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旅立ちの季節の過ごし方:会食は4人以内の一回キリで、2週間は自粛を~コロナに負けるな~

 3月末から4月にかけて、卒業や転勤など別れと旅立ちの季節だ。桜舞い散るこの季節においても、新型コロナとともに生きていく状況は変わらない。感染のリバウンドが取りざたされる春先の3月末から4月にかけて、年末年始の急増などのこれまでの教訓を生かして、どのような行動をとるべきかを考えてみた。

1.年末年始の新型コロナ感染拡大の仮説:同時多発型小規模連鎖の可能性
 下記のグラフは大阪府の新規陽性者数も推移を示したものであるが、年末年始の新型コロナの感染拡大には以下のようないくつかの特徴が見られた。

大阪府グラフ

(1)濃厚接触者が多かった
 陽性者のうち濃厚接触者の比率は、1月4日から18日までが33.8%に対して、全期間の平均値は29.5%と年末年始が比率が高い。保健所の逼迫が指摘される中で、濃厚接触者を追跡できた理由として、保健所のノウハウの蓄積、経験値の向上による追跡効率の向上はもちろんのことだが、傾向として、濃厚接触者が追跡しやすかったことが考えられる。つまり、見ず知らずの不特定多数への感染ではなく、名前や連絡先がすぐにわかる追跡可能な特定少数グループ内での感染の可能性が高い。

(2)年末年始イベントに関連する感染が、多く確認された
 大阪府新型コロナウイルス対策本部会議 2021年2月9日資料によると、感染経路を示すエピソードとして、宅飲み等の少人数の会食が多かった。宅飲みであれば、連絡先がすぐわかる知人・友人・親戚間での感染が多いことから、濃厚接触者が追跡しやすい。また、宅飲みであれば、飲食店に比べて感染リスクが高まる。営業時間短縮、換気施設を拡充、席数減少(ディスタンス確保、衝立設置)を行っている飲食店に比べて、長時間(宅のみは朝までエンドレス)、冬で換気がおろそかになったワンルームやリビングの密な状態での会食となり、感染リスクは上がる。

(3)急速に拡大し、急速に減少した
 感染拡大は年末年始の一時期に集中し、ピーク時の増加・減少の傾きが第2波に比べて大きい。特に減少のペースは、通天閣を赤く染めた11月末の急増期がを掲げたこのことは、小規模な感染の連鎖が同時多発的に発生し、終了した可能性が高い。つまり、クリスマスから忘年会、新年のお祝いに至る年末年始の会食が大阪府のいたるところで行われて、その中に感染者がいたことで、感染が発生したことが考えられる。そして、年末年始の休暇が終われば仕事が始まり、会食が減ることにより、感染の機会自体が激減することにより、収束に向かった可能性が高い。
 仮に、感染力の強い感染者が周囲の十数人に感染させるケースであれば、連絡先が分からない濃厚接触者への追跡が難しく、感染者を発見・保護が進まないため、急速な減少は起こりにくいと考えられる。

(4)感染日のピークは12/30ごろと推定
 大阪府の分析によれば、感染日のピークは、12/30ごろと推定され、年間年始の会食が開催されたと想定される期間(12/24~1/2)と重なる。

 以上のことから、1つの仮説として『年末年始のイベントで同時多発的に起こった小規模連鎖』による感染拡大の可能性が高い。つまり、大阪府の各地で小規模な感染が同時に多数起こる現象である。

2.同時多発型小規模連鎖のメカニズム
(1)仮定
4人で会食、期間は年末年始(12/24~1/3)の10日程度の間
・感染者が複数の数日おきに3回の会食に参加(例えば、12/24 クリスマス(学生時代の仲間)⇒12/28 忘年会(会社の同僚)⇒1/2 新年会(親戚・知人)、昼のお茶会も同じと考える)
・感染者は1回の会食で自分以外の3人のうち1人に感染させる:感染率1/3

