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宇宙視点主義(スフィリズム)による考え方がカーボンニュートラルなどの問題解決に必要ではないか

知人から「コトラーのマーケティング5.0 デジタル・テクノロジー時代の革新戦略」、そしてその反対のようなことを書いている「新・ラグジュアリー ――文化が生み出す経済 10の講義」という書籍が面白いようだ、ということを紹介されて読んでみた。

コトラーの方は、コロナ禍で急速に進んだデジタル化に対応するためのマーケティング戦略であり、デジタルをどう有効に活用するのかということがロジカルに積み上げられた内容。一方の新・ラグジュアリー、こちらはロジカルというよりも人文学的な倫理的な内容であり、モノを作って売ればよいという大量消費時代から倫理や道徳と言う中でどう経済を回すのかというようなテーマについての書籍であった。前者はデジタルに身を置く者からすればとても理解しやすい一方で、正直に新・ラグジュアリーの方は、なんとなく多様性・ダイバーシティー、サスティナビリティ、ESGといったテーマの中で企業がどのように事業を行っていくのかというような、とても深い内容であった。正直に一回読んだだけだと、頭で完全に理解ができていない。。。

ただ新・ラグジュアリーの最後の方に書かれていた、「もうひとつのあり方」を導く宇宙視点主義、という内容には、最近ここで書いている気候変動にも通じる内容なのではないか、とふと思った。

■宇宙ビジネスの意義とは
ジェフ・ベゾスの「ブルーオリジン」やイーロン・マスクの「スペースX」などの宇宙ビジネスが開始されている。しかし、このようなビジネスにおいて、何の役に立つのか合理的な目的などからは解放されたラグジュアリーの堪能をするというのがビジネスの目的になっているようにみえる。しかし同書に述べられているが、SFシリーズ「スタートレック」でカーク船長を演じた俳優のウィリアム・シャトナーがブルーオリジンが打ち上げた宇宙船に搭乗したときに答えた以下の言葉は、宇宙視点というあらたな視点をもつということの重要性を感じると書かれていた。

宇宙にいた瞬間は闇と死に包まれ、下方を見たときに地球は生命と滋養の世界だった。このことは誰もが知る必要がある。

旅の目的が単なる場所ではなく、新しいものの見方であるという考え。たしかに学生時代にヨーロッパの巨大な建築物を見たときに世界観のようなものが一気に変わったが、宇宙から地球の必要性をあらためて認識するということは、この後の気候変動という大きな課題に立ち向かう人類に、非常に重要な視点と感じた。

■宇宙視点をどのように得るか
じゃあ宇宙にといっても誰でも行けるものではない。そのような中で、ソニーと東京大学、JAXAが共同で取り組んでいる「STAR SPHERE(スタースフィア)」というプロジェクトについて述べられていた。

この取り組みは、人工衛星の「撮影権」を一般に解放して、1枚数万円程度から販売するサービスを提供予定であり、地球にいながらにして、人口衛星の視点、つまり宇宙視点から地球の好きな場所や星空を撮影できるようになるというもの。
これまで宇宙に滞在した経験のある人類は約600人。このサービスを使えば、数十億人が宇宙からの視点を獲得できるようになるということ。

■スフィリズム
最後に、このSTAR SPHEREの開発に携わった村木裕介さんが提唱する考え方として、「スフィリズム(宇宙視点主義)」が取り上げられていたが、グローバリズムとの考え方の対比にとても共感をした。

「グローバリズムとは、いわば地球(=グローブ)の地表にへばりついていた閉鎖的な考え方でした。それに対して、スフィリズムは、高さ方向に広がりを持つスフィア(宇宙も含む球・領域)の視点で、地表から浮遊し、宇宙空間に大きな広がりをもつ考え方です」

新・ラグジュアリー

せっかくCOP26で作り上げてきた機運も、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻によって石油や天然ガスの価格が高騰し、脱炭素に積極的であったヨーロッパですらも石炭が使われている。そして中東の天然ガス購入に世界の目が向き、エネルギー代の高騰を招いている。日本はその世界に翻弄され、この夏の電力不足も2011の東日本大震災の後、脱原発であれば自然エネルギーの方向に切り倒す意思決定をし、国として舵を切るべきだったが中途半端故に、自然エネルギーの導入も進まなかった。
そのような中でやはり人の目が脱炭素、カーボンニュートラルから遠ざかっているように見えるし、その言葉を発しても、やはり日本では当たり前の世界になっていない。

そのような中で、脱炭素関連ではない書籍を読みながら、このスフィリズムという考え、そして宇宙視点を個人レベルでもたせようとしている事業の素晴らしい取り組みに、期待をしたいと思った。きっと企業レベルのみでの努力では気候変動という大きな課題に立ち向かうには限界であろう。このような事業が少しずつ人を変え、地球課題を解決するのではないか。

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