韓国版アマゾン「クーパン」IPO
韓国版のアマゾンの異名を持つCoupang(クーパン)が2021年3月11日に上場し、終値$49.25ベースの時価総額は約$84Bilとなりました。
米国市場において2014年のアリババ(中国)以来の最大規模となる外国企業によるIPOであることやソフトバンクビジョンファンドも出資していたことなどもあって多くの注目を集めています。
今回は韓国最大手のECサービスであるクーパンについてご紹介したいと思います。
1.クーパンとは
クーパンは2010年に創業した韓国最大手のECサービスです。創業者のBom Kim氏は韓国(ソウル)で生まれ中学時代に米国に渡り、ハーバード大学卒業後にボストンコンサルティンググループに就職。その後ハーバードのMBA取得などに励むものの中退して韓国に帰国してクーパンを創業しました。
創業当初はグルーポンに似たサービスでしたが、その後Ebayのようなマーケットプレイス型の事業へのピポットを経て、現在は自社販売型のECサービスとして2020年12月期の売上高$12Bil(前期比:+90.8%増)、購入ユーザー数:1,485万人まで驚異的な速さで成長しています。
2.クーパンの特長
そんなクーパンを語る上で最大の特長であるのが、なんといっても他社に頼らない独自の物流網を構築している点です。
クーパンは自社で1.5万人以上もドライバーを直接雇用し、100拠点以上の物流センターを30都市構えており、商品保管や配送、顧客対応まですべて行っています。クーパンの物流センターから約11km圏内で韓国の人口の70%をカバーできるほどの物流網を構築することで、他のECサービスの追随を許さない配送スピードを実現しています。
例えば同社の「Rocket Delivery(ロケット配送)」では「深夜 12 時まで商品を注文」すると、同社の「coupang man(配達員)」が自社の配送車両を利用して、「注文した翌日には消費者に配送完了」してくれるようです。
また2019年に開始した「Coupang Wow」(会員サービス)では月額2,900ウォン(約290円)支払えば、ロケット配送無料、30日返品保証、翌朝7時配送・当日配送(同日注文されたものを同日配送、深夜0時までの注文を翌朝7時まで配送)を利用できるため好評を博しています。
3.クーパンのビジネスモデル
クーパンは自社で商品を仕入れて販売する自社販売型のECサービスです。売上の92%を自社販売型ECの売上が占めています。出品者からの手数料収入が売上となるマーケットプレイス型ECサービスやその他の事業も手掛けていますがまだ売上全体の8%にすぎません。
その他の事業としては、生鮮食品を当日中に届ける「Rocket Fresh」、動画配信サービスの「Coupang Play」、フードデリバリーサービス「Coupang Eats」など展開しており、今後の成長が期待されています。
4.市場環境
eMarketerの世界の国別EC市場のランキングによると韓国は2019年時点では世界5位のEC大国です。2018年度からの成長率を見ると18.1%と日本を凌いでいます。
そんな韓国EC市場ではNaverShoppingをはじめ、KakaoShopingなど数多くのECサービスが厳しい競争を繰り広げています。
但し、理由は定かではないですが韓国が世界5位のEC市場にも関わらずアマゾンが進出していません。それだけ競争が厳しいのか関税上の問題があるのか私自身Coupangを調べていく中ではじめて知り驚きました。(以下アマゾンの地域選択した際のキャプチャ)
5.業績の推移
Coupangが公表した目論見書によると同社の業績は2016年12月期から2020年12月期にかけて売上高が7倍(年換算成長率:63.5%)急成長しています。特に2020年12月期の売上高$11,967Milと前年同期比と比べて90.7%も成長しており、コロナ禍の外出制限が他のECサービス同様に追い風となっています。
一方で当期損益は5期連連続で赤字を計上していますが、利便性の向上、物流網の構築や新規事業などのコストが先行しているようです。
なお当社の”売上高”は自社で仕入れた商品の販売によるグロスの売上高であるため、出品者からの販売手数料を売上高として計上しているマーケットプレイス型のECと業績を比較する場合は、同社の売上高とマーケットプレイス型ECのGMV(取扱い高)を比較するか、同社の粗利益とマーケットプレイス型の売上高を比較することでより的確な比較となる点は注意が必要です。
いずれにしても売上高の拡大を支える 購入ユーザー数(一定期間に一度以上購入したユーザー) × 1人あたりの平均購入単価はともに上昇しており今後もますますの成長が見込まれています。
上記は会社が公表している各年度ごとに流入した購入ユーザーがその後どれくらい消費を増やしていったのかを分析した図です。
例えば、2017年に購入したユーザーの消費額は、2017年の消費額と比較して 2020年(Year4)には246%も増加しており、直近の購入ユーザーであればあるほど翌年以降に消費する額の増加率が増えていることを示しています。
6.株価
2021年3月11日の初値は公開価格$35の81%高となる$63.5を付け、時価総額は一時約$109Bil(約11兆円)を付けましたが、終値は40.7%高の$49.25となり、時価総額は約$84Bil(約8.4兆円)で取引を終えました。
クーパンは今回の上場で$4.6Bilを新たに調達し、3月11日時点では今年1番の大型IPOとなりました。
そして筆頭株主であるソフトバンクグループは同社の株式を約37%も保有しており、約$33bil(3.3兆円)の利益を含み益が生じるようです。
7.最後に
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またこれからアメリカのテック企業を中心に新規に上場する企業を紹介していきたいと思っているのでぜひフォローをお願いしますm(- _ -)m
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