(2)感染メカニズム
・1回目の会食(12月24日):最初の感染者1人が1人に感染させ、感染者2名(Bが新規感染)に
・2回目の会食(12月28日):同様に、感染者が4人に増加(C,Eが新規感染)
・3回目の会食(1月2日):同様に、感染者が8人に増加(D,F,G,Hが新規感染)
・家庭内感染:上記の年末までの感染者4人(A,B,C,E)が家族1人に感染させる

同時多発小規模連鎖感染のイメージ

(3)感染の結果
 最初の感染者1人が、年末年始の10日間ほどの間に、最終的には12人に拡大する想定になる。休み明けは、仕事が始まり、また、感染者急増の影響もあり、会食の機会は激減する。このような感染が、年末年始の急増・急減の要因の可能性がある。10日間という期間は、ウィルスが感染力を保持している期間(発症前2日日間発症後7日間程度。)に相当する。もし、無症状者の場合は、自覚なく会食に参加する可能性はある。また、PCR検査で偽陰性の場合には、検査結果に安心して会食に参加する可能性はある。
 大阪府で300人の感染者が年末から3回の会食に参加したとすると家庭内感染も含めて300人×12倍=3600人増加する想定である。現状のPCR検査で補足できる割合を50%と仮定すると(12/16時点の大阪府の抗体検査の結果、抗体の保有率は0.59%。大阪府の人口を880万人とすると感染者の累計は51,920人。同日までの新規陽性者の累積25,816人から捕捉率は50%程度と仮定)、大阪府が発表ベースで、約1800人が会食による同時多発型小規模連鎖で増加している計算となる。1日平均で180人程度が上乗せされる。(急増した1月3日の新規陽性者252人から2週間で、合計7020人の新規陽性者増となっている。このうちの1/4の程度に当たる)

※12/28の21時での滞在人口は、梅田地区13万人程度、難波地区の人出は9万人程度。合わせて2つのターミナルで22万人程度の人出があった。これにいわゆる“宅飲み”を合わせると、小規模の会食に参加していた300人の感染者という数字は大きすぎるものではないと考えられる。

3.同時多発型小規模連鎖を防ぐには
 この過程には、詳細なシミュレーションや様々なエビデンスの検討がさらに必要であるが、ここでは、上記のような事象が現実に起こったと仮定し、どうすれば、同時多発型小規模連鎖による感染増加を抑えることができるかを考えたい。
 同時多発型小規模連鎖の特徴としては、“同時:イベントの一定期間が集中している”“多発:みんなが同じようなイベントに参加する”“小規模:参加人数は少ないため油断が生じる宅飲みなどリスクの高い場面がある”ことである。
 仮に、3回の会食ではなく、最初の1回の会食で終わった場合、感染者の増加は4名にとどまり、12名の1/3になる計算だ。つまり、最初の感染者が参加するイベントを1回だけにすると(忘年会、新年の祝いは中止)少なくとも個人のレベルでの“多発”は避けられる。また、次のイベントまでの期間を空けることは“多発”を防ぐことと、普段生活を共にしない者との接触を断つことで、自身が感染者となった場合も、一種の“自主隔離”となり感染拡大のリスクを下げることができる。

 3月末から4月にかけて、送別会、歓迎会の時期である。立食パーティのような大規模で組織的な宴会は行われることは少ないだろうが、仲間内での小規模な会食なら、開催しても良いとみんなが思うかもしれない。そうなると、年末年始と同じように、同時多発型小規模連鎖による爆発的な感染拡大が起こる可能性がある。今一度、以下のような対応をとり、感染拡大防止につなげて欲しい。

・短期間に複数の会食を掛け持ちしない⇒3月末から4月にかけては1回のみ
・次の会食まで2週間、間を空ける⇒生活を共にしないととの接触をできるだけ避ける
・感染対策の充実した店舗で会食する⇒リスクの高い宅飲みは厳禁
・飲食店は、感染対策のためテーブル内の仕切り板を置くことでグループ内の感染を防ぐ(同じ小グループでの感染にも気を付ける)。
時間を区切る(90分の1次会のみ)、大声を出さない、マスクをできるだけ装着する

以上


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