イラストがフィンランドでカレンダーになった話
フィンランドで発売中の2023年のカレンダーに、私が描いたイラストが掲載されています。12カ月のうち、私はどうやら5月を担当させていただいたようです。日本人のいちフィンランド好きが叶えたひとつの夢のお話です。おつきあいいただけたら嬉しいです。
ComeToFinland
「ComeToFinland」さんをご存知でしょうか?フィンランドの観光誘致ポスターを制作・販売している団体です。フィンランドや北欧がお好きなら、そのデザインを一度は目にしたことがあると思います。
どこか懐かしく、レトロな色使いのポスター。それもそのはず、ずいぶん昔からポスターは制作されているそうで、1930年代のものも。過去のポスターは古さを感じず、むしろ新鮮に映ります。
私も、フィンランドのイラストといえば!と思い浮かべるのは、ComeToFinlandさんのポスターです。
ComeToNorden(北欧)カレンダーに採用されました
ComeToFinlandさんのポスターとなるイラストは、毎年コンテストで選ばれています。
応募した作品が、2023年カレンダーに掲載される12作品のうちの1つに選ばれたのです。この年のコンテストは「ComeToNorden」と題し、北欧がテーマとなっていました。
コンテストには世界中から359作品の応募があったそう。そのうち上位8作品が公表され、インターネット投票によって1位が決まりました。
私の作品はその8作品には残らなかったものの、今回カレンダーに掲載する12作品に選ばれたということでした。
コンテストに応募し続けた
さて、ここからは私が歩んできた道のりをご紹介してみます。このコンテストは、フィンランド歴の長い先輩に「応募してみたらどう?」と教えていただき、2019年以降毎年チャレンジしています。
フィンランド国内の観光地がテーマとなっていますが、近年は隣国スウェーデンや北欧といった、範囲を広げてテーマが設けられています。最近のコンテストはこちら。
2019年 サイマー(湖水地方)
2020年 ヘルシンキ
2021年 ハンコ(海沿いのまちです)
2021年 スウェーデン(隣国がテーマとなり開催)
2022年 北欧
ちなみに初めて応募したのは2020年のヘルシンキです。フィンランド1ヶ月滞在から帰国したばかりだったので、フィンランドで街歩きを思い出し楽しく描きました。今となってはお恥ずかしいクオリティなのですが、街で出会った印象に残った女の子、友達と歩いた街並み、森で摘んだベリー、海沿いで食べたアイスクリームやプッラ(パン)など、自分の思い出がぎっしり詰まったイラストです。
当時はフリーランスとして動き出したばかりの頃でしたので、自信もなかったけど、それでも、このイラストが欲しい!と言ってくださる方もいて、それが私の原動力になりました。このコンテストに応募し続けることは、チャレンジであり、喜びでもありました。そして、いつか私のイラストもポスターに選んでもらえるように、という夢になりました。
日本人ファイナリスト
公式サイトをご覧いただくと分かるように、過去のポスターはどれも「北欧」テイストがびしびし伝わってくる作品ばかり。メッセージもデザインもシンプルで、色使いにもうっとり。
そんな素敵な作品群を前にして、私は人を描くのだけが好きな実績のない独学のイラストレーター。叶うわけがない。圧倒的な「北欧」感の前にひれ伏す私。2021年のテーマ「ハンコ」では、実力不足を思い知りました。あまりにも納得のいかない作品だったので、恥ずかしくて今でも見返すことができません。
そんな中、近年、日本人がファイナリストとして、ポスターに採用されていることを知りました。
中でも、2021年ハンコのファイナリスト、Mioさんのイラストには感動しました。シンプルなデザイン、惹きつけられる優しい色使い。眩しかったです。公園で、海で、ピンク色の夕焼けに出会えると、いつもMioさんのイラストを思い出します。
Mioさんの世界↓note
こうしたファイナリストさん、アーティストさんたちの存在が、もっと頑張らなければ、と刺激を与えてくれました。
転機の作品
2021年は時期をずらしてもう1つコンテストがありました。ComeToFinlandさんが主催ですが、国を越えてテーマが「スウェーデン」。この時に描いたイラストが、転機となりました。
描くにあたって、コンテストのファイナリストに残るように、求められているものを描くように、ということよりも、
そのテーマ(国、観光地)のどんなところが好きか
描きたいと思う景色は何か
自分が描いていて楽しいのはどんなことか
そういったことを主軸に考えて描きました。
スウェーデンといえば思い浮かんだのが、一度は見てみたい夏至祭。そしてやはり描きたいのは女の子。夏至祭の花冠の女の子をメインに、しかも人を描く中で最も好きな横顔にしました。衣装はスウェーデンカラーで。
このイラストを描くのが、本当に楽しくて。時間を忘れて夜通し描いていました。この年もファイナリストには圧倒的な作品が選ばれ、私は自分の作品の未熟さを思い知ったのですが、同時に過去の作品とは何か違う、自分の中で大切な作品ができたという実感がありました。
自分の作品が好きだと思えること
写真でもイラストでもそうなのですが、
自分の作品が好きだ!
と思える瞬間がやってくることがあります。それが、のちの自分に大きな影響を与えてくれます。その瞬間がやってくるのは、やはり、
やり続けること
限られた中にやりたいこと、好きなエッセンスを入れること
ノーストレス・ノープレッシャーの中で自由にやってみること
が、大切なんじゃないかな、と思うのです。
人生が上向く前のどん底
一方で、そうなるまでの、悔しい思いや実力不足を実感すること、人からの評価なども、この時を迎えるまでに必要なことなのだと思うのです。人生が上向く前の、どん底時代です。
「駆け出しなんだからタダで描いてくれてもいいでしょう」と言われたこともあるし、「あなたのイラストは欲しいとは思わない」と言われたこともあります。美大や芸大で学んだことがないこともコンプレックスです。漫画を描けば事実無根の誹謗中傷DMが届きました。(証拠をちゃんと記録し、然るべきところに相談しています。記録は大事。)
悔しいし、何度も泣きました。
だけど、その先にこんなに嬉しいことが待っているなんて、です。あのときあきらめなくてよかった。
何より、
お仕事を依頼してくださるかた
私のイラストを好きだと言ってくださるかた
応援してくださるかた
そういった人たちの存在は、私がどん底にいるときに、何も言わなくても言われなくても、私を支えてくれました。どうしても元気がでないときは、そういう人たちにあえて「かまってちゃん」となって甘えました。あの時は本当にありがとう。あなたたちの言葉が私を支えてくれました。お仕事関係の方、いつもお仕事を任せてくださりありがとうございます!
途中の人
イラストレーターと名乗るようになって3年が経ちました。大成功しているわけでもない、今もなお、「途中の人」です。
だけど、途中は楽しい。これからいろんなチャレンジが待っている。試行錯誤し放題。先行く先輩の背中を追いかけながらも、自分なりに「途中」を、好きなテイストで、好きな色で、描いてゆけるのです。
どんなに成功しているように見える人も、まだなにも成し得てないと思う人も、それぞれの「途中」にいるだけで、優劣も上下もないと思っています。それぞれの方向に、それぞれが向かっているだけ。
自分の人生の途中を、楽しもう。
自分が生み出すものを、好きになろう。
きっと素敵なことが、待っているよ。
フィンランド情報のリサーチと執筆への活力に、記事でまたお返ししていきたいと思います。また、犬猫の保護活動団体に寄付することもあります。