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ぼくが持ち家よりも賃貸の理由/投資は不動産でやらなくてよい

佐藤ひろおです。会社を休んで三国志の研究をしています。
一昨日、noteで接点の生まれた方と、スタバで話してきました。書きたいことがたくさんあるので、順番に消化していきます。

Yui Matsumotoさんは、大学の後輩です(年齢が14も違うので、在学中は接点なし)。「25歳OL、都心に家を買う」シリーズを書いていらっしゃったこともあります。

ぼくが自分の身を振り返ったとき、これまで住宅購入を考えたことがなく、賃貸一択でした。
理由は、かっこよく言えば、「人生の機動力が失われるから」です。住む場所、仕事の状況、家族の人数?に、流動性があることが好きなので、賃貸をウロウロしてるんでしょう。

Matsumotoさんと話し、自分の感じ方を言語化してみたいと思いました。意見が違うからといって、ひとさまの住宅購入を良い・悪いと言いたいのではありません。口を出すにも、無関係すぎますしね(笑)

不動産の価格の決まり方

市場には価格の調整機能があります。局所的に「ゆがみ」が生じる場合もあるが、大きく見れば適正価格で売買されます。
賃貸を転々とする場合と、住宅を1回購入して住み続ける場合とで、かかるお金が等しいように、価格が設定されていると、見通しが立ちます。

賃貸は初期費用がかかるイメージがありますが、貧乏だった学生時代の感覚を引き摺っているだけです。ある程度、手持ちに貯金があれば、意外に「軽症」です。一気に家賃4~5ヵ月分ぐらい支払うので、うげっ、と思いますが、家賃の先払い分などを差し引くと、純粋な引っ越しコストは2~3ヵ月分でしょうか。数十万円です。
一方、不動産の購入をすると、数百万円単位で諸経費(物件の価値に加算されない出費)があります。ローンを組むと、金利の支払い分により、さらに千万円単位での出費増。

月々の支払いは、賃貸も購入も差が出ません。というか、家賃も不動産の物件価格(=ローン返済額)も、「入居者が月々払える上限額」に向かって価格設定されるので、おのずと同じ金額まで上昇するはずです。

住み替えのコストで差がつく

賃貸と購入の差が出るのは、住み替えのコスト(移動の費用)。

賃貸の初期費用は、競合が多いので、釣り上げられない。単価が低いので、釣り上げても客が去るだけで、利益の総額が増えにくい。だから、どの物件をどの仲介業者から借りても、だいたい同じ。

不動産を販売するときは、「死ぬまで賃貸だった場合と、住宅を1回購入して住み続ける場合とで、負担の総額が同じになる」ように、価格調整されるはずです。
多くの住宅を購入者は、「ついのすみか」のつもりで買います。「賃貸を転々とする場合と、人生トータルで同額」までなら、喜んで払います。不動産の売り手も、その前提でシミュレーションするんじゃないですかね。
不動産価格は、「一生賃貸」の場合の総額の上限に貼りつきます。

裏を返せば、これが大事なのですが、
不動産は「ついのすみか」価格です。途中で都合が変わり、不動産の売買(住み替え)をすると、1回の住み替えあたり数百万円単位、下手したら1000万円以上、損をします。

「不動産業者の皆さん、3回の住み替えまで織り込んで、不動産価格を下げて下さい」というのは、ムリなお願いです。業者からしてみたら、実際にそのひとが住み替えるか分からない。何年後か、何十年後かに回収できるかも知れない利益を、入居者に「あずける」わけがない。
不動産価格は、1回の購入で一生賃貸の場合とトントン、2回の購入で入居者が大損、というところまで上がり続けます。

ぼくは、「一生この土地、この物件に住む」という場面をうまく想像できません。不動産を買っても、いずれ住み替えが発生すると思っています。結果的に住み替えなくても、「いつでも住み替えられる」という余地を愛しています。だから賃貸派になっちゃいます。

家に「もの」としての価値はない

海外と違って、日本の不動産の価値は著しく下がる一方です。購入派・持ち家の優位性は、「物件の価値」にはありません。
ローンを払い終わったら老後も住み続けられる、というハコへの物理的な期待はありますが、修繕費だの固定資産税だのを積み上げていくと、ハコの維持も大変。日本に住宅に、「もの」としてのありがたさはない。

購入派は、「もの」に期待を寄せますが、それは、購入することを決めた上で、その決心を後押し・正当化するために、あえてそう思い込んでいるだけです。もしくは、販売業者の営業文句です。

赤ワイン好きが、「ポリフェノールも摂取できる」と正当化するのと同じ。赤ワインが好きになる前は、ポリフェノールなんて知らなかった。ポリフェノールは、アルコールを含まない食品にも含まれている。赤ワインを飲む必要はない。赤ワインありきで、ポリフェノールを見出しただけ。おもに、ワインの売り手の宣伝文句ですよね。

「もの」を抱えずとも、修繕費なみの金額を積み上げたら、べつの、それなりの賃貸物件に住める、ということはあり得ます。

不動産に投資としての旨味はない

「住み替えのとき、購入時よりも高く売れるかも知れないじゃないか」という話も聞きます。
しかし、来月の野菜の値段すら分からないのに、どうして数年後、数十年後の不動産の価格が「上がるだろう」と思えてしまうのか。市場の平均に照らして、著しく下がるだろう、と見立てるのが合理的。

投資対象としての不動産は、否定しません。しかし、その道のプロがひしめくなかで、「住んだついでに、投資にもなった」なんて、なかなか狙えません。チャンスがあるなら、とっくにプロの大資本が、有望な不動産を取得し尽くしていますよ。
住み替えによる損を、軽微に抑えられたらラッキー、ぐらいのもの。

「住みたい」のか「儲けたい」のかどっちなのか。目的を混同すると、たいていのことは失敗します。
「住みたい」から持ち家を買うのは理に適っています。他方、「儲けたい」ならば、取引単位が小さく、値上がりの期待値が高く、流動性が高く、取引コストの低い投資対象が、無限にあります。
おすすめしませんし、融資も受けられないでしょうが、銀行でローンを組んで、株価指数のインデックスを買っといたほうが、よほど(ほぼ絶対に)儲かります。「儲けたい」は別の話です。混同はよくないです。

だから賃貸派です

というわけで、純粋に「同じ土地、同じ物件に、死ぬまで住み続ける」ことに喜びを感じる場合のみ、不動産を購入するのがクレバーな選択となります。これはもう、金銭的な損得ではなくて、ライフスタイル、価値観の問題ですね。

なぜ損得が関係ないのか。上述のように、金銭的に損得の差が出ないよう、ギリギリまで価格調整されるはずなので。もしも1回の不動産購入ですら、一生賃貸よりも著しく不利ならば、全員が賃貸に流れます。そんなバカな価格設定はあり得ないので、不動産価格が下がります。

住み替えの余地を残したいなら、賃貸一択でしょう。1回でも、予期せぬ引っ越しをしたならば、賃貸派は、もとが取れています。というわけで、ぼくは賃貸でいいや、賃貸がいいやと思うのでした。

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