数料3万円=手元に7万円あるんですけど??

この年だけだと、7万円のもうけが出ている(ように見える)。
実際に、税務署などが、銀行口座などの記録を調査すれば、7万円のもうけがある。これ以上の証拠は、なにも出てこないんですよ。

主観的には、「一時的にお預かりしているだけのお金」であり、自分のものになったわけではない。しかし、「それはあなたの感想ですよね」と言われたら、感想なんです。
支援者を裏切ることになるかも知れないが、この7万円を持ち逃げし、商品を制作しない、ということも出来ます。持ち逃げするひと、います。三国志を趣味とする界隈でも、「持ち逃げ」事案を聞いたことありますよ。

持ち逃げすれば、ネット上で騒ぎになるし、支援者から訴訟を起こされるかも知れません。が、税務署は、そんなの興味ゼロです。監督官庁が違いますからね。
税金の計算に関わりがあるのは、「当人がだれとどういう約束をしているか」「どのように使うつもりか」ではなくて、この1年に、どのようなお金の動きがあったか、です。ザッツオール。

そういうわけで、7万円×20%=1万4千円の税金を納めてね、以上。
これ以外に、税務署が思うことはないはずです。

「おや??年内に制作と発送まで終わらせていれば、税金は4千円で済んだはずなのに、年をまたいでしまったばかりに、1万円も余計に税金を払わなければならないの???

……はい。そうです。
理不尽に思えますけど、税金計算って、こういうこと多いです。

取引の実態と、税制がズレることは、よくあります。制度のゆがみに対応するため、金融のトレーダーなどが、「おかしな動き」をするので、年末に相場が荒れることがあるほどです。「損出し」とか言いますね。制度的な欠陥のようにも思えますが、現実なので、しゃーない。

ぼく個人的には、クラファンするひとは、
銀行口座など、客観的に証明できる(税務署も調査に使用する)データから、なるべくズレないように税金を払うのが、いちばんよいというか、仕方ないと思っているところがあります。
1万4千円払うのが、とりあえずの正解かな、と思っています。もちろん、税務署の回し者とかではないですよ。現実的な、クラファンの運営者としての考えです。

税金を多く納めないようにする方法

ここからは、裏ワザでもないですけど、ちょっと難しい処理。

これを指して、「節税」というひともいるくらい。「節税」って、へんな言葉だと思ってます。税金なんて、「正しい納税」と「まちがった納税」しかない。概念として、ぼくは受け付けないです(笑)ウケをねらってのことだと思いますが、「節税」という言葉を使う税理士は、皆さん、距離を取ってもいいと思います。

簿記を勉強し、クラファンをやっている事業について、きちんと帳簿をつけ、かつ「前受金」という概念を理解できたら、年をまたいでも、税金を多く納めないという主張ができる可能性が生じます。 #結論

すっごいイジワルな感じになっちゃうんですけど、別のスキルなんですよね。年をまたいだお金の処理って。
企業ならば、決算書を作っているので、ふつうにやっている処理なんですけど、一念発起してクラファンをした個人にとって、未知の領域というか、べつ分野の勉強になります。

「前受金」の処理について、税理士の先生が書いているブログが複数ありますが、ブログの記事に沿って処理をしても、責任は取ってもらえないです。顧問契約を結んで、代わりに申告書を書いてもらったら、はじめて責任が生じます。
税理士の先生がたは、「客寄せ」のためにブログに関連情報を載せているわけで、その情報じたいに価値は持たせてないです。

フェアなところで、国税庁のホームページにも解説がありますから、それを理解して、やるしかない。
急に冷たくなるのは、税理士の有資格者のブログですら、ピンキリであり、責任を取ってもらえないのに、税理士ならざるぼくの記事に基づいて、処理するのは、「発想からしてNG」だからです。

原則的な考え方としては、年ごとに精算していく。多く税金を払うことになっても、必要コストとして諦めるのが、現実的な妥協点。それがイヤならば、簿記などを勉強し、国税庁のホームページを読みこなす。

クラファンでお金を集めているひとが、税理士と顧問契約するのは、コスパの点で釣り合わないと思います。「年またぎ」の税金を多く払っているほうが、結果的にお得なんじゃないですかね。

ぼくは、簿記とか税金の勉強をするより、クラファンをしている本業(ものづくりなど)に集中するほうが、先だと思っちゃいます。
とくに後半、感じが悪かったらすみませーん(笑)職業モードが入ると、イヤなヤツになるのかも知れません。

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