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レモンティー

何かのCMでシーナ&ロケットの「レモンティー」が流れている。いまどきの女の子がアグレッシブにラーメンを作るという内容で、シーナの歌がとても似合っていて、その画面がビビットにきらめくほどにシーナも鮎川さんももういないのだ、と強く実感した。

若い頃夢中になったミュージシャンが相次いで亡くなり、知り合いでもないのにそれなりの虚無感を覚える。年齢的に仕方がないのだが、テレビや映画で親しんだ俳優さん、タレントさんも次々と亡くなる。間に間にリアルな知り合いも亡くなる。さよならだけが人生…なのか?と思ったりする。

ただミュージシャンや俳優のいいところは「作品の中でいつまでも生き続けられる」ところだろう。作品が残る限り第二の死、つまり「忘却される」ということがない。以前いかりや長介さんが亡くなった後に「ドリフ大爆笑」の再放送を観て「まだ働かされて…」と少し辛い気がしたのだが、子供達がドリフにハマっていくのを見て「新たなファンを獲得している!」と驚きを覚えた。死してなおできることはある。それがその人が「生きた」ということではなかろうか。私も亡き母や友人の言葉や存在を胸に刻んで生きている。それも彼女たちの生存した証、魂を繋ぐことと思っている。

シーナ&ロケッツと初めて出会ったのは「ユーメイドリーム」だ。編み上げのロンドンブーツにキツいメイクのシーナが、甘々のラブソングを歌うのが面白かった。そして暗さがたまらない「ピンナップベイビーブルース」「レイジークレイジーブルース」。中でも「レモンティー」はガツンと来た。速いテンポと重いビート、セクシーな歌詞とくっついて歌うシーナと鮎川さんのカッコ良さ。頬につく鮎川さんの汗を手で拭うシーナが子供みたいで可愛かった。

あの頃はバンドのメンバーも自分も若かったから誰かが死ぬなんて考えもしなかった。今は自分も周りもいつか死ぬし、順番の問題だけだと思っている。長らく飼っている白猫が20才近くなってきたので万が一私より長生きしたらどうしよう。老猫ホームはあるのだろうか。

レモンティーでもう1人思い出すのはパチパチパンチの島木譲二さんだ。あのごつい風体で喫茶店では必ずレモンティーを頼んだらしい。そして小指を立てて飲み干しては「ん〜、ビタミンC🩷」と満悦していたそうだ。見かけによらない愛らしいエピソードを昔の新喜劇を見ると思い出す。今もあの世でビタミンCを摂取しているのだろうか。

#創作大賞2024
#エッセイ部門
#レモンティー
#シーナアンドロケット
#吉本新喜劇


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